ライドシェア

 

地域公共交通計画

 

広島のバス共創モデルと運行管理業務の一元化。広島のバス共創モデルと、ライドシェア。地域交通リデザイン法のもと、R8交通政策基本計画とR7ライドシェア基本法は “共創”できるか?

2024.4.15

 


広島市 令和6年3月22日 報道資料
「乗合バス事業の共同運営システム構築に係る覚書締結式を開催しました」より

広島モデルとは?

2024年2月に、広島市はこのような基本計画を定めています。

 

もともと、数年前から数々の準備はされていたようで・・・
以下、R4年発行の地域公共交通計画は、人口動態変容による移動需要の低迷に加え、コロナ禍の事業者の苦境をリアルに捉えたものになっています。

はじめに より

(略)近年、自然災害の激甚化・頻発化や AI 技術を活用した新たな交通サービスの発展、さらには、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を契機とした人々の行動の変容など、公共交通を取り巻く状況変化が様々な形で生じています。 今後、引き続き市民生活や経済活動を支える公共交通を維持していく上では、このような公共交通を取り巻く様々な状況変化への対応を、競争を前提とする事業者に委ねるだけでは適切かつ迅速な課題解決が困難であることから、地域の交通政策を担い、地域のニーズを踏まえて公平な立場で関係者間の調整を行える行政側も参画し、官民の継続的な協調関係の下で、着実な取組が進められるようにする必要があります。 新たな「広島市地域公共交通計画」は、公共交通が直面する危機的な状況を乗り越え、公共交通を軸とした交通体系の構築を図るため、こうした新たな公共交通政策の下で、本市が事業者や市民と連携しながら今後5年間に実施する取組について定めるものです。

<赤注釈は当社にて>

法的整備も進みました。

 

このように、昨年から市や事業者が、落札したコンサル会社を交えて しっかりとした絵を描いておりました。

 

そして、この度、覚え書きがまとめられたと。

 

テーブル上でサインしたものが、コレですね。

広島市とバス事業者との共同運営システムの構築に係る覚え書き

 

民間の旅客運送事業者8社による、署名。めったにない光景かもしれません。ですが、今後は増えるかもしれません。

実に乱暴な言い方をすると

「公営バス→民営化(高度成長、団塊世代が主役の経済)→公営バス化(人口減少社会における地域公共交通)」

バス産業は、ぐるりと一周まわって、元にもどる、的な状況でしょうか。

市の都市計画部門や地域公共交通政策部門により、実質市税を投入することになりますから、将来は市民税・交通税で地域交通を維持することがニューノーマルになる、そんなトレンドが始まっているということでしょう。

現実を直視した素晴らしいことだと思います。
地域で民営バス企業同士が競う時代に、もう戻ることはないということかもしれません。

 

広島バスモデルと、”運行管理業務の一元化”

さて、先日 運行管理業務の一元化実施要領 が 発出されました。

運行管理業務の一元化とは、言い換えればBPO、もしくは

 ”運行管理者のシェアリング”
”運行管理業務を行える営業所のシェアリング”

であると考えます。

今般広島モデルの「共同運営」とは、安全管理面でいえば、「共同運行管理・共同点呼」(管理の受委託)も想定されていると思います。

基本方針の「戦略5」によれば

 

ここでは IT点呼(”遠隔点呼”のことでしょう)による業務改善が 施策として掲げられています。

ですが・・私が思うに、この遠隔点呼部分は、よく言われる「遠隔点呼は運行管理者の不足を補い、労働生産性を向上させる」という働き方改革的な文脈ではないのではないでしょうか。

スケール的には、運行管理業務そのもの・すべてを、一元化(人的資源、システム資源)しないと、共同運営の効果を得られることができないのではないかと。

ですので・・・

”資本関係のない事業者間運行管理業務の一元化” 
”共同運営法人(自動車運送事業者ではない)への運行管理業務の一元化” 

 

が必要ではないかと思います。最低でも、「自動車運送事業者ではない第三者における遠隔点呼」はマストではないかと。

 

広島モデル、ほか、地域公共交通計画に”地域ライドシェア”概念が、ぎりぎり間に合っていない件

 

現在、地域公共交通計画は 900 程度と報告されています。

 

ライドシェアの本格議論はこの1年に過ぎずません。

都市交通と地域公共交通の議論が入り交じりました。地域交通側では、首長や自家用有償運送事業者の事例が報告されました。でも、実はこの議論で置き去りにされたのは、「路線バス・乗合バス事業者」でした。

 

結果的に、まずはライドシェアph-1(タクシー会社雇用型・自家用自動車活用事業)先週からスタートを切っています。

一方で、もともと、ここ数年、日本全国で毎日毎日 地域公共交通計画が作られています。

しかし、4月スタートの、道路運送法78条3活用ライドシェアは、ハンパすぎて、計画に入れずらいと思うのです。自治体のみなさん、実際どうでしょうか?

もし今ライドシェア基本法が成立していれば、地域公共交通計画に「担い手」として正式に盛り込まれたり、地域公共交通活性化協議会にも地域型ライドシェア事業者(旅客運送事業者でもない)が参画していることでしょう。

 

それでも、想定している自治体・都道府県はあるようです。

広島県を例にとると、R6年の広島県地域公共交通ビジョンには「ライドシェア」が「担い手」として想定されているようです。

しかし一方で、広島市の地域公共交通計画は、2年前のものなので、ライドシェアという言葉も概念もありません。もちろん、そもそもライドシェアが公共交通と位置づけられるのか、これから作られる基本法がはっきりしない以上、盛り込みようがないのも事実ですが。

関連計画公布時期期間ライドシェア記載
広島市地域公共交通計画令和4年3月5年なし
広島県地域公共交通ビジョン令和6年3月5年あり(P64、66)
共同運営システムによる 乗合バス事業の再構築に向けた基本方針令和6年2月なし

 

バス共創の事務局(市?)は、ライドシェアをどう位置づけるのでしょうか? 

 

交通政策基本法 VS ライドシェア新法??

さて、簡易的に関連法のコンセプトを比べてみたいと思います。

関連法         目的・理念・はじめに
交通政策基本法この法律は、交通に関する施策について、基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより、交通安全対策基本法と相まって、交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。
地域公共交通の活性化及び再生に関する法律この法律は、近年における急速な少子高齢化の進展、移動のための交通手段に関する利用者の選好の変化により地域公共交通の維持に困難を生じていること等の社会経済情勢の変化に対応し、地域住民の自立した日常生活及び社会生活の確保、活力ある都市活動の実現、観光その他の地域間の交流の促進並びに交通に係る環境への負荷の低減を図るための基盤となる地域における旅客の運送に関するサービス(以下「地域旅客運送サービス」という。)の提供を確保するために地域公共交通の活性化及び再生を推進することが重要となっていることに鑑み、交通政策基本法の基本理念にのっとり、地方公共団体による地域公共交通計画の作成及び地域公共交通特定事業の実施並びに再構築協議会による再構築方針の作成に関する措置並びに新地域旅客運送事業及び新モビリティサービス事業の円滑化を図るための措置について定めることにより、地域旅客運送サービスの持続可能な提供の確保に資するよう地域公共交通の活性化及び再生のための地域における主体的な取組及び創意工夫並びに地域の関係者の連携と協働を推進し、もって個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現に寄与することを目的とする。
第二次交通政策基本計画
(2021~2025)           
はじめに
(中略)公共交通機関では、需要が大幅に減少し減収となる中でも運行便数を確保するという社会的な要請の中、特に中小の交通事業者を中心に、事業の継続が危ぶまれるような極めて深刻な経営悪化に陥っている。 また、今後、テレワーク等の新しい生活様式が社会に定着することで、積年の課題であった東京一極集中の是正と地方の活性化や、交通需要マネジメントによる大都市圏等での交通集中の緩和等の期待が持たれる一方で、全国の公共交通機関においては、感染拡大以前の交通需要には戻らない可能性も予見されている。 我が国の交通サービスが社会構造の大変化や大規模災害等のリスクに直面する中で持続的に運営され、強靭な形態となるためには、交通事業者はいかなる手立てを講ずるべきか、行政はどのように貢献すべきか、また利用者はどのように負担すべきか。 従前より交通政策が目指してきた「あらゆる地域で、あらゆる人々が、自らの運1 転だけでなくニーズに対応した移動サービスを享受できる社会の実現1」という使命は、今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、これまでになく重要度・緊急度が増しており、もはや逐次的・漸進的な改善では手遅れとなるおそれがある。 また、我が国の交通が、社会・経済の急激な変革に対応し、供給者目線から真に利用者目線でのサービス展開に転換するためには、デジタル化や自動化、デジタル・トランスフォーメーション(DX)をはじめとしたモビリティの革新や、既存の制度・規制の見直しに大胆かつ迅速に取り組まなければならない。 加えて、陸海空の基幹的な交通ネットワークの着実な強化や、頻発・激甚化する自然災害への備え、インフラ・システムの老朽化への対応、カーボンニュートラルに向けた取組など、交通分野が対応すべき課題は重要かつ広範に跨る。 こうした問題意識の下、持続的で強靭、高度なサービスを提供する次世代型の交通システムへ転換すべく、多様な主体が連携・協働しつつ、商業的手法に加え、公助・共助・自助に係るあらゆる施策を総動員して全力で取り組んでいかなければならない。

こんなカンジです。共通しているのは、人口減少社会を前提としたまちづくり、とくに、公共交通は厳しいという大前提の認識が強調されています。(直視すべき事実ですからね)


第二次交通政策基本計画は、以下の計画と連携・整合を取れ、となっています。

交通安全基本計画国土形成計画社会資本整備重点計画
観光立国推進基本計画総合物流施策大綱国土強靱化基本計画
まち・ひと・しごと創生総合戦略環境基本計画

このなかでもとくに 社会資本整備重点計画との連携がもっとも重要だと述べられています。

 

まとめ

なぜコンセプトを比較してみたかというと・・・。

やはり2025年に待ち受ける、ライドシェア新法の「理念」(第一条 目的) が重要になってくると思うわけです。

「誰の、何のための足なのか」を第一条(目的)でどう謳うのか。

都市計画、交通政策の文脈のなかに位置づけられるならば、あらゆる種類の基本法や基本計画に「後付け」で整合させる必要があります。位置づけ次第では、全国の都道府県、自治体の公共交通計画にも、大きな影響を与えることでしょう。

 

 

あるいは、ライドシェアとはIT技術を前提とした新たな産業である・・ と位置づけ、地域公共交通とは全く別の、産業育成の理念が中心コンセプトになるとしたら?

たぶん、いちばん困っているのは、自治体の「都市計画局」「交通政策課」ではないかと私は思う。

いちばんの懸念は、「地域公共交通活性化協議会」が、共同運営(共同経営ですよね)せざるを得なくて、市税が入るバス事業者が中心となったり、空白地に営業所を出せないタクシー事業者が中心となったり、ライドシェア事業者が排除されたり、そんな中、オンデマンドバスとか、オンデマンドタクシーとか、乗合タクシーとか、ありのり交通とか、相変わらず一般市民には理解しがたい定義と規制でお茶を濁し、結局、「担い手」も市民もがっかりするという構図です。

この懸念は、昨年末の規制改革推進会議で公表されている、各自治体の首長アンケートにも現れていると思います。以下参照。

個人的に注視したいのは、「第三次 交通政策基本計画」「第六次 社会資本重点整備計画」の審議会の委員に誰が選ばれるか、というトコロです。