鉄道事業者のアルコール検査義務
鉄道事業者がすべきアルコール検査の実施規則は以下の文書で規程されている。
鉄道事業者が運転士に対して行うアルコール検査については、この「解釈基準」の文書中で、以下のように規定されている。
5 1(1)及び(3)の係員に対しては、乗務前、列車の運転中その他適当なときに運転上必要な事項について報告を求め、又は指示を与える等適切な監督ができる体制を整えておくこと。
6 第3項の知識及び技能を十分に発揮できない状態のうち、1(1)の係員(本線を支障するおそれのない側線において移動する車両を操縦する係員を除く。6において同じ。)に対する酒気を帯びた状態の確認は、次のとおりとすること。
(1) 仕業前後に対面(運行上やむを得ない場合は電話その他の方法。)により、酒気帯びの有無を確認すること。
(2) 酒気帯びの有無の確認は、目視等によるほか、アルコール検知器を用いて行うこと。ただし、仕業前の確認以降、1(1)の係員が鉄道事業者の管理の下にある場合は、仕業後のアルコール検知器を用いた検査を省略することができる。
(3) 仕業前に酒気を帯びた状態が確認された場合には、当該係員を乗務させないこと。
(4) 次に掲げる事項を記録し、かつ、その記録は、期間を定めて保存すること。
① 確認を行った者及び確認を受けた者の氏名
② 確認の日時
③ 確認の方法(対面、電話等)
④ 酒気帯びの有無(目視等での確認結果、アルコール検知器で測定した数値)
また、酒気帯びであるかどうかの基準については「動力車操縦者運転免許の取消等の基準」文書によって、以下のように規定されている。
いわゆる、「鉄道は0.09mg/」規程である。
出典
○国土交通省 令和元年10月4日 報道資料
”鉄軌道運転士の飲酒に関する基準等を改正します”
https://www.mlit.go.jp/report/press/tetsudo01_hh_000157.html
○鉄道の技術基準の整備
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr7_000036.html
上記を確認上、以下の事案を確認されたい。
アルコール検査実施義務違反
先般、関東運輸局管轄の鉄道事業者においてアルコール検査の不備が発覚した。
関東運輸局が当該事案の保安監査の結果を公表した。
管理者が職員の資質管理を行っていないことが判明
確認されたのは、以下。
① アルコール検査において、アルコールが検出しないことを確かめることなく運転士1名を乗務させていたこと。
② 実施基準及び社内規程に規定した以降も、2名を除く運転士のアルコール検査が継続的に行われていなかったこと。
また、アルコールが検知し、酒気を帯びた状態であるにも関わらず、1名が運転指令業務を行っていたことを確認した。
前述 「事業者がすべきこと」に
(4) 次に掲げる事項を記録し、かつ、その記録は、期間を定めて保存すること。
① 確認を行った者及び確認を受けた者の氏名
② 確認の日時
③ 確認の方法(対面、電話等)
④ 酒気帯びの有無(目視等での確認結果、アルコール検知器で測定した数値)
があるが、今回の保安監査結果には、アルコール検査の記録の有無や、記録の体裁、保管状態、改ざんの可能性・事実認定については触れていない。
報告に、違和感を感じる。
「行われていなかった」とは、「行われた記録がなかった」のか、「行っていないのに行われた記録が虚偽記載されていた」どちらを指すのか。口頭ヒアリングだけなのか。
貸切バスのデジタルアルコール検知結果記録義務 規制ができている以上、同じ旅客鉄道であるならば、「旅客輸送業安全規制イコールフッティング」観点で、同等の規制(解釈のさらなる細則化)をすべきではないか。
改善措置は以下となっている。
2.酒気帯びの有無の確認の実施方法等については、令和2年に実施基準及び社内規程に規定したが、酒気帯びの有無の確認を必要とする運転士に対し、酒気帯びの有無の確認を確実に実施するために必要な教育及び訓練が行われていないことを確認した。
また、運転指令や運転士を新たに業務に従事させる場合の教育及び訓練の実施記録、並びに知識及び技能を保有していることを確認した記録がなく、安全統括管理者兼運転管理者及び乗務員指導管理者(以下「管理者」という。)が職員の資質の管理が十分に行えないことを確認した。よって、教育及び訓練並びに知識及び技能の保有の確認については、管理者が適切に管理できる体制に改善すること。
今回は、保安監査の結果であり、行政処分の結果ではなく、後日、すべての事実認定が行われた上で行政処分が行われる流れであろう。
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