先週と今週、2つの判決が報道されている。
覚えているひとも多いだろう。
そして、昨日。
判決文の要旨。裁判長の感情と息づかいが聞こえるようだ。要旨を読んでみよう(聞いてみよう)。
【主文】
被告を禁錮5年とする。
【予見可能性】
2022年4月23日午前10時ごろ、観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が半島先端付近まで往復3時間15分のコースで出航した。被告は事前に運航予定を了承していた。出航時点で、船が航行する海域の天候が運航基準を明らかに超える風速や高波が予想された。航行させた場合、安全に支障をきたし、沈没や死亡事故が発生する可能性を予見できた。
事故当時、ハッチのふたを固定するレバーが十全に機能しない不具合があったが、ふたが開いたのは通常の気象を超える強風と高波で航行したからこそ生じた。開放状態となったハッチから海水が流入して沈没した。
【注意義務】
被告は安全統括管理者と運航管理者を兼務し、輸送の安全確保において広範かつ重要な責務を負う立場にあった。運航管理者として船長に運航中止を指示すべき業務上の注意義務を怠った。
事故当日、被告が船長と運航に関する会話をしたこと自体が疑わしく、運航基準を超える予報が出ていた状況で運航を中止させていないことから、十分な情報に基づく実質的な協議が行われたとは到底認め難い。
【量刑の理由】
被告は運航管理者などに選任された21年以降も運航判断にほとんど関与せず、経験の浅い船長らが同業他社に倣って出航の可否などを判断していた。就航中の勤務が原則として定められているが、事務所を離れることが常態化していた。安全意識の希薄さや管理者としての自覚の無さを示す種々の事実が認められる。
こうした背景を踏まえ、被告の過失は運航可否を誤った単発的、偶発的なものにとどまらず、安全を軽視する平素からの態度が表れたとみるべきで、非難の程度は大きい。発見されていない6人を含む乗客乗員計26人の尊い命が犠牲になった結果はこの上なく重大で、同罪の事案の中でも最も重い部類に位置付けられる。浸水が進む船上で無事に帰れないことを悟ったときの絶望や恐怖、冷たい海に投げ出され、呼吸もできず波にのまれていくときの痛みや苦しさは想像に絶する。
被告が法廷で述べた反省や謝罪の弁は、責任の重さを真摯(しんし)に受け止めているようには見受けられず、表面的との評価を免れない。禁錮刑の上限で臨むほかない。
報道機関は、責任所在の言い方を間違えているのでは?
一連の報道では、「社長」という言い方をしているが、不正確だと思う。
やけに、「社長」が連呼されるが、正確にいうと、「運航管理者としての役割をそもそも果たさなかった。しかもそれが社長であった」 が事実だと思う。
つまり、企業代表としての結果責任に加えて、そももそも実務管理責任者としての責務に対する結果の責任、2重に罰を受けるべき、と言うべきではないか。
上記、判決文のなかではしっかりと、
被告は安全統括管理者と運航管理者を兼務し、輸送の安全確保において広範かつ重要な責務を負う立場にあった
と指摘されているが、ほとんどの報道では省略され、簡略表現になっている。
実際のところ判決前にはすでに国土交通省からの行政処分は決着している。
この国土交通省の行政処分の通知書によれば、
安全管理規程上、安全統括管理者及び運航管理者に求められる責務は重大であるにも関わらず、安全統括管理者と運航管理者を兼任する会社社長(以下「社長」という。)は、両ポストに求められる職務を理解せず、法令や安全管理規程への理解も不十分であり、その遂行を怠っていた。
○また、運航管理者は、事故当日の運航において、KAZUⅠ(以下「本船」という。)が運航している間、営業所への常駐義務を果たさず、また、運航中は運航管理補助者も不在という状態であった。さらに、自らが職務をとれない場合に業務を引き継ぐべき運航管理者代行を置くことも怠った。
としっかり業務上の使命と責任と結果を厳しく断罪している。
一方軽井沢スキーツバーバスは、「社長」と「運行管理者」、被告は二人だ。罪も別で問われている。
知床の事故は、これが同一人物であるという体制の違いがある。
いまの報道の言い方「社長」は、「社長の責任は重い、的なわかりやすいストーリー」で伝えていると感じる。
「運航管理者」という専門用語を使わないことで、逆に、報道の軽さを感じるのは私だけだろうか?
41人。くしくもこの6月、交通の歴史上まれに見る死者数を生んだ2つの事故の判決が出た(まだ終わってない)。
そして、6月といえば、もうすぐ5名死傷事故が起きた28日がやってくる。
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