航空局

 

航空飲酒検査

 

航空局の飲酒規制の緩和、決着つかぬまま1年。その間にも起き続ける航空業の飲酒インシデント。義務化開始から6年たって、239件の中身はどんな内容?

2025.12.31

国土交通省航空局では半期ごとに航空輸送の安全に関する分析レポートを公表し、かつ年度ごとにも年鑑白書にまとめています。 ”航空輸送の安全にかかわる情報” というものです。
https://www.mlit.go.jp/koku/15_bf_000188.html


最新R6年度(2024年4月~2025年3月)版が12月7日に出ました。

2019年以降、航空の飲酒基準(飲酒のルール、検知器使用の義務等)が出来たことにより、お酒に関するインシデント報告も義務化され、結果、具体的な課題や改善方向性が見えやすくなっています。

P11 

  1. 航空法第 111 条の 4 の規定による報告の概況
    (1) 安全上のトラブル等の報告制度

中段以降にこのような説明があります。

さらに、航空機乗組員の不適切な飲酒に係る一連の事案の発生を受けて設置した「航空従事者の飲酒基準に関する検討会」による「中間とりまとめ」(平成30 年12 月25 日公表)及び「航空従事者の飲酒に関する基準について」(平成31 年4 月9 日公表)を踏まえて、平成31 年1 月31 日から安全上のトラブルとして報告の必要な航空機乗組員の飲酒に係る不適切事案の範囲を拡大※2するとともに、令和元年7 月5 日から新たに客室乗務員、運航前整備を行う整備従
事者、操縦士との通信を行う運航管理従事者の飲酒に係る不適切事案についても安全上の
トラブルとして報告を求めることとしました。

数ある報告事案のうち、アルコール関連の報告事案は2種類あります。

⑥ その他安全上の支障を及ぼす事態(運航規程関連)
(例) 運用許容基準の不適切な適用、運航乗務員等による飲酒に係る不適切事案
⑦ その他安全上の支障を及ぼす事態(整備規程関連)
(例) 整備実施期限の超過、整備従事者による飲酒に係る不適切事案

 

「乗組員」の態様としては、以下の註釈がなされています。

航空機乗組員が酒精飲料の影響で正常な運航ができないおそれがある状態で航空業務を行った事態は従前より安全上のトラブルとして報告が義務付けられていましたが、「航空従事者の飲酒基準に関する検討会」による「中間とりまとめ」を踏まえて、平成31 年1 月31 日から、
・航空機乗組員が酒気を帯びた状態で飛行勤務を行ったことが確認された事態
・航空機乗組員がアルコール検査を適切に行わずに飛行勤務を行った事態
・航空機乗組員が運航規程に定められている飲酒禁止期間内に飲酒を行った事態
についても報告を義務付けることとしました。

航空輸送アルコール関連 行政処分

航空の安全に関する 行政処分はこういう考えなのだという。

  1. 令和6年度に実施した行政処分等
    (1) 基本的な考え方
    航空局では国際民間航空条約第19 附属書に基づき制定した「航空安全プログラム(平成25 年10 月制定)」に従い、航空会社が規定違反等を起こした場合、不利益処分等を実施することで違反を抑止することとしていますが、航空会社のSMS 確立の支援のため、自社において原因究明と再発防止を図るなど適切に是正されている限り、不利益処分等は行わないこととしています。

    ただし、違反行為が意図的に行われた場合や違反行為を隠蔽していた場合、同様の違反が繰り返し起こっているような場合には、自社の安全管理により安全性を向上させることを期待することが困難であるため、航空法に基づく不利益処分や行政指導を航空会社に行い、輸送の安全確保に必要な体制を構築するよう指導・監督しています。

 

アルコール関連インシデントのうち、「行政処分」とされたのは3件でした。

行政処分の種類件名内容発出日
業務改善 「勧告」① オリエンタルエアブリッジに対する業務改善勧告等についてオリエンタルエアブリッジにおいて整備従事者が酒気を帯びた状態で整備し、実施した作業の一部が不適切であったこと等が確認されたことを受けて、6月28 日付で大阪航空局は同社に対し、業務改善勧告及び安全統括管理者の職務に関する警告を発出しました。令和6年6月28日大阪航空局
業務改善 「勧告」② 日本航空に対する業務改善勧告について日本航空において、運航乗務員が海外ステイ先(メルボルン)で乗務前日に過度な飲酒を行った事案(令和6年12 月1日)が発生したこと等も踏まえ、令和6年12 月27 日付で航空局は同社に対し、業務改善勧告を発出しました。令和6年12 月27日航空局
業務改善 「注意」③ Peach Aviation 株式会社に対する厳重注意について
令和7年1月7日のPeach Aviation 株式会社の旅客便に関し、機長が運航規程に定める禁酒時間に意図的に飲酒をし、機長及び副操縦士が乗務前アルコール検査を未実施のまま乗務した事案が発生したことを受け、令和7年2月14 日付で航空局は同社に対し厳重注意を発出しました。令和7年2月14 日航空局

アルコール関連インシデントのうち、「行政処分」とされたのは3件でした。

「アルコール事案」、前年比増加

飲酒関連は以下のような総括表として報告されています。「アルコール事案」という部分に注目ください。

前年24件に対して、3件増の27件でした。

この27件、運航乗務員なのか、客室乗務員なのか、整備士なのか、運航管理者なのか・・「アルコール事案」を引き起こした当事者ごとの件数が掲載されています。すべてがアルコール検査に引っかかった件数ではありません。いわゆる「パイロットの飲酒」、すべてが27件というわけではありません。「運航乗務員15件」となります。

 

航空アルコール事案、ケース分析すると・・

上記報告書の別冊として、「航空法第111条の4に基づく報告一覧」というものがあります。いろいろな安全上のトラブルが報告されている中に、アルコール事案も報告されています。社名もあります。

Fact sheet of 航空分野の飲酒インシデント

別冊のインシデント一覧から、6年分のアルコール事案をまとめてた。

今回、航空業界における飲酒がらみのインシデントは前年比増となった。

以下はアルコール検査の結果、実際酒気帯びであったことされた事案。2年連続「ゼロ」規制は成果をあげていると言えます。

ただし、「アルコールチェック漏れ」のなかに、実際酒気帯び事案となりうるケースがなかったとは言えないかもしれません。

不明が増えてきてます。年をおうごとに、「誰が」という記載のヌケが多くなています。

航空局におかれましては、別冊の方の記載に、当事者(主語)を入れていただきたい。

 報告書式、分析表現を定型にしたほうがよいと思う。

検知されるケースがなくなってきています。「漏れ」対策が課題であることがはっきりしています。

自動車運送事業の「自動点呼」にした方が、「適切な手順」になるのではなかろうか?

みなさん、如何でしたでしょうか? 

航空業界の飲酒事案。 

これ以上、手順不備、不適切事案が増えるならば、「航空インターロック」や「ロボット点呼」を航空業界にも導入すべきではなかろうか?

全237件 飲酒インシデントデータ台帳

以下、過去209件と今回28件を加えた、6年分の飲酒関連事案一覧表。
一部、独断と推測で類型化したデータもあります。参考にとどめておいて下さい。

以下、ダウンロード可。

 

(当社(東海電子)のお客様事案もございますが、公表情報ですし、編集方針なので、そのまま記載してます)

素材資料(ppt)はこちら