事業用自動車事故調査報告書

 

「出向ドライバー」と「管理の受委託」運行時の事故発生時の課題を浮き彫りにした、大型乗合バスの追突事故(事業自動車事故調査報告書)

2026.5.5

 

 

 

事業者においては運行表どおりの運行を行うよう常日頃から指導していたにもかかわらず、運転者は乗務記録において虚偽の記録をしていた。しかしながら、事業者は、日常の運行管理を適切に行っておらず、この虚偽の記録を発見することができずに運行
表どおりに運行させるよう是正できなかったことから、長時間の運転となり、運転者の疲労につながった可能性が考えられる。

本事故が発生した路線の運行については、運転者を別の事業者から出向を受けており、本バス事業者は、運転者の乗務管理や指導監督等の運行管理全体の責任を負っていたが、以前からその事業者に「高速乗合バスの管理の受委託について」に基づき運行管理を委託していたことから、自ら運行管理を行わなければならないことについての認識が不十分であったため、本来実施すべき運転者への指導・監督が行われなかったと考えられる。

直接的な原因は運転者の漫然運転や居眠り運転。が、間接的には上記が背景にあり、本文中で詳しく述べられている。

もうすこし詳しく見てみよう。

2.1.1.1 事業者からの情報

事故を起こした事業者(以下「当該事業者」という。)から以下の情報が得られた。
・従前、本運行は、当該事業者(参考1において「A事業者」という。)が委託者となり、受託事業者(参考1において「B事業者」という。)に委託する便として受託事業者が保有する車両(大型バス)にて運行していた。

・この管理の受委託により長年運行を行っていたが、当該運行に使用していた受託事業者のバスが故障により運行できなくなったため、令和4年 10 月1日から受託事業者(参考2において「B事業者」という。)からの出向契約により運転者の出向を受け、当該事業者(参考2において「A事業者」という。)の車両を使用した自社運行に変更していた。

・これにより、当該運転者及び交替運転者は、以前の受託事業者の運転者として雇用されたまま、当該事業者に雇用され、運転者として選任され運転業務に従事していた。


・なお、出向運転者は、出向期間中、出向契約上出向元事業者においては、休職の扱いとなっている。

・出向期間においては、事業全般の管理・監督全般を当該事業者が行わなければならないところ、点呼及び運行経路の情報の伝達のみ当該事業者が行っており、その他の管理・監督については出向元事業者が行っていた。

・当該運転者及び交替運転者は、当該事故前々日、一度出向元事業者へ出勤し、その後、当該事業者に出勤し始業点呼を受けている。

・点呼は、当該事業者の運行管理規程に基づいた方法で実施している。

・当該運行は、出向運転者2名乗務による運行であり、1日目の夕刻に東京を出発し、2日目の朝に和歌山に到着(往路)、その日の夕刻に和歌山を出発し、3日目の朝、東京に帰着(復路)する深夜運行便(社内呼称は和歌山便)で、東京に戻る復路で当該事故は発生した

2.1.1.3 「管理の受委託」と「出向」

2.1.1.1 の記述にある「管理の受委託」とは、道路運送法(昭和 26 年法律第 183号)第 35 条の許可を得て、「高速乗合バスの管理の受委託について」(平成 24 年7月 31 日国自安第 55 号、国自旅第 236 号、国自整第 78 号)(参考4参照)に基づき、委託事業者が許可を受けた路線の運行を「管理の受委託契約」により、別の運送事業者に運行させるもので、実質的な運行管理・運営は受託した事業者(参考1のB事業者)がすべて行う制度であり、委託事業者(参考1のA事業者)には、定期的に受託事業者の関係法令の遵守状態や交通事故の発生状況を調査・確認し、違反等があった場合は直ちに必要な是正措置を講じるよう要求する義務が課されている。

管理の受委託の形態には、「乗合バス委託型」と「貸切バス委託型」があるが、本許可は、「貸切バス委託型」の許可であって、委託事業者の高速乗合バスに係る一般乗合旅客自動車運送事業の管理を他の一般貸切旅客自動車運送事業者に委託し、受託事業者が保有する事業用自動車をその運行の用に供するものである。

一方、「出向」とは、出向元(参考2のB事業者)の運転者の雇用関係はそのままに休職扱いとし、出向先(参考2のA事業者)と新たな雇用関係を結び、出向先の運転者として運転業務に携わる「在籍型出向」と呼ばれるものである。よって、実質的な運行管理・運営は出向先事業者がすべて行う制度である。「出向」と「管理の受委託」形態における両事業者間の道路運送法関係規程の責任分担(事業の管理・運営)は、異なる形態となっている。当該運行は、管理の受委託でなく当該事業者の自社運行であり、運転者は出向元事業者からの出向者であったことから、運行管理全般に係る責任は当該事業者が負うこととなる。

2.5.4.4 当該事業者の指導及び監督の実施状況

当該事業者の統括運行管理者の口述及び指導監督の記録によると、次のとおりであった。
・出向元事業者と連絡会議を行っていたが、最近は行われていない。

・当該運転者は出向している運転者であるため、当該事業者において指導監督を実施するか、若しくは外部で指導を受けた際には適切に指導を受けているか確認し必要に応じて追加の指導をする必要があるが、当該事業者では当該
運転者に対して指導監督は実施しておらず、出向元事業者に任せていた。

・出向元事業者において指導監督を実施しており当該運転者も受講していると聞いているが、当該事業者は出向元事業者での当該運転者に対する指導監督の状況を把握してはいない。

・令和4年 10 月・11 月期の「管理受委託合同研修会」においては、「旅客自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(平成 13 年 12 月3日国土交通省告示第 1676 号・最終改正平成 30 年6月1日国
土交通省告示第 708 号)(以下「指導監督指針」という。)で定める指導内容のほか、ドライブレコーダー映像を活用した危険予知トレーニングや事例研究、非常口や非常信号用具、消火器の取扱い、異常気象時における対処方法
などについて指導しているが、当該運転者は参加していない。


・事故後、当該運転者は、「当該事故車両は自社の車両ではないことから、三角表示板はどこにあるか分からなかったが、非常口はたまたま開け方を知っていて、また発炎筒はすぐに見つかった。」と述べていた。

・当該事業者の車両に乗車するに当たっては、当該事業者が定めるカリキュラムに従い指導を実施し、当該事業者の車両を運転するにふさわしい知識を取得させる必要があったところであるが、それらを実施しておらず、また出向
元事業者でどの様な指導監督を受けていたのかについても確認していなかった。

 

5.1.2 出向運転者への指導・監督の徹底

・出向契約により運転者の出向を受ける事業者は、出向運転者に対する指導監督に関し、以下のことを徹底すること。
・年間計画を作成し指導監督指針に従い指導及び監督を確実に実施すること。なお、指導を行った際に運行中などで参加できなかった運転者に対しては、別途時間を設けて個別に指導を実施すること。

・仮に、出向元事業者において、指導監督の全部または一部を行っている場合には、適切な指導監督が行われているかどうか把握し適切に対応すること。

・運行表に従った運転の交替を行わせるだけでなく、運行表どおりの運転交替がなぜ必要なのか、長時間運転の危険性を丁寧に指導監督すること。

・運転者に対する指導監督が形式的なものとならないよう留意するとともに、運転者が指導内容を理解できているかを小テストやドライブレコーダーの映像記録を確認するなどし、必要に応じ指導監督の方法について見直すこと。

・高速道路上での事故は、二次的、三次的事故を引き起こす可能性があることから、
安全な場所への移動、非常点滅灯の点灯、発炎筒の点火、停止表示器材の設置等、緊急時の具体的な対処方法や非常時の避難誘導等過去に実際に起きた事故例を想定した対処方法について、定期的に実車を用いた訓練を行うことにより習熟に努めること。

・運転者には、当日運行する車両の発炎筒や停止表示器材の格納場所等について、正確に理解させること。

 

以下、出向と管理受委託に関する法的整理を文中より抜粋した。

https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/jikochousa/pdf/2341201.pdf