2024年5月6日。この日、テレビ、新聞では「トラックの事故」としてしか報道されませんでした。
事故発生当時、国土交通省のメールマガジンではこの件をこう報じていました。
(3)中型トラックの衝突事故
5月6日(月)午後4時20分頃、群馬県伊勢崎市の国道において、群馬県に営業所を置く中型トラックが片側2車線の第2車線を走行中、交差点直前において何らかの理由でハンドルを右に切り車両がバランスを崩し制御を失い、交差点先の中央分離帯に衝突し中央分離帯を乗り越え、対向車線を走行してきた乗用車に衝突した後、さらに後方の乗用車に衝突した。この事故により、最初に衝突した乗用車の乗員3名が死亡、中型トラックの運転者が重傷、後方の乗用車の乗員1名が軽傷を負った。
大きな死亡事故ではあったものの、飲酒運転によるものであったとは報道されず、おそらく翌日以降ニュース報道でこの件が取り上げられることはなかったと思う。
ところが。時をおいて8月に入り、突如として「何らかの理由」が飲酒であったことが公になった。
その後はあらためて報道が始まり、また、裁判も進んできた。
そして昨日、2年たって、事故前後の運転者の行動や当事者企業の運行管理等の実態があきらかになる報告書が国土交通省から公表されました。
冒頭要旨に。
事故後の調査で、同運転者の血中アルコール濃度が酒気帯び運転の処罰対象となる基準値を超える数値であったことが確認されている
「事故後の調査」とは「事故直後」を意味しないということなのだろうか?
飲酒運転であったことは、いつ分かったのだろうか? ここに、「空白」の3ヶ月の理由があるのだろうか。
(どなたか理由を知っているひとがいれば教えてほしいです)
同運転者は、事故当日の始業点呼時のアルコール検知器による酒気帯びの有無の確認ではアルコールは検出されておらず、点呼時に検出されないように意図して点呼後に飲酒を行ったものと推定される。さらに、同じ事業者の他の運転者と異なり、運行途中に長い休憩を取っており、この長い休憩は帰庫後にアルコールが検出されないようにするためであった可能性も考えられる。同運転者は比較的アルコールに強く運転に影響のでにくい体質であったと考えられ、飲酒運転は本事故以前から常習的に行われていた可能性が考えられる
いわゆる、「点呼後の飲酒ケース」であるとされている。
今回の報告書では、加害者本人の口述は得られていない。
「その点呼」については、実際点呼を行った(と言っている)運行管理者(会社代表)の口述がある。
こうだ。P3。
2.1.1.1 当該事業者からの情報
当該事業者の代表取締役社長であり、かつ本事故が発生した運行において始業点呼を実施した運行管理者(以下「当該運行管理者」という。)の口述並びに関係資料によると、事故に至るまでの経過は次のとおりであった。
抜粋。
(2) 事故当日の運行状況
・事故当日は 14 時 30 分頃当該営業所に出勤している。
・出勤後、14 時 52 分頃事務所内の点呼場で血圧の測定とアルコール検知器による酒気帯びの有無の確認を行い、始業点呼を受け、点呼場に掛けてある当該車両の鍵を取っている。
・アルコール検知器による酒気帯びの有無の確認の結果、アルコールは検出されていない。
・始業点呼は運行管理者である自分が対面で行った。
・15 時 28 分頃、当該車両を車両置場から当該営業所の倉庫前に移動し、約 20分間荷積みを行っている。
・荷積み後、15 時 48 分頃、物流センターに向けて当該営業所を出庫している。
・その後 16 時 15 分頃本事故が発生した
また、こういう記載もある。
2.1.2.3 事故後の確認状況
当該運行管理者の口述によると、事故後に確認された内容は以下のとおりである。
・警察の要請により事故後の当該車両の確認に同席し、当該車両の車内に残されている物品を1点ずつ取出し確認を行った結果、ゴミ袋に入った市販の弁当の蓋と一緒にコンビニエンスストアのプライベートブランド品と思われる焼酎の空容器(約 220ml・20%)が2個確認された。
・本事故後に飲酒運転であったことを知ったが、アルコール検知器での確認は毎回行っており、どこで飲んだのかも含めて全く認識していなかった。
・当該営業所に設置されたアルコール検知器について、検知器製造事業者同席の上、警察が確認を行った結果、数値の不正をすることはできないことを確認している。
報告書を何度も読み返してみた。何となく違和感があるのだ。部分部分で。
ここからあえて私見で「推測」するならば、こういう仮説はあり得ないだろうか?
仮説1)14時53分~16時15分、この間「1時間22分」のあいだに、どこかで飲酒をし(荷積みも飲酒状態で)、運転する頃には体内に血中濃度がまわり、正常な運転ではなかった。
まあ、これが報告書や警察の見解なのだろう。
仮説2)「14 時 52 分頃事務所内の点呼場で血圧の測定とアルコール検知器による酒気帯びの有無の確認を行い、始業点呼を受け、点呼場に掛けてある当該車両の鍵を取っている」
とある。この部分について、こういうことは考えられないだろうか?
「14 時 52 分頃事務所内の点呼場で血圧の測定とアルコール検知器による酒気帯びの有無の確認を行った際、対面の始業点呼はしておらず、また周囲の目が少なかったことから、風船等何らかの不正な方法で『疑似呼気』を用いてすり抜けを行い、始業点呼を受け、点呼場に掛けてある当該車両の鍵を、手渡されたのではなく自分で取って出て行った」
なぜ仮説2を言うのか? 後段に以下のような記述があるからだ。
(2) 違反行為の概要
次の 15 件の違反が認められた。
・乗務時間等告示の遵守違反(貨物自動車運送事業輸送安全規則(以下「安全規則」という。)第3条第4項)
・酒気を帯びた状態による業務(安全規則第3条第5項)
・疾病のおそれのある業務(安全規則第3条第6項)
・点呼の実施義務違反等(安全規則第7条第1項~第3項)
・業務記録の記載事項違反(安全規則第8条第1項)
・運転者台帳の記載事項違反(安全規則第9条の5第1項)
・運転者に対する指導監督違反(安全規則第 10 条第1項)
・運転者に対する酒気帯び運転の禁止等の適切な指導監督違反(安全規則第 10条第1項)
・運転者に対する最高速度違反行為の禁止等の適切な指導監督違反(安全規則第 10 条第1項)
・初任・高齢運転者に対する指導監督違反(安全規則第 10 条第2項)
・初任・高齢運転者に対する適性診断受診義務違反(安全規則第 10 条第2項)
・整備管理者の研修受講義務違反(安全規則第3条の5)
・運行管理者の講習受講義務違反(安全規則第 23 条第1項)
・事故の未報告(貨物自動車運送事業法第 24 条)
・事業計画(事業用自動車の種別ごとの数)の変更事前届出違反(貨物自動車運送事業法第9条第3項)
(1) 当該運行管理者の口述
・事故当時、当営業所では3名の運行管理者を選任していた。
・3名の運行管理者の業務割は作成していないが、統括運行管理者である自分が中心となり運行管理者不在となることがないようにしていた。
・点呼場には、血圧計とアルコール検知器があり、運転免許証を免許証リーダーに置き測定を開始すると測定結果と測定時の顔写真がパソコン上に記録される。測定終了後に対面で点呼を行っている。
・始業点呼が終わると、車両の鍵が保管されている場所から鍵を各運転者が自分で取り、車両に向かい、終業時は各自で鍵を戻す工程としている。
・始業点呼・終業点呼ともに同じ工程で実施している。
・点呼記録簿は特になく、アルコールチェックの測定記録一覧を点呼記録簿代わりにしており、拘束時間もアルコールチェックの時間で管理していた。
・手書きの出勤簿があり、始業・終業時間、拘束時間、休憩時間、労働時間、時間外労働、深夜労働の時間を各運転者が自分で記入しているが、勤務時間等の集計には使用していない。
・健康状態や疲労の確認は、話すことで大体わかるので点呼時に確認している
・点呼時に使用しているアルコール検知器は、6ヵ月又は 60,000 回測定後にメンテナンスが必要で、本事故の約2週間前にアルコール検知器製造事業者が来て実施している。
(2) 点呼記録簿等の記録状況
・点呼記録簿代わりのアルコールチェックの測定記録一覧には、ID番号、氏名、測定日時、数値(呼気中アルコール濃度)、判定、免許期限までの日数及び測定時の顔写真が記録されている。
・事故日前1ヵ月間のアルコールチェック測定結果一覧では、呼気中アルコール濃度は何れも 0.000 となっており、血圧測定結果の欄は空欄となっており記録はない。
デジタルアルコール検知器や、システムが高度化していると、あたかも「点呼記録簿」を残している気になることが多い。免許証リーダーがついていたり血圧計がついていれば、昨今の「自動点呼」的にも見えるだろう。
が、違う。あくまで アルコールチェッカーなのだ。カメラ録画も何もないデジタルアルコールチェッカーは、「悪い意味の、点呼をやったことに出来てしまう」側面(誘惑)がある。
実際、上記からすると、点呼未実施の違反認定がある。しかし、記録簿の不備も、不実記載もない。
どういう監査をしたのだろうか?
普段から点呼を実施していない率が一定数超えていたから「違反」認定を受けたはずだ。
日常的に(言い過ぎか)点呼未実施状態であったのに、なぜこの日の、この運転手の点呼についてだけは間違いなく実施した、という言い分を信じることができるのだろうか? アルコールチェックの実施記録があるから?
このタイプの機器であっても、高度化されたアルコール検知器であっても、なりすましや疑似呼気の方法なんて、年に数回報道されているのだから、ドライバーも容易に知ることができるであろう。
もう一度言う。点呼未実施の違反認定をうけた営業所で、点呼記録簿が存在しない営業所で、この日に限っては、「点呼をした」と信じる積極的な理由があるだろうか?
ましてや、点呼以外の違反オンパレードの内容・質からして、仮説2) を立てることはおかしいだろうか?
高性能なアルコール検知器が、高度なシステム機能を備えているが故に結果的に点呼記録簿をつけるという法令遵守を促さなかったとすれば、正直、責任を感じる。その意味において、この件については引き続きフォローしてゆきたい。
今後5年、10年かけて、運行管理の実態が裁判で争点になるだろうか? ならないだろうか?
文責
編集長 杉本哲也
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