飲酒運転

 

多賀城市の飲酒RV車による18人死傷事故を、覚えていますか? この事件を風化させない方法はあるのか?

2026.6.10

21年前。

覚えている人はどれくらいいるだろうか。地元でこの事件を知らないひとはまずいない。

いや、年代によるのだろうか・・

新卒採用や中途採用で、20代、30代の方と話すときに、飲酒運転事故史上「誰もが知っている」とされる事件について、世代によっては知らないのだな、と感じること多くなってきた。

時間とともに。

・東名高速事故。
・仙台RV事故。
・福岡・海の中道事故。
・北海道砂川市の事故。
・小樽ドリームビーチ事故。
・八街市の児童死傷事故。

 

若い世代が知らないのは、意識が低いからではない。
われわれ伝える側の問題なのだ。

 

本誌では過去の重大な飲酒運転事故について語りながら、風化を防ぐ方法を考えるシリーズを続けている。

今回は、2005年5月22日に宮城県多賀城市で起きた、いわゆる仙台RV飲酒運転事故について。

 

2005年5月22日 宮城県多賀城市

2005年5月22日、午前4時過ぎ。

宮城県多賀城市八幡1丁目の国道45号で、学校行事のウォークラリー中だった仙台育英学園高校の生徒の列に、飲酒運転のRV車が突っ込んだ。

 

1年生3人が死亡。
15人が重軽傷。

18人も。

「飲酒運転の車が高校生の列に突っ込んだ」

18人も。どういう事故だったのか?

 
報道以外にも知る方法がある。

裁判所の判決文だ。

これを読むと、そこには単なる「飲酒運転事故」という言葉だけでは済ませられない、飲酒運転者の異常な飲酒、異常な行動、異常な運転、そして、これに反して、何の積みもない被害者の受けた苦しみが記録されている。

法務省に判決文がある。刑事2件と民事1件。

胸が詰まる内容だが、読んで見て欲しい。

被告人は,平成17年5月22日午前4時前後ころ,仙台市a区bc1丁目d1番e1号付近道路において,運転開始前に飲んだ酒の影響により,前方注視及び運転操作が困難な状態で,普通貨物自動車を走行させ,もって,アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させたことにより,同日午前4時14分ころ,a区f字g
h番地i付近道路において仮眠状態に陥り,同所先の宮城県多賀城市jc2丁目d2番e2号先の信号機により交通整理の行われている丁字路交差点の対面信号機が赤色の灯火信号を表示しているのを看過したまま時速約60キロメートルで交差点に進入し,折から交差点出口に設けられた横断歩道手前で,横断中の歩行者の通過を待つため一時停止中のA(当時34歳)運転の普通乗用自動車右側前部に自車左前部を衝突させ,A運転車両を左前方に押し出し,横断歩道上を歩行者用信号機の青色信号表示に従い左方から右方へ横断歩行中又は横断歩道付近にいたB(当時15歳),C(当時15歳)及びD(当時15歳)に自車を,別紙負傷者一覧表記載のE(当時15歳)ら15名に自車又はA運転車両を衝突させるなどし,Bらをそれぞれ路上に転倒させ,よって,B及びCにそれぞれ頚椎骨折等の傷害を負わせ,即時同所において,両名を上記各傷害により死亡させるとともに,Dに頭蓋底骨折等の傷害を負わせ,同日午前5時34分ころ,仙台市a区kc3丁目d3番e3号所在のS病院において,Dを上記傷害により死亡させたほか,別紙負傷者一覧表記載のとおり,Eら15名にそれぞれ加療約3か月ないし全治約1週間を要する骨盤骨折等の傷害を負わせた。

18名。

どのようにして飲酒運転するにいたったか。

遡ること2時間前。

被告人は,解体業の従業員であるが,本件前日は,体調は良好で,通常どおりの作業をし,午後7時ころ帰宅した後,使用していたニッサンサファリ(以下「サファリ」という。)に友人を乗せて多賀城市内の居酒屋に向かい,午後9時ころから,友人らとともに飲食した。被告人は,最初の居酒屋で生ビールの中ジョッキを1杯(生ビール約255ミリリットル)飲み,その後,スナックに立ち寄った後,被告人がサファリを運転し,友人を乗車させて2人で仙台市青葉区l地内の飲食店に赴き,本件当日の午前0時ころから午前3時30分ころまで,焼酎の水割りをグラスに10杯分程度(焼酎約200ミリリットル)を飲酒した。飲食店において,友人は居眠りをしていたが,被告人は眠ることなく飲酒,談笑していた。被告人は,帰宅するため友人を乗せて午前3時47分にl地内の駐車場からサファリの運転を開始した。

被告人は,衝突後,衝突現場において警察官から事情聴取されたが,その際,ふらついたりすることはなかったものの,強い酒臭がし,話す言い回しがくどいなどの状況にあった。同日午前4時58分に行われた飲酒検知の結果は,呼気中のアルコール濃度が呼気1リットルあたり0.3ミリグラムであった。

 

 

呼気0.3mg/L、そして、「飲酒運転経験者」

事故後の呼気検査、呼気1リットルあたり0.3ミリグラムのアルコール。

この事故で重要なのは、単に「0.3mg/Lだった」という数値だけではない。

おそらく、「常習飲酒運転者」であっただろう。こんな記述が。

なお,本件後の被告人の呼気中のアルコール濃度は呼気1リットル中0.3ミリグラムであったことについて,弁護人は泥酔状態ではなかったことを推認させるものであると強調するが,被告人は捜査段階において,本件の約8年前,酔いつぶれる直前まで飲んだ後,特に眠気を感じなかったので運転を開始したが,運転中に仮眠状態となり,反対車線に進出して,対向車と正面衝突するという事故を起こしたことがあり

車で来て、飲む。

いつも通り。

代行を呼ばない。

タクシーも呼ばない。

それを何とも思わない同乗者もいる。

こういう

懲役20年という判決

仙台地方裁判所は、2006年1月23日、運転者に対して懲役20年を言い渡した。

判決文は、最後に、被告人に有利に考慮すべき事情にも触れている。

他方で,被告人が本件につき反省し,当公判廷においても,涙を流しながら繰り返し遺族や被害者に謝罪の意を表し,しょく罪を誓っていること,父親が証人として出廷して被告人の更生を援助する意向を示していること,被告人に前科はなく,離婚したものの養育すべき家族がいることなど,被告人に有利に考慮すべき事情もあるが,本件犯行の危険性,悪質性と,本件によって引き起こされた結果の重大性からすれば,本件については,被告人に対し,法の予定する最長の期間の懲役刑を科するのが相当である。 よって,主文のとおり判決する。

それが何だというのだ。遺族からしてみれば。

こんな事実も明らかになっている。

被告人は,任意保険に加入する手続をしないまま,本件車両を運転し,本件を惹起しており,被害者,遺族に対し,十分な賠償が行われる見込みもない。

残されたひとたちの傷も、心身ともに、長期であり、影響が甚大だ。

死亡した各被害者は,横断歩道上で,被告人車両に順次衝突され横断歩道上から相当の距離を跳ね飛ばされ,B及びCにあっては,外傷性脳損傷及び頚椎骨折の傷害を負って即死し,Dにあっては,頭蓋底骨折の傷害を負い,事故後1時間あまり後に死亡した。

 路上で,瞬時に絶命した衝撃や無念は計り知れず,また,衝突から死亡するまでの時間,味わったであろう精神的,肉体的苦痛には想像を絶するものがある。B,C及びDはずれも,その両親ら家族の愛情を受けてすくすく育ち,それぞれの希望を胸に抱いて高等学校に通学し,まさにこれからという時に,15歳の若さでその将来を一方的に,永遠に奪われたのであり,その失われた未来を思うと,あまりに酷いと言うほかない。
 そして,その遺族,とりわけ,両親は,我が子を学校行事で送り出したところ,まさかの訃報に接し,看取ることすら叶わず,手塩に掛けて育てた子に先立たれたもので,その衝撃は計り知れない。遺族が検察官に対して述べ又は当公判廷において述べた,深い悲嘆と苦悩,被告人に対する激しい怒りの感情は,至極もっともであり,口々に法の予定する最も重い刑での処罰を求めるのも当然であり,被告人に対し,民事訴訟を提起して終生しょく罪をさせようとしているのも理解できる。

 傷害を負った被害者,中でも,重傷を負ったE,F,G,Jは,それぞれ長期間の入院生活を余儀なくされ,肉体的苦痛を受けたのみならず,迫り来る車両に直接衝突されるなどの強い衝撃と恐怖を味わい,また,凄惨な事故現場に居合わせてかけがえのない友人を失ったことによる悲嘆,無力感等に苛まれるなど精神的衝撃も大きく,今なお心身両面において苦しみ,日常生活に支障をきたしている者もいる。更に,精神面での将来への影響も懸念されるほか,入通院による経済的な種々の負担を強いられ,また,長期の入通院による学業の遅れが懸念されるなど,その影響は多大である。他の被害者にあっても,傷害の程度は決して軽いものではなく,事故の恐怖や友人を失った喪失感などの精神的苦痛,その他有形無形の影響を受けているのであり,その結果は大きい。

被告人B(同乗者)

同乗者がいたのである。

同日午前3時47分ころ,同市甲区a町s丁目t番u号所在の駐車場「H」において,同所に駐車中の本件車両の助手席に乗り込み,Aが本件車両を運転して自己を宮城県多賀城市vw丁目x番y号所在の自宅まで送り届けるよう依頼した上,本件車両の駐車料金の一部として現金600円をAに交付して本件車両を同駐車場から出庫せしめ,Aの危険運転致死傷の犯行を容易にさせたが,Aが酒気を帯びて運転することは知っていたものの,アルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることまでは知らず,酒酔い運転を幇助する意思しかなかったものである

被告人を罰金25万円に処する。

 

軽すぎる。

もしこの人が止めていれば! 

止めるどころか、依頼したのだという。軽すぎる。

 

 

民事。

1 被告らは,連帯して,原告A及び原告Bに対し,それぞれ2297万3544円及び内金2256万0982円に対する平成17年5月22日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

2 被告らは,連帯して,原告C及び原告Dに対し,それぞれ3031万3381円及び内金3011万4066円に対する平成17年5月22日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。

3 原告らの被告らに対するそのほかの請求をいずれも棄却する。

4 訴訟費用は,その4分の3を被告らの,その4分の1を原告らの負担と
する。

 

 

やはり、再犯だ。常習が窺える。

(2) 責任原因
ア 被告Lは,アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で,加害車両を運転し,赤信号を見落として進入した本件交差点で,本件事故を引き起こし,F,Gを死亡させた。被告Lには,民法709条に基づいて,この事故によりF,G,原告らに生じた損害を賠償する責任がある。

イ(ア) 被告Eは,被告Lと暴走族の先輩,後輩の関係であった。本件事故の前にも,被告Lが運転する車両に同乗して,飲食店に行き,そこで被告Lが飲酒していることを分かった上で,その運転する車両で,自宅に送ってもらうことが何回かあった。


(イ) 被告Eは,平成17年5月21日(本件事故の前日)も,被告Lが運転する加害車両に同乗して,居酒屋,パブ,クラブを回り,同日の午後9時ころから同月22日の午前3時30分ころまで,ふたりで飲酒した。
被告Eは,これらの店で,被告Lの飲酒を制止していない。被告Lが加害車両を運転してこれらの店に行くとき,飲酒していることを分かっていたのに,運転を制止していない。

(ウ) 被告Eは,同日午前3時47分ころ,被告Lに対し,多賀城市内にある自宅に送るよう頼んで,仙台市N区O町内に駐車していた加害車両を運転させた。加害車両を運転していた被告Lは,同日午前4時14分ころ,本件事故を引き起こした。

(エ) このような被告Eの行為は,被告Lの行為と密接に関連し,本件事故の発生について,被告Lの行為と共同して原因を与えたものというべきであるから,被告Eには,民法709条,719条1項前段に基づいて,この事故によりF,G,原告らに生じた損害を賠償する責任がある。

15才のいのちの値段の部分は、読むに堪えない。何という計算だ。

5月22日が「飲酒運転根絶の日」になった

この事故を契機に、宮城県では「飲酒運転根絶に関する条例」が制定された。

仙台育英学園高校でも、事故の記憶を語り継ぐ取り組みが続けられているようだ。

風化とは何か

仙台RV事故から21年。
福岡・海の中道事故からも、まもなく20年。
東名高速飲酒運転事故からは、すでに四半世紀以上が経っている。

飲酒運転事故は、過去の悲劇ではない。

昨日も、今日も、明日も、飲酒運転をする人がいる。いまも起きている、現在進行形の社会課題だ。

風化を防ぐとは、慰霊の日に花を手向けることだけではない。

事故の詳細を知る、判決文を読む、条例を知る、技術で止める方法を考える、地域で止める方法を考える。

デジタルアーカイブにしてゆかないと。

ニュースリンクは切れてゆくから。

関係者も、少なくなってゆくから。

筆者も、老いてゆくから。

写真は多賀城市ホームページより
https://www.city.tagajo.miyagi.jp/bohan/kurashi/kotsu/anzen/insyu-konzetu.html