国土交通白書。取り上げられていないことは、優先順位が低いか、思い切り一般化されているか、もしくは意図的に避けられている?
2025.6.28
315ページにも及ぶこの白書は、日本の交通や建設、社会インフラ等の課題を明らかにし、これらに対する対策(政策)を総括し、「国土交通省」のすべての部局の仕事の成果を明らかにしています。
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
国土交通省のチーム分けはこんなカンジです。

文字通り「国」と「土」と「交通」にかかわる仕事です。
でも、英語の省庁名「MLIT」のほうが正確かもしれませんね。
Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism
なんかカッコいいですね。
「Land」(国、土地)
「Infrastructure」(社会基盤)
「Transportation」(交通・輸送)
「Tourism」(観光)
MLITの部局・分野の英語版はこちら
https://www.mlit.go.jp/en/com/content/001887276.pdf
いわゆる「国交省」と聞くと、バス、タクシー、トラック、鉄道、航空等を思い浮かべるひとは多いと思います。そういう方は、「315ページも語ることがあるのか」と驚くかもしれません。
ですが、実際は、社会インフラ投資や、建設業、観光業にかかわる記載も多く、本誌(運輸安全Journal)で扱う、緑ナンバーの事故や点呼や飲酒運転の話はほとんど記載されていません。
そういう意味ではあまりにも総括的・網羅的であり(=うすっぺらであり)、身近感がなく、面白くはないかもしれません。しかし一方で、日本社会の課題や解決の方向性や国家戦略を客観的に、網羅的に、端的に述べており、ある意味、リアルです。
リアルだの意味は・・・記載されていないことは政策として優先順位が落ちているか、おもいきり一般化・単純化されているか、もしくは意図的に語っていないか、という意味でです。
ピックアップ ”交通分野における安全対策の強化”
運輸安全分野に該当するところ。

●運輸安全分野のうち、鉄道の安全


●運輸安全分野のうち、海上交通の安全


●運輸安全分野のうち、航空交通の安全


●運輸安全分野のうち、”運輸安全委員会”と事故調査報告書

●運輸安全分野のうち、被害者・家族支援について

●運輸安全分野のうち、道路交通における安全対策





筆者メモ。
・鉄道分野では、飲酒問題に触れていない。
・航空分野では、飲酒問題に触れている。
・船舶、海上、海事分野では、知床遊覧船事故その後に触れている。
・自動車運送事業分野(緑ナンバー)では、プラン2025に言及する部分で、飲酒運転目標ゼロ件に触れている
・が、群馬県伊勢崎の事故については触れていない。
・第11次交通安全基本計画に触れている。
・知床遊覧船事故、軽井沢事故、個別事故名がある一方、誰もが記憶に新しい「八街市の飲酒運転」は「令和元年に発生した園児等の死傷事故」という表現にしている。なぜ? → 白ナンバー(安全運転管理者制度)分野だからだろう。律儀ですねえ。
・遠隔点呼、自動運転等の安全対策は、個別・細目すぎて、白書にないのは自然当然。「人手不足対策」「デジタル化」文脈と捉えればよい。
コラムから見える、時代性と危機感。
白書では、数点、実名性のある政策実施例をコラム方式で伝えている。





国土交通省は、これらは「萌芽」である、としている。
300ページを要約するならば、白書の「はじめに」に戻ればよい。
我が国は、少子高齢化・人口減少が深刻化する中、公務サービスを含むあらゆる産業分野において、労働力の減少が懸念されている。建設業や運輸業では、今後も就業者の高齢化・若年者の入職の減少が見込まれ、中長期的な担い手の確保・育成が喫緊の課題となっている。これに、いわゆる「2024年問題」に加え、エネルギー・資材の物価高等の社会情勢の変化も相まって、生活に必要な身近なサービスの維持・存続が危ぶまれる状況である。
こうした「担い手不足等によるサービスの供給制約」に対し、国土交通分野では、労働者の処遇改善や担い手の拡大による労働環境の改善、より少ない人員でサービス供給を可能な限り維持するための新技術の利活用による省人化・省力化の推進、また、供給方法の見直し・需要者側からの協力といった取組も見られ、このような動きが今後、加速していくと考えられる。
来年、令和8年の白書はどういう内容、コラムになるだろうか?