飲酒運転

 

事業用自動車総合安全プラン2030

 

無点呼起因事故。「なぜ点呼をさせてくれないのか?」という声を上げないドライバーと、無点呼体制を暗黙的に許容する事業者の共犯関係について

2026.4.5

昨年から今年にかけて、酒気帯びプロドライバーの事故報告が減ってきている。

下げ止まりが続いてきたが、やっと減少へ向けて進みつつあり、「統計上ゼロ」はプラン2030終了年には達成できるかもしれない。

とはいえ、こういう事故もまだある。

(3)中型トラックの酒気帯び運転事故
  3月27日(金)午前6時頃、福島県二本松市の片側2車線の国道において、同県に営業所を置く中型トラックが第1車線を走行中、軽乗用車に追突した。 この事故により、軽乗用車の運転者が軽傷を負った。
 かけつけた警察官が、中型トラックの運転者に対して飲酒検査を実施したところ、呼気から基準値を超えるアルコールが検出され、酒気帯び運転が発覚した。
 当該運転者は、運行管理者が不在であったため、業務前点呼は実施されていなかった模様。

点呼していれば防げたケースではないかと思う。

こういう事故は、「飲酒運転事故」ではなく

「点呼起因飲酒事故」

と言い換えたほうが適切だと思う。

点呼していれば防げた事故かと(途中での飲酒でなければ)。そういう意味で。

輸送安全規則 17条 運転者の遵守事項

輸送安全規則は大まかには事業者の義務、運行管理者の義務・業務を定めていると認識されがちだが、「プロトラックドライバー」としての義務を明確に定める条項がある。

(運転者)
第十七条 貨物自動車運送事業者の運転者は、前条に定めるもののほか、事業用自動車の乗務について、次に掲げる事項を遵守しなければならない。
一 酒気を帯びた状態にあるときは、その旨を貨物自動車運送事業者に申し出ること。
一の二 疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれがあるときは、その旨を貨物自動車運送事業者に申し出ること。
二 道路運送車両法第四十七条の二第一項及び第二項の規定による点検を実施し、又はその確認をすること

三 乗務を開始しようとするとき、第七条第三項に規定する乗務の途中及び乗務を終了したときは、同条第一項から第三項までの規定により貨物自動車運送事業者が行う点呼を受け、貨物自動車運送事業者にこれらの規定による報告をすること。
三の二 事業用自動車の運行中に当該事業用自動車の重大な故障を発見し、又は重大な事故が発生するおそれがあると認めたときは、直ちに、運行を中止し、貨物自動車運送事業者に報告すること。
四 乗務を終了して他の運転者と交替するときは、交替する運転者に対し、当該乗務に係る事業用自動車、道路及び運行の状況について通告すること。
五 他の運転者と交替して乗務を開始しようとするときは、当該他の運転者から前号の規定による通告を受け、当該事業用自動車の制動装置、走行装置その他の重要な装置の機能について点検をすること。
六 第八条第一項の規定による記録(同条第二項の規定により、同条第一項の規定により記録すべき事項を運行記録計による記録に付記する場合にあっては、その付記による記録)をすること(一般貨物自動車運送事業者等の運転者に限る。)。
七 第九条の三第一項の規定により一般貨物自動車運送事業者等が作成する運行指示書を乗務中携行し、同条第二項の規定により運行指示書の記載事項に変更が生じた場合に携行している運行指示書に当該変更の内容を記載すること。
八 踏切を通過するときは、変速装置を操作しないこと。

④。17条の3項。点呼を受けないことは、ドライバーは17条4項違反なのである。

一件、点呼執行者・運行管理者等、事業者側だけの責任や違反に思われがちだが、そうではない。

運行予定の運転者は、点呼を受けない場合、「点呼を受けるまで出発しない責任・義務」がある、というのの規則の意図だ。

ただし、日本はいわゆる「商用車運転者登録免許制度」(Commoercial Driver Lisence)ではなく、「車種を扱う技能免許・資格」(道路交通法ベース)なので、「事業法にもとづくプロドライバーとしての個人の点数」概念がない。つまり、点呼を受ける義務違反ではあるが、17条遵守違反(実害)はない。

事業法と輸送安全規則の理念に基づくならば、ドライバーは

「オレに17条を守らせろ」

と言ってもいいくらいなのだ。

 

ドライバーがこう言ってこないことをいいことに、暗黙的に? 諦念とともに、点呼未実施率に向き合わないでいる事業者がまだいるようだ。ということを上記事故は物語っているように思った。

 

プラン2030

さて、今般4月1日から、あらたな5年計画、事業用自動車総合安全プラン2030が始まった。

飲酒運転事故の削減目標は、公式にはこうなっている。

バス飲酒運転ゼロ
タクシー飲酒運転ゼロ
トラック飲酒運転ゼロ
軽貨物飲酒運転ゼロ

このゼロを達成するために・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2.運行管理未実施、飲酒運転等悪質な法令違反の根絶

① 悪質違反・重大事故の再発防止のための啓発 自動車運送事業においても、点呼の未実施、飲酒運転といった悪質な法令違反が生じており、令和6年(2024年)には、事業用中型トラックによる飲酒を起因とする死亡事故も発生した。こうした状況を踏まえ、点呼時の適切なアルコールチェックの徹底に加え、飲酒運転の背景にあるアルコール依存症等への対策も講じていく必要がある。

とのこと。

具体的にはこうだ。

行政バスタクシートラック車両メーカー
点呼の正しいタイミングの周知や、点呼時のアルコールチェックの徹底を引き続き周知「飲酒運転防止対策マニュアル」を活用した飲酒運転撲滅の啓発「飲酒運転防止対策マニュアル」に従った飲酒運転ゼロへ向けた取組推進「飲酒運転防止対策マニュアル」を活用し、運転者等に対するアルコール検知器の携行、酒気帯びの有無の測定方法及び測定結果の確実な報告等について指導を徹底国交省のASV(先進安全装置)導入支援の対象にAILS(アルコールインターロックシステム)が追加された(2022年1月)ことを受け、AILSを適切に取り付けるための必要な情報提供を販売店に対し、継続的に実施
「自動車運送事業者における飲酒運転防止マニュアル」を活用した運転者に対する、自身の飲酒傾向の自覚を促す指導監督の推進飲酒運転・薬物運転の根絶を啓発するセミナー等の受講促進性能良好なアルコール検知器の導入促進事業用トラックが関係した飲酒運転事故事例の周知等による、飲酒運転根絶意識の向上
事業者の飲酒運転防止に係る優良取組事例やアルコール依存症に係る知識の周知のさらなる推進飲酒運転・薬物運転惹起事業者に対する指導内容と再発防止対策を展開特定非営利活動法人ASK等の講習会等の啓発飲酒運転根絶に向けた各都道府県トラック協会の取組事例について情報の共有化を図り、飲酒運転根絶に向けた効果的な取組を積極的に展開するとともに、ドライバー等を対象とした飲酒運転をしないことの宣言署名活動を推進
運輸安全マネジメント評価を通じて得た飲酒事案の撲滅に向けた環境整備、教育等について、モード横断的に優良取組事例を収集、周知し安全意識の向上を促進運転者に対する日常的飲酒に関する指導を徹底飲酒運転撲滅の啓発
運行管理者講習等で飲酒運転撲滅の周知・徹底

 

意識向上、周知、指導徹底、啓発、署名活動、セミナ受講促進、情報提供・・・・・。

どちらかというと、点呼実施率(数)向上施策のほうが、効果性が高いと思う。

  • 遠隔点呼・自動点呼の普及促進及び補助事業の実施
  • 運転者個々の健康状態を考慮した点呼を推進
  • 確実な点呼等により睡眠不足のチェック、過労運転の防止を促進
  • 遠隔点呼・自動点呼を活用した点呼の確実な実施の普及促進
  • 一定の条件の下、認められている遠隔点呼、自動点呼等の運行管理の高度化を促進する
  • デジタル式運行記録計等の高度化に合わせ、IT機器等を活用した運行管理の高度化を図るとともに、新たな点呼システム(自動点呼・遠隔点呼等)の普及・拡大の促進

個人的にはここの量的展開がもっとも飲酒運転防止に寄与すると見立てる。

そう

「無点呼起因飲酒事故」

がもっとも近道ではないかと思う。点呼後の飲酒を防ぐことも当然重要だが、もっと単純に、深夜早朝の実施率をあげれば自ずと減ると思う。

そう、自動点呼・遠隔点呼の普及は、無点呼起因飲酒事故を減らすのに有効だ。

アルコールインターロックの助成金枠は、自動点呼や遠隔点呼機器の予算にまわしたほうが良いとすら思う。