なにせ、日本商工会議所の要望ですから。
全国で515商工会議所がそれぞれの地域で活動しています。商工会議所は(1)地域性-地域を基盤としている、(2)総合性 -会員はあらゆる業種・業態の商工業者から構成される、(3)公共性-公益法人として組織や活動などの面で強い公共性を持っている、(4)国際性-世界各 国に商工会議所が組織されている、という4つの大きな特徴を持っており、全国の商工会議所の会員数は122万(2021年3月現在)を数えています。
日本商工会議所及び東京商工会議所という超巨大な組織が、「2021年度 規制・制度改革に関する意見」の中に、運送業におけるIT点呼制度の要件緩和を正式に入れ込んできました。
日本商工会議所 政策提言活動「2021年度 規制・制度改革に関する意見」
https://www.jcci.or.jp/recommend/2021/1021163000.html
東京商工会議所 政策提言活動「2021年度 規制・制度改革に関する意見」
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1027961
④運送業におけるIT点呼制度の要件緩和
P16より
【要望内容】IT点呼の対応可能な事業所の要件緩和 【国土交通省】
【理由】トラックをはじめとした貨物等の運送事業者では、自動車運送事業における安全輸送の責任者である運行管理者が、自社の運転者の体調や酒気帯びの有無、業務内容等を確認するため、対面しながら点呼(乗務前点呼、乗務後点呼等)を行っているが、安全性優良事業所(Gマーク取得事業所)の取得や、一定の要件を満たす事業所では、ITツールを導入することで離れた複数の事業所による点呼業務を可能とする「IT点呼」が認められている。
IT点呼を導入することで、早朝や夜間帯に点呼を行うためだけに運行管理者を事業所に配置する機会が減少したことによって業務改善の一助となっている。しかし、IT点呼の導入が認められているのは、運送業の営業許可を取得した事業所に限られ、営業許可を持たない場合は本社等であっても対応することができないため、一部の事業所に負担が偏るなどの問題が発生している。そのため、運送業の営業許可を取得していない本社等の事業所においても運行管理者を配置することで他の営業所との点呼業務を処理できるよう要件を緩和されたい。
これは、国土交通省 自動車局 安全政策課 にとっては、効くでしょうねえ。なにせ、日本商工会議所からの政策提言ですから。
しかしながら、実際、事業用自動車総合安全プラン2025で掲げられた政策は、
現行制度において優良事業者にのみ導入が認められているIT点呼(遠隔点呼)について、ICTを活用した高度な点呼機器を使用することを要件に、導入対象とする事業者を拡大できる可能性がある。
となっています。
拡大はするようですが、あくまで、営業許可のある営業所単位を前提にしています。
営業所ではない、本社、本部での点呼集約(点呼センターとでもいいましょうか)は、緩和対象になっていません。
デジタル化、クラウド化、ICTをつかった本社集約、データシェアは、一般的な技術です。
情シス部門やセキュリティ担当者からすると、営業所に機器投資判断やネットワークセキュリティをまかせるわけにはいきませんから、本来、ウデのみせどころと思います。
営業所1カ所、2カ所単位で、部分的なIT化をしても、企業全体のトランスフォーメーションからすると、非効率や、将来ボトルネックになる可能性すらあります。
新経済連盟と、日本商工会議所、IT点呼の緩和要望は同じか?
さて、日本商工会議所以外にも、IT点呼の緩和を訴えている巨大な団体があります。
今年4月に新連盟が規制改革推進会議 投資等ワーキング・グループで説明した内容によれば
どうやら、運行管理高度化検討会でやっている「IT点呼の拡大」のための実証実験は、こちらの要望に近い内容になっていると思われます(対面とITで、運行後のヒヤリハット数は変わるか等)
遠隔(IT)点呼拡大については、以下、運行管理高度化検討会関連記事にてフォローしております。
新経済連盟は、対面 VS IT の安全有意差有無にもとづき制度化しよう、という主張のようで、日本商工会議所の「本社でも」論点は、いまのところは要望にいれてないようです。
IT点呼と対面点呼の話題というのは、普及の低さが、結果的にいま、DXの象徴、代理戦争の様相を呈している感じです。
引き続き本件は今後もフォローしてゆきます。