飲酒運転

 

6月に起きたもうひとつの飲酒運転。その中身を伝える報道が少ないのは、報道規制がかかるほど酷いからか。もしくはコタツ記事か。

2024.6.8

筆者が飲酒運転防止に関する事業を始めてから20年がたちます。この事件は、私が知った飲酒運転死傷事故のうち死者が一番多く、かつ内容が・・・。

北海道砂川飲酒運転事件。

6月6日が事件の起きた日。9年前のことです。今週本件のニュースをいくつか見かけました。

https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20240602/7000067401.html

https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20240607/7000067533.html

4人が亡くなっています。殺されたという表現が正しいでしょう。内容からして。4人が殺される飲酒運転事故といえば・・・。ここ20年では前例がないハズです。

「猛スピードで走ってきた飲酒運転の車」「飲酒による無謀な運転」

と記事にはありますが、そんなワンフレーズでは収まらない事件でした。しかし、テレビでも新聞でも、なぜか内容までは深く立ち入っていません。

 

おそらくそれは、あまりにも凶悪だから。もしくは、報道局が忙しすぎて原判決で明らかになっている事実を調べるのが面倒だから。せめて署名記事で調査報道をしてほしい内容です。

 

北海道砂川 飲酒運転事故 概略。

・飲酒後、飲み直しに、クルマで移動。
・移動ついでに100km/h以上で酒気帯び公道レース
・赤信号は無視するというルール
・1台目が青信号のクルマに衝突。
・2代目後続車は被害者を1.4km引きずる
・飲酒ひき逃げ、事故隠蔽。

原審判決によれば、

(量刑の理由)
2台の自動車で,一般国道を並走しながら,互いの自動車の速度を競うように高速度で走行し,ともに時速約100キロメートルを超える高速度で交差点に進入するという犯行態様は,交通ルールをまるで無視したものであり,交通量が比較的少なくなった夜間であることを考慮しても,危険極まりないものである。2名を即死させるほどの激しい衝突状況や,B車による長男のれき跨・引きずりという被害拡大は,まさにその危険性が現実化したものといえる。

そして,4名を死亡させ,1名に重傷を負わせるという被害結果自体,これまでに例を見ないほど甚大かつ悲惨なものである。死亡した4名の肉体的苦痛が大きかったことは容易に想像できるところであり,希望ある将来を奪われた長女及び長男,重傷を負った二女を残して突然人生の幕を下ろすことになった両親の無念さや悲しみも察するに余りある。とりわけ胸を圧迫され引きずられる苦しさや恐怖の中で絶命した長男の苦痛は想像を絶するものである。

また,一命を取り留めながらも重篤な後遺症が残った二女については,その肉体的苦痛はもとより,わずか12歳で一度に家族全員を失った孤独感や将来の不安も計り知れない。遺族の悲しみも相当に深く,厳罰を求めているのも当然である。経緯をみても,被告人らは,飲酒の上,飲み直しに行くために運転中,必要もないのに競うように高速度で走行し,赤色信号を無視した挙げ句,重大な事故を起こしたのであるから,身勝手極まりなく,厳しく非難されなければならない。被告人らの個別の事情についてみると,被告人Aは,自車を直接被害車両に衝突させており,その衝突だけで3名を死亡させたほか,2名を負傷させている。加えて,酒気帯び運転の罪責もある。そうすると,被告人Aの刑事責任は,赤色信号を殊更無視した危険運転致死傷事案の中でも類を見ないほど重いものというべきである。そして,被告人Aは,責任逃れのための弁解に終始し,自身の責任に向き合い真摯に反省しているとはいえないことなどをも考慮すると,対人賠償無制限の任意保険に加入しており,金銭賠償が見込まれることなどの事情を踏まえても,法律上上限の刑がふさわしい。

また,被告人Bは,被害車両とは衝突していないが,路上に投げ出された長男を自車で引きずるという痛ましい態様で死亡させている。さらに,飲酒運転発覚を免れたいという理由で,被害者らの安否を確認せずに放置して逃走した救護義務違反及び報告義務違反の犯行に加え,逃走後に自分の自動車にビニールシートを掛けるなどして事故に関わった痕跡を隠そうとしたことは,余りに自己中心的な行動であって,この点においても強い非難を免れない。こうしたひき逃げに伴う諸事情をも勘案すると,被告人Bの刑事責任も,被告人Aと同様に,赤色信号を殊更無視した危険運転致死傷事案の中でも類を見ないほどに重いものである。そして,被告人Bは,事件の核心についてごまかすような曖昧な供述に終始し,真摯な反省の態度が認められないことなどをも考慮すると,その責任の重さは被告人Aのものと差異がないというべきであるから,被告人Aと同じ刑とした。

 

以下、個人的な推測です。

おそらく、飲酒運転は常習的であったでしょう。周囲も気付いていたでしょう。ただし、反社会的な行動を普段からしており、周囲は注意をしずらいひとたちであった可能性もあります。

お酒がからむ交通犯罪ではありますが、いわゆる「アルコール依存症」に起因する交通犯罪というより、判決文から推察するに、普段から故意・悪意の飲酒運転といった反社会性が強い行動を繰り返していたのではないかとと推定されます。

報道で、幇助罪(お店)や加害者の話が出てきていないのは、理由があるのかもしれません。

上記判決後の控訴は棄却されています。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/818/086818_hanrei.pdf

 

砂川市は、この事件のあと飲酒運転防止条例をつくりました。

https://www.city.sunagawa.hokkaido.jp/seikatsu_kurashi/koutsuu/insyuuntenbokumetujorei.html

 

6月28日。もうすぐ千葉県八街市の飲酒運転事故の日。

砂川事件が2015年ですから、たった6年後ですね。5名死傷(3名死亡)という事故が起きたのは。

 

今日もどこかで誰かが飲酒運転をしています。