先日、とある企業で飲酒教育を30分ほどやってきました。
いつものように、いつもの教材で・・。
建設業界で日常的にある、労働安全衛生案件を、協力会社があつまって共有するような場です。
会社名に聞き覚えはありますでしょうか・・
すでに忘れている方もいるのかもしれません。初めて知るひともいるかもしれません。
2022年3月25日のコメントをみるとわかります。
社員が飲酒事故を起こしたら、会社は潰れる は本当か?
2021年6月28日、このようなことが起きたわけです。
被害者のご遺族からしたら、飲酒運転で子供を殺めた従業員がいた会社が普通に存続しているどころか、1年たたぬまに、ウェブサイトを刷新し、(おそらく)事故以前と変わらぬ事業を続けていることを 言葉にならぬ思いで見つめていることでしょう。
そう、いつでも、どんな事故でも、加害者や、加害企業が「即消滅」することはありません。
経営者は社員を残して夜逃げするわけにはいきません。社員も、社員であるがゆえ出勤しなければなりません。
では、どんな思いで?
自分(社員)も加害者に等しい・・と罪悪感に苛まれながら?
あるいは、
モラルのない社員個人がやったことで、会社のほうがよっぽど被害者だ、社員はとばっちりを受けている! とか?
連日のマスコミの報道の嵐のただ中で、罪悪と悔恨など、さまざまな思いの狭間で混乱し、とにかくも居心地の悪い日々を過ごしたことでしょう。あるいは会社を去ったひともいたのかもしれません(わかりません)。
刑事罰、民事、社会的制裁、有形無形の制裁を受けながらも、事業が存続している限り、加害サイドの日常はいつしか取り戻されます。
しかしながら、被害者側はあの日あの瞬間から、辛く長い非日常が始まっています。このギャップは、時を追うごとに暗黒の闇のように広がるばかりでしょう。
被害者は、取り戻すことはもはやありえない非日常が永遠に続き、加害者側はわりと早く日常を取り戻す・・。
それは、交通事故における不都合な真実とでもいいましょうか。
加害者の雇用企業は、「元従業員」として加害者との雇用関係を打ち切りながらも、刑事罰、民事、マスコミ等、責任を果たすために、潰れてはならないというのもまた重要です。当然逃げるわけにもいかず社会的制裁も受け入れることでしょう。
いや、このような事故を起こした企業は即消滅し、淘汰されるべき! 安全な企業こそが残るべき! という声もあるでしょう。
はい、正解です。そうなんです。
まさにそうしないと、「安全運転管理」や「労働安全衛生」に、人的資源をかけているまじめな企業が、馬鹿みたいですから。
正直ものがばかをみる。モラルハザードです。安全管理の世界では、これだけはあってはなりません。
労働安全衛生法におけるアルコール教育の義務化を目指して
当社(東海電子)当サイトは、ながらく飲酒運転防止、飲酒問題に対して、アルコール教育をやって参りました。
それは、企業がアルコール検知器を導入した程度では、今回のような事故は防げないことをずっとみてきたからです。
今回、当社として「飲酒教育をさせていただきたい」と申し出た理由がいくつかあります。
1.飲酒運転の統計から、千葉県では建設業従事者の飲酒運転が多いことがわかっていた
2.当該企業に、千葉県ひいては全国の建設業界(協会等)へ、労働安全衛生の会合で、
飲酒教育が必須となるよう働きかけてほしい。
3.ひいては、労働安全衛生法による飲酒教育の義務化 の端緒としたい。
4.おそらく、社員や協力会社・取引先、複数名気づいていたはず だから。
(実際、公判で検察側は、飲酒運転を懸念する同僚や取引先の関係者の証言などを基に、同被告の飲酒運転の常習性を指摘しており、被告が勤務していた運送会社の取引先関係者が「4、5年前から(被告に)会うと酒のにおいがしていた」と話していたことを明らかにしている)
二度と見落としがないように、飲酒の知識を正しく持ってほしい、当事者として広めてほしいとの思い。
5.まがりなりにも加害者企業として、再発防止として、飲酒教育をやらずに一周忌を迎えることは あってはならないのでは? という個人的な思い(まさか検知器だけが再発防止と思い込んでいないですよね、含む)。
検知器 < 飲酒知識
企業による飲酒運転防止、企業が飲酒問題をかかえる社員に気づいて対処するには、アルコール検知器だけでは不十分なんです。
最近、「アルコール検知器が品不足」と騒ぐメディアが増えていますが、それの何が問題なのか? と思います。
アルコール検知器がなくても、飲酒運転防止のさまざまな活動はできます。
そもそも、白ナンバーのアルコール検知器義務化は、6月28日の事故をきっかけに決まったことです。
でも、今般の白ナンバーアルコール検知器義務化は、冷静にみれば、安全運転管理者選任届けのない企業はアルコール検知器を使う義務はないと宣言したに等しいわけです。また、アルコール検知器を使った酒気帯び確認をしなくても、たいした罰則もありません。
つまり、安全運転管理者選任事業所33万事業所以外の、数十万以上の事業所では、アルコール検知器とは無縁の事業活動(社用車の運転含む)が続きます。
アルコール検知器義務化により、「社会に大きな手がうたれた」と思ったら大間違いです。
そう、道交法、安全運転管理者制度だけでは防げないのです。制度的欠陥です。実際防げなかったじゃあないですか八街では。
日本政府(内閣府 中央交通安全対策会議)に提案です。
1.労働安全衛生法を改正し、衛生委員設置事業所を従業員数を2名からに改正。
2.衛生委員による飲酒教育を義務づける。
3.従業員へのアルコールスクリーニングテスト(audit等)を義務付ける。
アルコール検知器使用の義務付けは、飲酒状態の把握や教育の義務化とセットではじめて功を奏すと思います。
道路交通法だと漏れてしまう事業所は、業種網羅性の高い労働安全衛生法でカバーしてほしいです。
業務中の交通災害、通勤も交通災害、労災観点と捉えることもできましょう。
ほんとうに、漏れているんです。肝心の、飲酒対策をしてほしい企業群は。
国は、気付いてますよね?
すべての事業者に、正しいアルコールの知識を。大、中、小、企業規模に関わらず、業種を問わず。
もうすぐ6月28日が訪れます。
マスコミ各位におかれては、アルコール検知器が品薄とか、そういう類いの話題ではなく、今般の道交法改正が、何がよくて、何がもれているか、しっかり調査報道をしてほしい。
そして、先週も今週も、千葉県では(それ以外の県でもですが)、飲酒運転者がまだまだいます。
2022.06.22
運輸安全Journal 編集長
杉本哲也
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