3月末、国土交通省は「プラン2025」により、今後5年にわたる安全政策の骨子と、具体的な目標を宣言しました。
その後、各業界ごとに、「XXX版プラン2025」として、目標実現のための具体的な施策が公表されはじめています。
5月24日、全日本トラック協会から、以下の安全政策が発出されました。
目標は、死者数+重傷者数「970人以下」。
そして、「飲酒運転ゼロ」。(飲酒『事故』ゼロではなく)
さあ、スタートです!
1.飲酒運転撲滅に向けた取り組み
(1)全ト協が作成した「飲酒運転防止対策マニュアル」の活用およびセミナー等による啓発活動
(2)事業用トラックが関係した飲酒運転事故事例等の周知
(3)飲酒運転根絶に向けた各都道府県の取り組み事例にかかる情報の共有化
(4)飲酒運転根絶に向けたリーフレット等啓発資料の作成・周知
(5)アルコール検知の不正行為防止および測定結果の確実な記録体制整備
2.事業用トラックによる交通事故実態の把握と要因分析および事故防止対策の啓発
(1)交通事故実態の⾞籍別、発生地域別、⾞両区分別、道路区分別等詳細な統計・分析
(2)交通事故実態に即した事故防止セミナー等を通じた交通事故防止意識の醸成
(3)WE B版ヒヤリハット集の公開等啓発活動の推進
(4)交通事故映像等の活用による、より効果的な実践的セミナーの全国展開
(5)ドライバー等安全教育訓練促進助成事業対象施設の拡充
(6)ドライバー教育テキストを活用した初任運転者等トラックドライバーに対する教育指導体制の強化
(7)大型⾞両の⾞輪脱落事故防止およびトレーラー火災防止対策の啓発
3.IC T技術等新技術の普及促進
(1)先進安全自動⾞(AS V)の普及拡大
(2)⾞両周辺の安全確認支援装置、アルコールインターロック装置など安全対策機器の導入促進
(3)IT機器等を活用した高度な点呼システムの普及および適用範囲の拡大
(4)A Iロボット等の点呼への活用など運行管理の効率化
4.超高齢化社会を踏まえた事故の防止対策
(1)高齢歩行者が事故被害者となる事故実態の関係者への周知
(2)事業用トラックドライバーに対する高齢歩行者等早期認知の呼びかけ
(3)高齢歩行者特有の行動(昼間の交差点および夜間の道路横断)の啓発
(4)交差点通過時における⾞両周辺歩行者等の安全確認の励行
5.関係者の連携による安全体質の強化
(1)長時間労働の是正および取引環境の改善等働き方改革関連法への適切な対応
(2)運輸安全マネージメント、Gマーク制度および引越安心マーク制度の普及促進
(3)各種事故防止キャンペーンおよびトラックドライバーコンテストの実施
(4)新型コロナウイルス感染症対策等の推進
本誌 Pick up ワード
上記トラック版2025から、想定読者の皆様(安全統括、運行管理、点呼管理)で興味があると思われる点を上げますと、、、
○アルコール検知器の「不正行為防止」
○アルコール検知器の「測定結果の確実な記録」体制整備
○IT機器等を活用した「高度な点呼システム」の普及
○IT機器等を活用した「高度な点呼システム」の適用「範囲の拡大」
○「A Iロボット等の点呼への活用」など運行管理の効率化
(「 」は本誌でつけています。)
「IT点呼機器」という表現をあえて使わず、「IT機器」。
「ロボット点呼」「点呼ロボット」という表現もあえて使わず、「活用」
「解禁・規制緩和」ではなく「普及」「活用」
いわゆる「無人点呼解禁か!」「IT点呼全事業者解禁か!」という、法令が絡む部分には突っ込まない表現になっているところは、ご留意ください。
トラック協会のR3年度事業計画書
さて、トラック版プラン2025推進にあたり、内容によっては予算が必要です。上記施策は予算にどう計上されているのでしょうか・・。
5ページ中段に
④高度なIT点呼システム等の普及拡大
・デジタル式運行記録計等の高度化に合わせ、IT機器等を活用した高度な点呼システムの普及および適用範囲の拡大を図る。
・輸送の安全体制の確保を前提として、AIロボット等の点呼への活用など運行管理の効率化に取り組む。
きちっと計画に入っていますね。
予算をみてみましょう。
7億6千9百万の「事故防止対策事業費」
・新型コロナウイルス感染症対策に関する調査、飲酒運転防止及び車輪脱落等に関する調査、運転免許制度の見直しに関する調査、トラック運送事業に係る健康管理システム開発に関する調査(「運輸ヘルスケアナビシステム」フォローアップ調査等)
・交通事故分析調査、初任運転者の教育訓練等総合安全対策調査、過労死等防止対策調査、健康起因事故防止対策に関するフォローアップ調査、睡眠時無呼吸症候群(SAS)に関するフォローアップ調査
・安全装置等導入促進助成(後方・側方視野確認装置、アルコールインターロック装置等)
・事故防止啓発(労災事故防止啓発リーフレット、荷役作業労災事故防止対応等)
・次期事業用自動車総合安全プラン解説セミナー、運行管理業務と安全マニュアル改定作業、新型コロナウイルス予防対策マニュアル改定作業、トレーラ安全対策フォーラム、運輸ヘルスケアナビシステム活用及びSAS対策セミナー、ドライバー教育テキスト改定、健康起因事故防止マニュアル改定
・健康起因事故防止及び過労死等対策に係る研修、特車、大型車に係る研修
・安全研修センター研修受講助成
・SAS検査助成、血圧計導入促進助成
このような予算方針が、結果的に、このようになっています。
「ロボット点呼」「点呼ロボット」活用促進の予算は、今期は計上されていません。今年度の安全対策は、安全装置装置、教育訓練、SAS、血圧計、4カテゴリでいっぱいのようで、ロボ点呼系はなさそうです。
昨日、千葉県トラック協会が、独自で商品を指定した助成制度を開始しましたが、全日本トラック協会は、今年度はやらないようでして、来年度あたり、国土交通省が「AIロボット」「点呼ロボットとは何か」という技術定義をした後でしょうか?
アルコールインターロックの助成も、「国土交通省の呼気アルコール・インターロックの技術指針」があって初めて助成対象となった経緯がありました。
AIやロボットは、旅客も貨物も利活用することになるので、ロボット点呼はトラック業界(協会)が要件を決めることにはならないと思われます。
点呼支援機器、無人点呼、自動点呼機器の実証実験はすでに始まっていますので、「ロボット点呼とは?」、名称定義、技術要件定義はそう遠くはないでしょう。