先日、オランダで開催されたT2022という会合に行ってきました。簡単にレポートします。
薬物運転防止、飲酒運転防止のプロたち。
T2022とは、ICADTSというNPO団体が主催する、3年ごとに行われる、「飲酒運転・薬物運転」に特化した国際会議です。2022年に行われたので、T2022と名付けられています。
各国から、飲酒運転や薬物運転に関する政策担当者や研究者が集まり、研究成果や政策の効果等を発表しあいます。
道路交通法やアルコール飲料、薬物の規制は、国によって違います。さまざまな国で、飲酒運転、薬物運転防止の「Professionals」たちがいて、日々、交通事故死者を減らすためにフィールドワークをし、調査研究し、論文を書いて、政策に反映させたりしています。
けっこう歴史のある会合です。第一回目は1950年。基本、三年ごと開催です。今回のオランダ・ロッテルダムは、22回目となります。
1st – 1950 Stockholm, SWEDEN |
2nd – 1953 Toronto, CANADA |
3rd – 1962 London, ENGLAND |
4th – 1965 Bloomington, Indiana, USA |
5th – 1969 Freiburg im Breisgau, WEST GERMANY |
6th – 1974 Toronto, CANADA |
7th – 1977 Melbourne, AUSTRALIA |
8th – 1980 Stockholm, SWEDEN |
9th – 1983 San Juan, PUERTO RICO |
10th – 1986 Amsterdam, THE NETHERLANDS |
11th – 1989 Chicago, Illinois, USA |
12th – 1992 Cologne, GERMANY |
13th – 1995 Adelaide, AUSTRALIA |
14th – 1997 Annecy, FRANCE |
15th – 2000 Stockholm, SWEDEN |
16th – 2002 Montreal, CANADA |
17th – 2004 Glasgow, Scotland, UK |
18th – 2007 Seattle, USA(T2007) |
19th – 2010 Oslo, NORWAY (T2010) |
20th – 2013 Brisbane, AUSTRALIA (T2013) |
21st – 2016, Gramado, BRAZIL (T2016) |
22nd – 2019, Edmonton, CANADA (T2019) |
薬物運転研究、飲酒運転研究、どっちが多い?
プログラムは3日間分あります。同時並行もありますので、すべての発表をみられるわけではありません。
スピーカーのプロフィールも公開されています。
こんな雰囲気でして、3日間で合計140人ほどが・・・。
さて、各発表の概略情報から、今回2022年は薬物運転の研究が多かったのか、飲酒運転の研究が多かったのか、まとめてみました。
はい、ご覧のとおり、薬物摂取や、薬物運転にフォーカスした発表がかなり多いことがわかります。
飲酒運転防止の研究や政策は、アルコール規制、厳罰化、アルコールインターロック義務化等、政策テンプレはだいたい決まってきているので、新たな研究対象や新たな政策提言はほとんど出てこなくなり、薬物対策のほうが人気があるというか、トレンドなのだと思われます。
何しろ、「大麻合法化」(医療用、娯楽用)という新しい潮流がありますから、これから起きることも、未知の世界なので、研究者にとっても調べ甲斐があるのでしょう。
薬物の発表内容はこんな感じです。
Toxicological results of suspected driving under the influence of alcohol and drugs in the Netherlands. |
Alcohol and cannabis have distinct neurophysiological signatures with similar effects on driving impairment |
Blood PEth16:0/18:1, PEth16:0/20:4 and ethylglucuronide simultaneous determinations: a tool of interest for driver’s license restitution |
Towards an On-Site Mobile LC/MS Screening Laboratory for Quantitation of THC in Exhaled Breath after Marijuana Smoking |
Estimation of Delta-8 Tetrahydrocannabinol (THC) Concentrations in DUID Investigation Casework |
Capture and Analysis of Cannabinoids with an Impaction Filter Device |
Impact of Smoked Cannabis on Driving Simulator Performance: THC Content, Behavioral Tolerance, and Perception of Impairment – A Double-blind, Placebo-controlled Randomized Clinical Trial |
Separate and Combined Effects of Alcohol and Cannabis: Overview of a Randomized Clinical Trial |
Effects of Cannabidiol (CBD) and Δ9-Tetrahydrocannabinol (THC) on driving performance |
Variation in product type impacts drug effects and detection of impairment |
The Effects of Cannabis and Alcohol on Driving Performance and Driver Behaviour: A Systematic Review and Meta-Analysis |
Detectability of prescribed cannabinoid medicines in oral fluid |
The Effects of Brief Cannabis Treatments for Neurologic Conditions on Simulated Driving: Results from Two Double-blind, Placebo-controlled Randomized Clinical Trials |
Characterizing impairment and THC pharmacokinetics in blood and oral fluid following administration of oral and vaporized cannabis among infrequent cannabis users. |
A randomized placebo-controlled trial investigating the effect of high CBD and low Δ9-THC medicinal cannabis oil on driving performance. |
Do Medical and Non-Medical Cannabis Users Differ in Perceived Risk of Driving Under the Influence of Cannabis? |
Risk factors for drug driving in Iran: A narrative review |
Drug Testing and Traffic Safety in the United States: What You Need to Know |
Analytical evaluation of four oral fluid screening devices for drug detection in Brazilian traffic enforcement |
全142件一覧表はこちらをご覧ください。
薬物テスター メーカー(スポンサー) 展示
ワークショップや会議にはだいたいスポンサーがつきますよね。スポンサーは、だいたいがそのテーマに関連する機器やシステムです。薬物運転と飲酒運転がテーマですので、スポンサー展示(メーカー))は、
・薬物テスター
・アルコールテスター
・アルコールインターロック装置
こんな顔揃えになります
ビジネス的には、こういった企業群が展示ブースを設けておりました。
いずれも、アルコール検査機器、ドラッグ検査機器の類いですが、唾液、呼気等、サンプリング方式が違います。
方式でわけるとこんな感じでしょうか。
娯楽用大麻 解禁・・。大丈夫なのだろうか?
ICADTSの資料によれば
Netherland
Canada
Georgia
Malta
Mexico
South Africa
Uruguay
US( cannabis is legal in 19 states, 2 territories, and the District of Columbia.
娯楽用大麻が解禁されている国はこれだけあるようです。
こんなにあるんだ・・。知りませんでした・・。
カナダの大麻合法化、その名も ”Cannabis Act”
カナダには大麻法があります。2018年からです。ニュースでも報じられ、覚えている方もいるのではないでしょうか。
製造、販売、流通、違法行為等が包括的に法で定められています。
その他、背景、法成立経緯。
https://www.canada.ca/en/health-canada/news/2018/06/backgrounder-the-cannabis-act-the-facts.html
https://www.justice.gc.ca/eng/cj-jp/cannabis/
もちろん、大麻残留状態での運転は、薬物運転であり違法となります。
薬物テスター 認定機器
Cannabis Actには、薬物摂取しているかを検査するため(主に、検問)には、認定されたものしか使えません。
認定機器制度があります。
(a) a Dräger DrugTest® 5000 and a Dräger DrugTest® 5000 STK-CA,
(b) a SoToxa™, an Abbott SoToxa™ Test Cartridge and an Abbott SoToxa™ Oral Fluid Collection Device, when used together.
いずれも唾液方式ですね。
で、大麻合法化で、大麻運転は増えた?
こんなレポートがあります。本当だろうか・・・と疑いたくなるデータです。
大麻合法化前とあとで、なんと・・・路上の検問で大麻が検出された率が、下がっている・・!
加えて言うと、アルコール検出率も、下がっている・・・・!
どういうこと??
薬物運転の定義や検出数値が法律で定められたことで、気をつけるようになった? ??
時期的にまだ初期の調査かもしれないので、何とも言えないのかもしれないですが、驚く結果ではありませんか。
正直、理解に苦しみます。
と、こんなふうに、今後、各国からさらなる薬物運転、合法化のビフォーアフターのレポートが増えてゆくことでしょう。
はい。如何でしたでしょうか。今後、薬物運転について話題をみつけたらまたレポートしますね。