白書

 

ライドシェア

 

自家用車活用事業

 

ホワイトペーパー、交通政策。交通政策基本法に則っているはずなのにたった4行で総括される程度の審議だったら、ライドシェアはもはや「新たなIT産業」(産業政策)コンセプトでいいじゃないか、と言われても仕方がない。

2024.7.29

 

交通政策白書とは、交通政策基本法と基本計画に基づいて、年度事業(政策)総括と次年度計画をあらわすものです。

2024年6月の国会に提出された白書には、タイミングからして「自家用車活用事業」や、ライドシェアという言葉が入ってくるのは当然と私は思っておりました。

ところが・・・

 

ライドシェアは、基本的に交通政策なのか?

さて、素朴な疑問です。ライドシェアは、公共交通(文脈)なのか? です。

(目的)
第一条 この法律は、交通に関する施策について、基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより、交通安全対策基本法(昭和四十五年法律第百十号)と相まって、交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。


(交通に関する施策の推進に当たっての基本的認識)
第二条 交通に関する施策の推進は、交通が、国民の自立した日常生活及び社会生活の確保、活発な地域間交流及び国際交流並びに物資の円滑な流通を実現する機能を有するものであり、国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図るために欠くことのできないものであることに鑑み、将来にわたって、その機能が十分に発揮されることにより、国民その他の者(以下「国民等」という。)の交通に対する基本的な需要が適切に充足されることが重要であるという基本的認識の下に行われなければならない。

(交通の機能の確保及び向上)
第三条 交通に関する施策の推進は、交通が、国民の日常生活及び社会生活の基盤であること、国民の社会経済活動への積極的な参加に際して重要な役割を担っていること及び経済活動の基盤であることに鑑み、我が国における近年の急速な少子高齢化の進展、人口の減少その他の社会経済情勢の変化に対応しつつ、交通が、豊かな国民生活の実現に寄与するとともに、我が国の産業、観光等の国際競争力の強化並びに地域経済の活性化、地域社会の維持及び発展その他地域の活力の向上に寄与するものとなるよう、その機能の確保及び向上が図られることを旨として行われなければならない。

 交通の機能の確保及び向上を図るに当たっては、国土強じん化の観点を踏まえ、大規模な災害が発生した場合においても交通の機能が維持されるとともに、当該災害からの避難のための移動が円滑に行われること等を通じて、我が国の社会経済活動の持続可能性を確保することの重要性に鑑み、できる限り、当該災害による交通の機能の低下の抑制及びその迅速な回復に資するとともに、当該災害の発生時における避難のための移動に的確に対応し得るものとなるように配慮しなければならない。

交通政策基本法より冒頭抜粋
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=425AC0000000092_20201209_502AC1000000073

上記理念は、実際は5年ごとに策定される中期方針に基づいて、毎年の「予算」をもとに実現されてゆきます。が、時には、政権主導の政策(規制改革推進会議等)が、ぶっこまれることもある。

実際は、基本計画が政策の方向性をあらわしています。見てみましょう。

第二次交通政策基本計画(R3~R7)

はじめに、から抜粋。(コロナ禍、真っ最中に記載されたものである)

我が国の交通政策は、今、大きな岐路に立たされている。平成の時代までは、生産年齢人口が社会の大宗を占める中、増加する交通需要に対応するため、需給調整規制の規制緩和を進めつつ、全国一律の制度に基づき、競争を基本とした効率的な交通システムの構築を進めてきた。
その結果、大都市部など競争が成立する分野では、交通サービスが多様化し、利便性の向上が図られた一方、地方部など競争が成立しにくい分野では、人口減少等を背景として、交通サービスの維持・確保が困難となる地域が増加している。
さらに、昨今の情報通信技術の飛躍的な発展や、人々のライフスタイル・価値観の変化は、ネットワークやサービスの水平的な展開に勤しんできた交通事業にも変革を促し、同時に、行政の制度や規制のあり方が問われるようになってきていた。こうした中、新型コロナウイルス感染症が世界規模で拡大するとともに、その脅威が継続し、人々の生命や生活のみならず、経済、社会、さらには人々の行動・意識・価値観にまで多方面に甚大な影響を及ぼしている。他方、コロナ禍においても、交通事業は国民の生活に不可欠なサービスであることが再認識された。感染拡大期においては、我が国では「自粛」という形で、多くの人が外出・移動を控えたが、公共交通や物流は、人々の生活や医療活動、産業等を支えるエッセンシャルサービスとして、感染リスクを抱えながら事業を継続し、社会に多大な貢献を果たしている。
しかしながら、公共交通機関では、需要が大幅に減少し減収となる中でも運行便数を確保するという社会的な要請の中、特に中小の交通事業者を中心に、事業の継続が危ぶまれるような極めて深刻な経営悪化に陥っている。
また、今後、テレワーク等の新しい生活様式が社会に定着することで、積年の課題であった東京一極集中の是正と地方の活性化や、交通需要マネジメントによる大都市圏等での交通集中の緩和等の期待が持たれる一方で、全国の公共交通機関においては、感染拡大以前の交通需要には戻らない可能性も予見されている。
我が国の交通サービスが社会構造の大変化や大規模災害等のリスクに直面する中で持続的に運営され、強靭な形態となるためには、交通事業者はいかなる手立てを講ずるべきか、行政はどのように貢献すべきか、また利用者はどのように負担すべきか。従前より交通政策が目指してきた「あらゆる地域で、あらゆる人々が、自らの運転だけでなくニーズに対応した移動サービスを享受できる社会の実現1」という使命は、今回の新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、これまでになく重要度・緊急度が増しており、もはや逐次的・漸進的な改善では手遅れとなるおそれがある。また、我が国の交通が、社会・経済の急激な変革に対応し、供給者目線から真に利用者目線でのサービス展開に転換するためには、デジタル化や自動化、デジタル・トランスフォーメーション(DX)をはじめとしたモビリティの革新や、既存の制度・規制の見直しに大胆かつ迅速に取り組まなければならない。

うんうん。そうだそうだ。ものすごい危機感の表明ですね。

既存の制度・規制の見直しに大胆かつ迅速に取り組まなければならない。

 

そうだったはずなのだ。

 

今回白書より。

(10)利用者の多様なニーズに柔軟に応えるタクシーの実現と新型コロナウイルス感染症の感
染拡大によって顕在化したタクシー不足への対応配車アプリの導入を促進するなど事業者や利用者双方のニーズを踏まえ、より事業者が活用しやすく、利用者にとっても利便性の高いサービスの実現を目指す。

また、「自家用車活用事業」については、2024年4月以降、各地で順次開始し、自家用有償旅客
運送制度の運用改善等と合わせて、全国のタクシー不足に対応していく。これらの施策は開始して
間もなく、天候・季節波動等への対応を含め、その実施効果を現時点では評価することは適切でな
いため、今後、丁寧に、十分な時間をかけて評価・検証を行う。

大胆に迅速にのはずが・・・

今後、丁寧に、十分な時間をかけて評価・検証を行う。

2024年6月に国会に提出された白書に、自家用自動車活用事業やライドシェアのことがたったこれだけしか記載されていないということは、もはや、「公共交通・交通政策」文脈ではないということなのでは?

基本計画のP7より。ここって・・

元来、「公共」という言葉は、「社会的視点に立ち、無料もしくは十分に廉価な価格で、十分な量と質が提供されるべき財やサービス」を意味することが少なくない。その一方で、我が国では、主として民間事業者により供給される「旅客運送契約の下で運賃を支払えば誰もが利用可能な運送サービス」をもって「公共交通」と呼んでいる。地域公共交通を取り巻く状況が厳しさを増し、「公助」を求める社会
的要請が強まる中においても、「公共」の持つこの二つの意味の違いを意識した上での対応が必要である。

なんか、重要なことを言っている気がする・・。

・公共概念A)ライドシェア(道路運送法、公共交通リデザイン法、交通税的)
・公共概念B)ライドシェア新法(理念法+新たな移動サービス法、民間主導)

 

地域交通の「移動」需要を、自動車が奪っている?

公共交通がないから、自動車にお金をかけるのか。
自動車を持つから、自動車所有者を優遇する(駅前のパークライド施策等)から公共交通が細ってゆくのか? どちらの因果かはわからないが、交通事業者のフトコロは細り、自動車メーカーは収益を上げ続けてゆく。

 

 

 

タクシー業界、日車営収過去最高?  

あれ? 絶好調?

 

 来年の白書でも、営収過去最高となるかもしれないですね。

 再来年の白書でも、営収過去最高となるかもしれないですね。

 ライドシェア新法ができるまでは・・・