運行管理者試験

 

運行管理者

 

運行管理者は足りていない、は本当か?

2022.7.15

さて、今週7月13日は本年度第一回運行管理者資格試験(8月~9月に実施)の締め切りでした。
みなさまの会社でも、申込みをされた方もいるのではないでしょうか。

 

合格率と合格者数

さて、前回(令和3年度2回目)の試験ですが、合格率は貨物で32%ちょい、旅客で34.5%。それぞれ、約9000人、約2000人が合格されたようです。

 

合格者、地域性はある?


事業者数見合いでしょうか。都市圏順のように見えます。

こちらは、観光事業の多い都道府県が やや上位に来ているように見えます。

 

余談。点呼に関する出題

若干余談ではありますが、ここ最近の傾向として、点呼出題がだいたい2問くらい出ています。
令和2年の出題ですが、こんな感じです。

今年の2回目(来年3月試験)あたりは、貨物も旅客も、「遠隔点呼」が出題されるかもしれませんね。

出典 公益財団法人 運行管理者試験センター

「選任運行管理者」は何人?

 

本題です。
運行管理者資格を持つひと=選任されている、わけではありません。
おそらく、何らかの事情で「ペーパー運行管理者」状態の方もいるかもしれません。


じゃあ、ペーパーではなく、きちんと運輸支局に選任届がでている運行管理者の実数はどれくらいでしょうか??

 

はい、以下をご覧ください。
全国で約20万人の選任届が出されているようです。(R2年データ)


運行管理者は、着実、毎年、増え続けております!

 

 

では、バス、タクシー、トラック、どの業種の運行管理者がいちばん多いのでしょうか?

運行管理者 不足?

事業者数からして当然ですが、ダントツ トラックですねえ。

運行管理者がふえている業種、減っている業種

それでは、各業種ごとに推移を見ていきましょう。

運行管理者 不足?
バス運行管理者

 バスは・・微増ですねえ。

運行管理者 不足?
ハイタク 運行管理者

ハイタクは落ち込みが。コロナ初期が反映されているのか・・。

 

運行管理者 不足?
トラック運行管理者

トラックは、着実に増え続けています。10年で3万人以上も!

でも、毎年、1万弱(R2例)が合格しているとすると・・。合格人数のわりには、選任数は増えていないですよね・・

出典 国土交通省 数字で見る自動車2021 運行管理者の推移より
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000069.html

運行管理者は足りている、という回答が大半

よくIT点呼や遠隔点呼の意義を話し合うときに、「運行管理者の働き方」とか「運行管理者の残業が」という話が出てきますが、実際どうなのでしょうか?

本当に運行管理者はどれくらい残業が多く、どれくらい人的に不足していて、どれくらい働き方改革が必要な状態なのでしょうか?

先般の運行管理者高度化検討会で、事業者へのウェブアンケートが公表されています。

まずは、どんな年齢層の方が多いのでしょうか? みてみましょう。

どうやら、40~60才の方が多いようですね。

 

アンケートに回答した事業者の規模も関係していると思いますが、思ったよりも業種での違いが大きい・・・。

もしかしたら、旅客事業者の回答は、コロナ禍を反映しているかもしれません。トラックについては11時間~45時間というゾーンが最も多くなっています。

運行管理者の業務は、直接的な運行管理業務と間接的な業務があります。3割~7割と幅が大きいですね。運行管理業務以外ですと、荷主対応とか社内業務・社内行事等でしょうか。

では、運行管理業務も幅広く、約25種類の業務があります。
これらのうちどの業務にもっとも時間を割いているのでしょうか?

なんと、いずれの業種も、点呼業務にもっとも時間を割いている・・と。

で、最後にこう聞かれてます、運行管理者は足りていますか? と。

出典: 令和3年度第4回「運行管理高度化検討会」(2022.3.23)運行管理高度化のニーズ調査結果について

あれ?? 

運行管理者は残業が多く(確かに少なくはないですが・・)、業務としてはもっとも点呼に時間を取られているというアンケート結果でした。

そして、最後に聞くと、「不足しているとは感じない」が7割~8割という・・・。

運行管理者は十分足りているという回答と、点呼違反が多いという監査結果の関係性は?

当サイトでは、ここ2年、すべての監査結果の内容を毎月、運行管理業務ごとに分析して掲載させていただいております。


〇北海道運輸局の監査結果
https://transport-safety.jp/archives/tag/tb_hokkaido
〇東北運輸局の監査結果
https://transport-safety.jp/archives/tag/tb_tohoku
〇関東運輸局の監査結果
https://transport-safety.jp/archives/tag/tb_kanto
〇中部運輸局の監査結果
https://transport-safety.jp/archives/tag/tb_chubu
〇北信越運輸局の監査結果
https://transport-safety.jp/archives/tag/tb_hokuriku
〇近畿運輸局の監査結果
https://transport-safety.jp/archives/tag/tb_kinki
〇中国運輸局の監査結果
https://transport-safety.jp/archives/tag/tb_chugoku
〇四国運輸局の監査結果
https://transport-safety.jp/archives/tag/tb_shikoku
〇九州運輸局の監査結果
https://transport-safety.jp/archives/tag/tb_kyushu


運行管理者が足りているということは、当然点呼実施体制が整っているからこそ言い切れると思われます。

運行管理者が足りなければ、当然点呼実績が低い(違反が多い)ということになると思われます。


以上のようなデータを見る限り、私見ですが、IT点呼や遠隔点呼は、そもそも、「路上から無点呼ドライバーをなくす」ことに第一義的に貢献すべき(できる)ものであって、業界として、未点呼運行の課題に見て見ぬふりをして、運行管理者の働き方改革があたかも遠隔点呼やIT点呼の主要な目的であるかのように語られることに違和感を感じます。

1.未点呼状態をなくす
2.そのためには運行管理者(点呼執行者)を十分確保する。
3.運行管理者を確保しずらい状況ならば、IT駆使、DXで賄う

2があいまいなまま、3がお題目となっているのではないか、というのが今回の記事の趣旨でございます。
(十分確保できていない企業がいるから、監査で点呼違反が検出される)


運行管理高度化検討会は、前提としている事実を、なにか見落としているか、意図的に避けていないだろうか?

出典 中部運輸局 行政処分結果