デジタコがなくなる日、もしくはシン・デジタコ義務化へ? 「普及促進」という寸止めは、だらだら続くよ、自動運行装置の普及まで?
2024.8.14
トラック事業者の運行管理の高度化により輸送の安全確保を図るため、デジタル式運行記録計について、将来的な義務づけも視野に入れつつ強力な普及促進を図る
時系列でこのストーリーを追います。
2023年6月 閣議決定
P31に、冒頭の文言があります。
2023年9月 経団連の要望
https://www.keidanren.or.jp/policy/2023/061_honbun.html#n22
2024年4月からトラック運転手の時間外労働時間の上限規制が適用されることから、運行管理の厳格化が求められている。そのためにはトラック運転手の労働時間の可視化が必要であり、政府が決定した「物流革新に向けた政策パッケージ」において、デジタル式運行記録計(デジタルタコグラフ。以下、デジタコ)の将来的な義務付けが提言された。
運行記録計とは、自動車の運行状況を把握するため、運行時間や距離、速度の変化(法定三要素)などを記録する機器であり、貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条により、4トン車以上のトラックには運行記録計の装着が義務付けられている。運行記録計には法定三要素を記録紙に保存するアナログ式、データとしてメモリに保存するデジタル式(デジタコ)があり、それぞれ「道路運送車両の保安基準」にて技術基準が定められている。
近年、技術革新や通信環境の変更によって、テレマティクス端末(自動車と通信システムを組み合わせて行う情報サービスで用いられる端末)はデジタコと同等の機能を持つようになっている。他方、デジタコにおいては2007年以降技術基準の抜本的な改正がされていないことから、技術革新等の変化に対応できておらず、メモリのデータ改ざんや破損を防止する観点から厳格な基準が設定されている。その基準確保のため、デジタコの価格は約20万円と高くなり、国土交通省の事故防止対策支援推進事業予算にて機器代の3分の1が国から助成されているものの、普及にあたっての制約となっている。なお米国では、デジタコの記録をメモリではなくクラウド上に保存することを認めており、低廉な価格(約2万円)で供給されている。
そこで、技術革新と通信環境の変化を踏まえて、デジタコの技術基準を見直し、米国と同様に記録の保存をクラウド上で認めるべきである。
これにより、オーバースペックとなっていたデジタコの機能適性化が進むことでその普及が加速し、適切な運行管理と「物流ネットワークの見える化」が可能になるほか、政府の予算削減にも寄与する。なお、デジタコの搭載によって進展する「物流ネットワークの見える化」は、政府が「フィジカルインターネット・ロードマップ」において目標に掲げる「フィジカルインターネット」実現の礎となるとともに物流の効率化や物資の安定輸送にも資する。<根拠法令等>
- 道路運送車両の保安基準第48条の2、別添89運行記録計の技術基準
米国を例に、クラウド保存を要望するものです。
2023年 国土交通省 貸切バス デジタコ義務化
以下を参照ください。
国土交通省は、軽井沢スキーツアーバス以後、貸切バス事業者の安全情報をデータ化し、公表しています。
アンケートではなく、正式な報告です。3851社のデジタコやドラレコ 装備状況です。
2023年11月 パブリックコメント
2024年1月 パブリックコメント終了と、保安基準改定
上記パブコメ終了と同時に発行された、2024年Ver 運行記録計の保安基準。
2024年2月 第一回 物流革新に向けたデジタル式運行記録計の普及促進に関する検討会 はじまったよ~!
今年初め、検討会が作られました。
第一回目の検討会資料。委員の方々。
さて、どういう結論を出すのでしょうか。
議事録
面白い意見がありました。
○ 本検討会のタイトルが「デジタル式“運行記録計”の普及」なのか、「デジタル式“運行記録”の普及」なのかもポイントである。機器にどこまでこだわるかも今後のテーマと考えられる。
なるほど~! スルドイツッコミですねえ~
2024年5月 規制改革推進会議 ”運行記録規制の見直し”
上記のP31より (赤文字は本誌注釈)
イ 物流車両情報の即時把握等を可能とする運行記録規制の見直し
【a,c:措置済み、b:令和5年度検討開始、令和6年結論・措置】
<基本的考え方>
物流のいわゆる「2024年問題」に対する有力な方策として、トラックや倉庫を始め既存の物流リソースの複数事業者間の有効活用や、荷主とトラック運送事業者間のより効率的なマッチング等を実現する物流車両情報の即時把握等を促進する観点から、物流車両情報の基となる運行記録規制の見直しをする必要がある。以上の基本的考え方に基づき、以下の措置を講ずるべきである。
<実施事項>
a 国土交通省は、物流事業者による多様な車両運行データの取得・活用を通じて、物流ネットワークの「見える化」を促進し、物流の効率化や物資の安定輸送を実現する観点から、道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)に基づき設置が必要とされる運行記録計について、
①クラウド上のみでの車両運行データ保存(通信不能時の車両運行データが機器内で記録できる場合に限る。)、
②Wi-Fi等の通信を活用した車両運行データ出力(送信)、
③走行速度や走行距離といった情報取得時の車速パルス以外の信号利用を可能とするため、道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(平成14年国土交通省告示第619号)について所要の改正を行う。
b 国土交通省は、運行記録計を車両に必置とする貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成2年運輸省令第22号)第9条の規制について、自動運転を早期に社会実装する観点から、事業用自動運転車の車体や関連システムで運行記録データ(速度・時間・距離)を容易に取得できる場合には、別途、運行記録計の設置を不要とすることを検討する。
c 国土交通省は、物流に関わる事業者の、共同輸配送を始めとした物流効率化を推進する観点から、運送計画情報や運送能力情報、入出庫情報等物流に関わる情報項目の定義やデータ型の標準形式を定めた「物流情報標準ガイドライン」を事業者が活用するに当たっての課題を調査するとともに、事業者におけるガイドラインの導入方法や導入事例を分かりやすく示した利用手引を新たに作成・発信する。
「運行記録規制」という言葉と、「自動運転を早期に社会実装する観点」という表現から、
1.技術要件(規制)の緩和(現代的にする)
2.重要なのは、ハードではなく情報のデザイン、特に自動運転時代に向けて
このような思想、シナリオが見えてきました。
・1月5日の保安基準レベルでの義務化
・1月5日の保安基準からさらに要件を緩和した上で義務化
・保安基準側ではなく、「運行記録規制」側の要件を緩和することで、義務化ではなく市場の普及(データ利活用インセンティブ)に任せる
ワタシは安全プラン2030であっさり義務化を明言すると思ってましたが、すこし違うストーリーになる可能も出てきたかな・・・。
どうでしょうか。 みなさん どう思われますか?
2024年7月 第二回 物流革新に向けたデジタル式運行記録計の普及促進に関する検討会
別のアンケート。
・貸切バスにおける義務化の例(装着するにあたって行ったアンケート調査の結果、車両数ベースで約84%の装着率)も踏まえつつ、一定の装着率に達した以降で、最後の普及の一押しをするには義務化が必要であると考えられる。
まずは、特に10両未満の事業者に対する補助策の充実等を通じて装着率を向上させたうえで、貸切バスにおける義務化の例を踏まえつつ、導入率についてフォローアップした後、デジタコの装着の義務化の要否を検討することが考えられる。
議事録
2024年7月30日 第三回 物流革新に向けたデジタル式運行記録計の普及促進に関する検討会
そして、7月30日。
2024年7月30日 普及目標の設定
P5 より
デジタコを含めた車両から得られる運行記録に係るデータ項目の標準化や、運行中の運転者のバイタルデータ等の活用による安全性の向上については、自動車運送事業安全対策検討会において作業方針等を整理した上で、トラック以外の輸送モードも含め、検討していく。
事業用自動車総合プラン2030に 貸切バス以外の業種にデジタコ義務化 盛り込む?
それとも、EDRや自動運行装置の普及(2035頃)で いいんじゃね? 的な?
私見。
第十二次交通安全基本計画(R8年2025~令和12年2030 3カ年) において
・事業用自動車 デジタコ義務付け(タクシー、トラック、乗合バス)
・事業用自動車 ドライブレコーダー義務付け(タクシー、トラック、乗合バス)
・安全運転管理者選任事業所 ドライブレコーダー義務付け(全産業5両以上)
・飲酒運転違反者に対する道交法によるアルコールインターロック装着義務付け
を盛り込むことが、一般交通や運輸の安全に貢献できる具体的かつ実効性の高い施策と考える。
□参考 第11次交通安全基本計画(R3~R7)
https://www8.cao.go.jp/koutu/kihon/keikaku11/index.html
□参考 事業用自動車総合安全プラン2025(R3~R7)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk2_000001.html
-
2024.12.16
-
2024.12.12
-
2024.12.4
-
2024.12.2