毎年お盆明け、8月末は、予算の季節です。各省庁の予算折衝がはじまりました。国土交通省は8月24日、来年度の概算要求を公表しました。
国交省予算を決めているのは・・・
ところで、国土交通省や経済産業省や環境省や警察庁など各省庁は、予算はつくりますが、勝手に自由にやりたいことを決めているわけではありません。
省庁予算の中身を決めているのは、元をたどればわが国の政府(内閣)です。
6月16日 閣議
8月25日公表にいたるまでの経緯は・・そう、まず政府方針が決まります。
2023年6月16日
7月25日 財務省 「8月末までに提出を」と。
閣議決定後、とりまとめ役の財務省が、各省庁に 8月期限で、と告知。
8月24日 国交省 R6予算
出ました。 来年はこんなカンジです。
今年(R5年度)の予算と比べてみると・・・。
1兆円以上も増えています。
組織別部局別にてみましょう。
文字通り国土の建設・土木関連行政は金額が大きいですね。交通系は、国土建設系比べるとさほど大きくはありません。「国土→交通 省」とは予算の大きい順の名称なのかもしれませんね。。
(注:組織別の予算テンプレが違うため、一部総括金額の考え方で計算違いがあるかもしれません。予算規模の違いがありますよ程度の参考としてください)
重点項目別 金額ランキング・・・例えば「2024年問題」にどれくらい計上されているのか?
もすこし 具体的な施策別で見てみましょう。
まずは金額別。例えば、運輸業界で日々みかける「2024年問題」。問題なのですから、解決しないといけないですね。さて、どれくらいお金をかけてどんなことをするのか・・。
盛土の安全確保対策の推進 /地域における総合的な防災・減災対策、 老朽化対策等に対する集中的支援(防災・安全交付金) | 9,943億円 |
インフラ老朽化対策等による持続可能なインフラメンテナンスの実現 | 9,074億円 |
気候変動による水害や土砂災害の激甚化に対抗する「流域治水」の加速化・強化 | 8,002億円 |
成長の基盤となる社会資本整備の総合的支援(社会資本整備総合交付金) | 6,563億円 |
豊かな暮らしを支える社会資本整備の総合的支援(社会資本整備総合交付金) | 6,563億円 |
災害時における物流・人流の確保 | 4,968億円 |
地域・拠点の連携を促す道路ネットワークの整備 | 4,499億円 |
効率的な物流ネットワークの早期整備・活用 | 4,471億円 |
通学路等の交通安全対策の推進 | 3,034億円 |
新たな国家安全保障戦略を踏まえた海上保安能力の強化等/国民保護・総合的な防衛体制の強化等に資する公共インフラ整備 | 2,739億円 |
南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策等の推進 | 2,454億円 |
地域の暮らしと産業を支える港湾整備の推進 | 1,583億円 |
ZEH・ZEB の普及や木材活用、ストックの省エネ化など住宅・建築物の省エネ対策等の強化 | 1,225億円 |
コンパクトでゆとりとにぎわいのあるまちづくりの推進 | 863億円 |
多様な世帯が安心して暮らせる住宅セーフティネット機能の強化 | 859億円 |
整備新幹線の着実な整備 | 804億円 |
国際コンテナ戦略港湾の機能強化 | 794億円 |
デジタル田園都市国家構想の実現に資する交通のリ・デザイン | 540億円 |
既存住宅流通・リフォーム市場の活性化 | 465億円 |
東日本大震災や相次ぐ大規模自然災害からの復旧・復興 | 465億円 |
国際観光旅客税を活用したより高次元な観光施策の展開 | 420億円 |
地域公共交通や観光地・宿泊施設等のバリアフリー化の推進とユニバーサルデザインのまちづくりの実現 | 333億円 |
運輸業、不動産鑑定業、造船・海運業、宿泊・観光業等における人材確保・育成 | 306億円 |
次世代モビリティの普及促進 | 269億円 |
個性ある多様な地域生活圏の形成 | 241億円 |
持続可能な観光の推進 | 236億円 |
グリーンインフラ、まちづくり GX 等のインフラ・まちづくり分野における脱炭素化の推進 | 229億円 |
i-Construction、建築・都市の DX 等の「インフラ分野の DX アクションプラン」の推進 | 222億円 |
鉄道ネットワークの充実 | 206億円 |
「2024 年問題」 担い手の確保・育成や物流の効率化等による物流の革新 | 183億円 |
地方都市のイノベーション力・大都市の国際競争力の強化 | 156億円 |
航空ネットワークの充実 | 151億円 |
運輸分野の各モードにおける総合的な安全対策の推進 | 124億円 |
カーボンニュートラルポートの形成等の港湾・海事分野における脱炭素化の推進 | 111億円 |
ビジネスでの利活用に向けた地籍整備等の推進やデータ基盤・提供環境の整備 | 111億円 |
災害対応能力の強化に向けた線状降水帯等に関する防災情報等の高度化の推進 | 100億円 |
空き家対策、所有者不明土地等対策及び適正な土地利用等の促進 | 98億円 |
密集市街地対策や住宅・建築物の耐震化の促進 | 81億円 |
経済安全保障にも資する造船・海運の国際競争力強化や海洋開発等の推進 | 78億円 |
PPP/PFIの推進 | 66億円 |
離島、奄美群島、小笠原諸島、半島、豪雪地帯等の条件不利地域の振興支援 | 56億円 |
首里城の復元に向けた取組の推進 | 47億円 |
自動車の電動化等の促進 | 38億円 |
インフラシステム海外展開の戦略的拡大 | 33億円 |
持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進や空港の再エネ拠点化等の航空分野における脱炭素化の推進 | 26億円 |
民族共生象徴空間(ウポポイ)を通じたアイヌ文化の復興・創造等の促進 | 22億円 |
DX の推進等 | 11億円 |
スマートシティの社会実装の加速 | 10億円 |
「2024 年問題」 担い手の確保・育成や生産性向上による持続可能な建設業の実現 | 7億円 |
鉄道資産を活用した再エネ導入や沿線地域と連携したグリーン電力の地産地消等の鉄道分野における脱炭素化の推進 | 6億円 |
新たな国土形成計画の推進 | 2億円 |
地方への人の流れを創出する移住等の促進 | 2億円 |
2024年問題には、183億円が計上されています。
全体からすると・・・少なっっ! と思った方は多いでしょう。
来年令和6年度予算開始日っていうのは、まさに2024年4月1日「問題が起き始める日」とされている日なのに・・。
ちなみに概算要求183億円は現時点ではこのような内容となっています。
増加率ランキング
さて、前年比増減ランキングです。「来年、倍増以上かけてやる!」と気合いの入った施策がわかります。例えば前年比2倍以上となっている施策は何でしょう? 7つあります。
重点項目別 | 前年比 |
i-Construction、建築・都市の DX 等の「インフラ分野の DX アクションプラン」の推進 | 3.11 |
鉄道資産を活用した再エネ導入や沿線地域と連携したグリーン電力の地産地消等の鉄道分野における脱炭素化の推進 | 2.81 |
PPP/PFIの推進 | 2.73 |
DX の推進等 | 2.48 |
持続可能な観光の推進 | 2.37 |
国際観光旅客税を活用したより高次元な観光施策の展開 | 2.13 |
スマートシティの社会実装の加速 | 2.07 |
カーボンニュートラルポートの形成等の港湾・海事分野における脱炭素化の推進 | 1.98 |
「2024 年問題」 担い手の確保・育成や物流の効率化等による物流の革新 | 1.71 |
既存住宅流通・リフォーム市場の活性化 | 1.50 |
「2024 年問題」 担い手の確保・育成や生産性向上による持続可能な建設業の実現 | 1.44 |
グリーンインフラ、まちづくり GX 等のインフラ・まちづくり分野における脱炭素化の推進 | 1.43 |
空き家対策、所有者不明土地等対策及び適正な土地利用等の促進 | 1.38 |
災害対応能力の強化に向けた線状降水帯等に関する防災情報等の高度化の推進 | 1.37 |
新たな国土形成計画の推進 | 1.37 |
持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進や空港の再エネ拠点化等の航空分野における脱炭素化の推進 | 1.28 |
国際コンテナ戦略港湾の機能強化 | 1.27 |
気候変動による水害や土砂災害の激甚化に対抗する「流域治水」の加速化・強化 | 1.26 |
多様な世帯が安心して暮らせる住宅セーフティネット機能の強化 | 1.26 |
ZEH・ZEB の普及や木材活用、ストックの省エネ化など住宅・建築物の省エネ対策等の強化 | 1.25 |
運輸分野の各モードにおける総合的な安全対策の推進 | 1.24 |
インフラ老朽化対策等による持続可能なインフラメンテナンスの実現 | 1.23 |
デジタル田園都市国家構想の実現に資する交通のリ・デザイン | 1.23 |
南海トラフ巨大地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震対策等の推進 | 1.22 |
通学路等の交通安全対策の推進 | 1.21 |
航空ネットワークの充実 | 1.21 |
自動車の電動化等の促進 | 1.21 |
民族共生象徴空間(ウポポイ)を通じたアイヌ文化の復興・創造等の促進 | 1.21 |
盛土の安全確保対策の推進 /地域における総合的な防災・減災対策、老朽化対策等に対する集中的支援(防災・安全交付金) [9,943 億円の内数] | 1.20 |
成長の基盤となる社会資本整備の総合的支援(社会資本整備総合交付金) | 1.20 |
豊かな暮らしを支える社会資本整備の総合的支援(社会資本整備総合交付金) | 1.20 |
効率的な物流ネットワークの早期整備・活用 | 1.20 |
地域の暮らしと産業を支える港湾整備の推進 | 1.20 |
地方都市のイノベーション力・大都市の国際競争力の強化 | 1.20 |
離島、奄美群島、小笠原諸島、半島、豪雪地帯等の条件不利地域の振興支援 | 1.20 |
インフラシステム海外展開の戦略的拡大 | 1.20 |
災害時における物流・人流の確保 | 1.19 |
地域・拠点の連携を促す道路ネットワークの整備 | 1.19 |
ビジネスでの利活用に向けた地籍整備等の推進やデータ基盤・提供環境の整備 | 1.17 |
密集市街地対策や住宅・建築物の耐震化の促進 | 1.17 |
コンパクトでゆとりとにぎわいのあるまちづくりの推進 | 1.15 |
鉄道ネットワークの充実 | 1.14 |
新たな国家安全保障戦略を踏まえた海上保安能力の強化等/国民保護・総合的な防衛体制の強化等に資する公共インフラ整備 | 1.13 |
経済安全保障にも資する造船・海運の国際競争力強化や海洋開発等の推進 | 1.05 |
個性ある多様な地域生活圏の形成 | 1.04 |
整備新幹線の着実な整備 | 1.00 |
東日本大震災や相次ぐ大規模自然災害からの復旧・復興 | |
地域公共交通や観光地・宿泊施設等のバリアフリー化の推進とユニバーサルデザインのまちづくりの実現 | |
運輸業、不動産鑑定業、造船・海運業、宿泊・観光業等における人材確保・育成 | |
次世代モビリティの普及促進 | |
首里城の復元に向けた取組の推進 | |
地方への人の流れを創出する移住等の促進 |
あれ? 2024年問題183億円は、前年比1.7程度ですね。i-constructionインフラDX関連などと比べると少ない印象です・・。問題、問題と言われてるわりには少ないのでは・・
斉藤大臣は言った。事項要求(増額)する、と。
8月25日の記者会見で、記者から2024年問題についてコメントを求められると、このように発言してます。増額の可能性を残しているようです。
「令和6年度概算要求においては、モーダルシフトの強力な促進や再配達の削減に必要な施策について事項要求等を行うこととしています」
一応、追加要求をしてゆくので、増額の可能性はあるようです。
でも、なんだか、「問題」と言われてるわりには、地味というか迫力を感じないというか・・。気のせいでしょうか。
会見で大臣が言っている、「物流革新に向けた政策パッケージ」は
のことと思われます。政策パッケージの実現にあたり何らかの予算が必要となるはず。どういう事業が行われるのか今後の増額折衝内容に注目しましょう。
自動車局(10月から 『物流・自動車局』となる)予算
国土交通省「全体」では183億は小さく見えました。が、自動車・物流行政としてはやはり2024年問題は主たるテーマであり、予算もそのように振り分けられています(実際は旧物流政策課予算と合体した結果)。以下を参照ください。
(注:GXが少ないのは環境省会計とからむものを除いたからです)
さて、各個別施策の金額ランキングです。対2024問題施策が上位にきていますね。
運行管理(点呼) 関連 予算
さて次に、「運輸安全・事故防止」をみてみましょう。どうなるのでしょうかね。いわゆる、ロボット点呼や遠隔点呼とか、です。
黄色をつけた4箇所を見てみましょう。
まず、自動車運送事業の総合安全対策事業13.2億
遠隔点呼機器、自動点呼機器への補助事業は続くようです。
次に、健康起因事故防止対策の促進2.1億
ここには、国土交通省が、プロドライバーの体調管理(静的な運転適性管理、バイタルデータによる動的な運転適性管理)の考え方や、飲酒チェックの手法を進化させようという動きが見られます。
○点呼時に運行管理者が追加確認すべき定量的健康データ(体温、血圧、心拍数の平常時との比較等)を検討
○運転者の健康管理情報(定期健康診断及び日常の健康状態に関する情報)を一元的に管理させる手法を検討
○飲酒運転による事故件数が下げ止まり状況にあることから、アルコール検知器の認定制度の導入に向けた調査
ん? もしかして、また点呼告示やアルコール検知器告示が変わるということ示唆しているのでは・・。テクノロジーの進化とともに運行管理(点呼)も進化してゆく未来像がほのかに見える気がします。
次に自動車運送事業の安全対策事業1.9億円。これは、新規施策予算のようです。
そして、点呼の高度化 施策。
予算はなんと半分に減額ですね~!
まあ、これは理解できます。これまで実証実験をやってきましたが、業務後自動点呼と点呼告示の法施行が開始されたことで、あとは実証実験なんて不要だ、ということなのでしょう。
実証から、運用へ。つまり、プラン2025の予定通り粛々と「業務前自動点呼」も速やかに施行されたり、遠隔点呼のさらなる緩和も進められ、ひいては事業者の運行管理が一元化されるナガレに変わりはないのでしょうから。運行管理高度化検討会も、そろそろ縮小の時期になってきた、ということで減額なのでしょう。今年も8月末まで一度も開催がありませんでしたからね。(本日8月29日ようやく第1回開催とのこと)。
ざっと、総括すると「GXとDXで、課題(2024問題等)を克服します」といったところでしょうか。
まだ決定ではありません。このあとの折衝により増額されたり、あるいは上記から削られるものもあるかもしれません。
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