もうここ何年かの話です。新卒採用や中途採用で、比較的20代、30代の方と話すときに気づきました。飲酒運転事故史上「誰もが知っている」とされる事件(1999東名高速事故、2006福岡海の中道等)について、世代によっては知らない(リアルタイムでは)んだなと。
若い世代が知らないのは、意識が低いからではないです。伝える側なのでしょう。
関係者の時間は永遠に止まり続ける。加えて、時は残酷で、関係者(主に加害者)側も高年齢化し、メディア側も世代交代や高年齢化する。
風化とは?
本誌では、過去の事件について語りながら風化を防ぐ方法について、シリーズで考えてゆきたいと思う。
2014年7月13日 小樽ドリームビーチ
11年前の7月13日、飲酒運転により「3人死亡・1名重症」という、被害の大きさからしても、内容の非道さからしても、忘れ難い飲酒運転事故が起きました。
「小樽ドリームビーチ 飲酒運転」と検索すれば、過去の膨大なメディア記事やニュース映像が出てきます。しかし、なかには時とともに「リンク切れ」となるものがあります。「リンク切れ=風化を象徴」とも言えるのかもしれない。
国や県は、「白書」によって記憶されるべき事故をアーカイブにとどめますが、内容は数行です。そして
やがて白書からも数行すら消え、どんな事故・事件だったのか、だれも知らなくなってゆきます。
唯一アーカイブといえるのは、国の判例データベースです。

小樽ドリームビーチ事件は、最後、最高裁で棄却されたという。追えたのは、以下札幌高裁の文書でした。
飲酒運転者が、その日朝からどういう行動をしていのか? が明らかとなっており、また、突如被害にあった方が「救護されなかった」状況も明らかです。
時速約50ないし60キロメートルで走行させ,もってアルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自車を走行させたことにより,その頃,同所付近道路において,進路左前方を自車と同一方向に歩行中のA(当時30歳),B(当時29歳),C(当時29歳)及びD(当時30歳)に気付かないまま,同人らに自車左前部を衝突させ,同人らをはね飛ばして路上に転倒させ,よって,前記Aに脳幹部離断等の傷害を負わせ,即時同所において,同人を前記傷害により,前記Bに骨盤骨折兼下肢軟部組織出血等の傷害を負わせ,同日午後4時45分頃,同所において,同人を前記傷害に基づく出血性ショックにより,前記Cに頭頂部左後半打撲等の傷害を負わせ,同日午後7時50分頃,札幌市 d 区ef条gh丁目i番地所在のE病院において,同人を前記傷害に基づく外傷性脳腫脹により,それぞれ死亡させるとともに,前記Dに加療約1年間を要する右大腿骨骨幹部骨折,頸椎骨折等の傷害を負わせ
ノーブレーキだ。50,60km/hで。2人は現場で息を引き取った模様。1名は、病院で。
前記Aらに傷害を負わせる交通事故を起こし,もって自己の運転に起因して人に傷害を負わせたのに,直ちに車両の運転を停止して同人らを救護する等必要な措置を講じず,かつ,その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を,直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかった。
ひき逃げです。泥酔なので、通報なんて思い浮かぶことはなかったであろう。
どれくらい泥酔だったか?
被告人は,事故前日の正午頃に起床して夜間勤務を終えた後,睡眠をとらずに,事故当日の午前4時30分頃にビーチに到着し,その後,正午過ぎ頃までの7時間半近くもの長時間にわたって,つまみを口にすることもなく,分かっているだけでも生ビール中ジョッキ4杯,350ミリリットルの缶酎ハイ4,5缶,焼酎のお茶割り1杯といったお酒を断続的に飲み続け,遂に本人の言によっても泥酔して完全に酔い潰れてしまい,2時間程度寝込んでしまったというのである。目を覚ましてからも,シャワーを浴びた後の着替えがないという理由で,客席からも見える海の家の厨房内に下半身も露わになった全裸のままで入り,店の関係者から注意されるなど,第三者から見ても,まだ酒が残って酔っていると窺われるような行動をとっている。運転開始直前,つまり最後に酒を飲んでから4時間半程度経過した時点においても,被告人自身の感覚として,まだ二日酔いのような状態であり,体もだるく,目もしょ
ぼしょぼするなど,体に酒が残っている感覚があったというのであるから,完全に酒が抜け切ってしらふの状態に戻ったとはとても言えず,むしろ,酒の影響による体調の変化を自覚するほどの酔いが残っていたと認められる。現に,事故から44分後の段階で,被告人の体内から呼気1リットル当たり0.55ミリグラムものアルコールが検出されており,その場に居た警察官の証言等によっても,被告人の目は充血し,酒の臭いは最初からかなり強く,事情聴取中に時折うとうとしたり,事故後の逃走経路を正しく案内できなかったこともあったというのであるから,こうした点などもさきに述べた酔いの程度を裏付けている。
判決文では触れられてないが、どう見ても「常習飲酒運転者」だろう。 そしておそらく、周囲も気づいていたはずだ。有名人だったはずだ。飲酒運転の。
このような状態で,被告人は車の運転を開始し,ビーチを出て丁字路を曲がり,現場となった直線道路を走行した。
主文
被告人を懲役22年に処する
長いと感じる方はいますか? 短いと感じますか?
これでも危険運転致死傷罪が成立していなければもっともっと短かった。
東名高速飲酒事故から27年、福岡の飲酒事故から20年、ドリームビーチ事件も11年前。
22年あっという間だ。東名高速事件の加害者はとっくに出所している。
福岡の加害者もでも出所が間近、もしくはすでに出所しているという話を聞く。
ドリームビーチで飲酒ひき逃げで3人を死なせた加害者も、あと10年で出所? あっという間だ。
北海道はその後飲酒運転根絶条例をつくり、7月13日を根絶の日と定め、啓発を行っている。
それなのに、現実はひどい有様だ。
見間違いではない。
ドリームビーチの事故当日のサムネイル画像をNHKサイトから許可を得て使おうと思ったが、

こんな状況だ。
ご遺族は、話す気力を時間とともになくしてゆき、警察も、メディアも当時を知る人は減ってゆくのに?
アーカイブがない?
風化を防ぐ方法は? 風化させているのは誰なのか? われわれ自身なのか?
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