提出意見を踏まえた案の修正の有無=有り
おそらくめずらしいケースかと思います。パブリックコメントで提出された意見を踏まえて、案が修正されました。アルコール検知器の「使用」がマストとなる時期が、「2022年4月1日」ではなく→「2022年10月1日」となりました。
意見は、87件。
「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」等に対する意見の募集結果について
「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」等に対する意見の募集結果について
87件は、パブリックコメントの件数としては、わりと多い方ではないでしょうか。全件読みたいですねえ。
入手できたら本誌面でも展開いたしましょう。
「警察庁R1110文書」
『道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令案」等に対する御意見及びこれに対する警察庁の考え方について 別紙』
長いですねえ・・
パブリックコメントの結果公表と同時に、以下のような文書が発行されました。
あ・ま・り・に・も タイトルが長いので、この書類を、当社は勝手に
” 警察庁R1108文書 ”
と名付けてみました(造語です)。
警察庁は、パブリックコメントの結果を令和3年11月10日に公表し、そのうち、この別紙において、いままで曖昧だった部分について、一部、はっきりさせた文書、という意味でございます。
警察庁R1110文書では、以下4点が具体的に示されています。
1.「罰則」について
パブリックコメント募集時の書面には、「運行管理者がアルコール検知器を用いて酒気帯び確認をしなかったときの罰則」について、何も明示的に示されていませんでした。
安全運転管理者がその業務を怠ったことに対する罰則は設けられていないものの、安全運転管理者が当該業務を実施していないため自動車の安全な運転が確保されていないと認められる場合には、都道府県公安委員会による解任命令の対象となり、当該命令違反に対しては罰則が設けられています。
とりあえず、罰則があるということがはっきりしました。
しかしながら、「当該業務( 第9条の10第6号の業務=アルコール検知器を用いた酒気帯び確認業務)を実施していない」、この部分についての「程度問題」については、言及がありません。もしかしたら、このあと、第二弾で出てくる、通達文書等で示されるのかもしれません。
2.「目視・直行直帰」問題
運転者の酒気帯びの有無を確認する方法は対面での目視が原則ですが、直行直帰の場合など対面での確認が困難な場合にはこれに準ずる適宜の方法で実施すればよく、例えば、運転者に携帯型アルコール検知器を携行させるなどした上で、
① カメラ、モニター等によって、安全運転管理者が運転者の顔色、応答の声の調子等とともに、アルコール検知器による測定結果を確認する方法
② 電話等によって、安全運転管理者が運転者の応答の声の調子等を確認するとともに、アルコール検知器による測定結果を報告させる方法のような方法で実施すれば、
改正後の道路交通法施行規則第9条の10第6号の業務に該当します。
「携帯型アルコール検知器と、カメラ、モニター等をつかって」は、「対面に準じている」と見なされました。
それにしてもなぜ「同等」ではなく、なぜ、根拠もなく「準じている」というように、カメラとモニター方式を対面より低いという位置づけにするのでしょうかねえ。
3.「ほんとに4月なのか」問題
施行期日については、この度の改正が安全運転管理者の業務を新たに規定するものであり、アルコール検知器を用意することが求められるなど、相応の周知・準備期間が必要となることから、頂いた御意見を踏まえ、アルコール検知器の使用に係る改正規定は令和4年10月1日に施行することとしました。
一応、メーカー側にも、準備があります。
当社からはメーカーとして「半導体供給問題」について意見を提出しました。他メーカー各位も、供給問題については意見提出されたのではないしょうか。結果、法改正の事業者への周知・準備に加えて、サプライサイド側の実態題も鑑み、10月1日にずらしたのではないかと推測しております。
4.「アルコール検知器の性能要件」問題
安全運転管理者が酒気帯びの有無の確認に用いるアルコール検知器については、酒気帯びの有無を音、色、数値等により確認できるものであれば足り、特段の性能上の要件は問わないこととしています。
残念ながらここは、「緑ナンバーが10年続けてきた 何でも良い方式」と同じになりましたね・・。
でも、「酒気帯び確認行為の記録を残す」ことは、明確に義務となっていますので、「○」「✕」手書き業務が増大するような運用を、一般事業者はそう多くはしないと思いますねえ。
この後、警察庁XXXX文書その2、的なものについて
なお、上記の点も含め、改正規定の解釈・運用については、別途定めることを予定しています。
とあります。
ですので、今後も、解釈系の文書が最低限あと1種類か2種類、発行されると思われます。
しかしながら、それら行政文書だけですと、おそらく、あまりにも読みにくい可能性があるため、国土交通省のアルコール検知器義務化サイトのようなものが制作されることを期待したいです。
Gマークしばりとか、運行管理高度化とか。
安全運転管理者制度においては、Gマーク的な制度はありません。
ですので、いわゆる貨物IT点呼、旅客IT点呼のような、「IT技術をつかった民間製品を使うにあたり、企業として安全性が問われる」「安全製品、安全テクノロジーを使えるのは、優良事業者のみ」という仕組みはありません。
トラック事業所 | 安全運転管理者選任事業所 |
安全性優良事業所(通称Gマーク) | |
↓ | ↓ |
IT点呼機器・遠隔地IT点呼機器を使用できる | IT点呼機器・遠隔地IT点呼機器を自由に使える |
おそらく、白ナンバー・安全運転管理者選任事業所で、クラウド型の遠隔アルコール検知システム、クラウド型の遠隔点呼システムの採用が、一気に進むでしょう。おそらく、トラック業界で10年間で「許可」してきたIT点呼使用実績数(国交省はいまだに公表しませんが、推定2万といったところでしょうか)を、3年程度で追い抜くかもしれません。
なぜなら、白ナンバー(安全運転管理者選任事業所)では、「Gマークしばり」という概念はありませんから。
「直行直帰の場合など対面での確認が困難な場合」
たったこれだけです。
「当社はテレワーク推奨企業です! 直行直帰推奨企業です! なので対面が困難です!」
Gマークも、優良性も、問われません。
「しかるべき場面で、しかるべき技術・製品を使う」というシンプルな制度設計となった次第です。
今後、安全運転管理選任事業所では、労働生産性観点から、ITを活用した飲酒チェックやITを活用した点呼が主流となると思います。
今回の警察庁の発表内容をみて、運行管理高度化検討会がやっている遠隔点呼の実証実験を思い浮かべました。
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000082.html
運行管理高度化検討会は、は、今回の道交法改正の中身が、緑ナンバー業界のIT点呼の活用範囲拡大へ一石を投じていることを認識し、実証実験の内容を見直したほうが良いのではないでしょうか?
なんだか、どんどん、現実と乖離してゆく気がしております。
もっと言っちゃいましょう。
自動点呼、ロボット点呼へのニーズは、今回の道交法改正による「目視・直行直帰問題は、IT使用可」によって、一般事業主の団体からのIT点呼拡大、とくに、「本社や自宅からのIT点呼を」という、さらなる声を呼び込む可能性があります。
参照記事
① カメラ、モニター等によって、安全運転管理者が運転者の顔色、応答の
声の調子等とともに、アルコール検知器による測定結果を確認する方法
ふたを開けてみたら、自動点呼がもっとも採用されたのは、「認定制度」なんて関係のない、自由にテクノロジーを選べる白ナンバー業界だった、というオチだったりして。
ただし、「警察庁の次の通達」で、事業者安全性や、IT点呼機器の認定制度を言い出さない限り・・・。
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