安全運転管理者選任事業所と、運行管理者選任事業所、飲酒運転防止対策(マニュアル)に違いがあるべきか?
2023.11.6
12月1日から改正道交法施行規則の適用が開始され、業務としてのアルコールチェックが義務となります。安全運転管理者選任事業所さまにおかれましては、アルコール検知器の入手についてはおそらく終わっており、もしかしたら、規定や運用の書類なんかも出来ている頃かもしれません。
え? 規定ってなに? と思われた安全運転管理者の方、安全運転管理者選任事業所の使用者の方、以下のアンケート結果(当社の過去のセミナー参加者)をご覧ください
運用をはじめるとわかってきます。アルコール検知されてしまう人が、一定数います。大切なのは、酒気を帯びて事業所に出勤(もしくは自宅から出発)する人をどうやって減らすか? です。
そのためには、検知された方への措置(懲罰や教育内容)や、教育の頻度や内容を明文化しておくことをお薦めいたします。アルコール検知器を単に使うだけではダメなんです、と言いたいのです。
包括的な、持続性のある体制について
遡ること12年前、アルコールチェックを義務づけられた先輩の業界として、トラック業界があります。このトラックの業界団体が「飲酒運転防止対策マニュアル」なるものを策定しております。
実はようく読むと、このマニュアルは、なにもトラックドライバーや貨物の運行管理者やトラック企業経営者向けに特化した内容ではないと私は考えます。同じく義務化となった安全運転管理者選任事業所や一般企業が、持続的に使えるとても汎用的かつ包括的なものであると考えております。とくに、就業規則例や、従業員や従業員の家族にも言及しているところが、とても良いと思っているんです。
このマニュアルの骨子は、以下のようになっています。
項目 | 内容 |
---|---|
飲酒運転が事業者に及ぼす影響 | 事業停止・信用失墜・経営破綻!! |
飲酒運転がドライバーに及ぼす影響 | 懲役・失業・生活破綻!! |
飲酒運転防止対策の基本 | 管理体制の強化と指導・啓発活動の推進 |
飲酒運転防止対策のすすめ方 | アルコール検知器使用の徹底 |
飲酒運転防止対策のすすめ方 | ドライバーへの啓発広報活動 |
飲酒運転防止対策のすすめ方 | 事業者の対策事例 |
飲酒運転防止対策マニュアル | 1~6 (以下に詳細を転記します) |
すべてが白ナンバー向けかというと、多少の違いはあります。
例えば、事業停止という言葉は貨物自動車運送事業法に基づく行政措置であり、一般企業には適用されません。しかし、飲酒運転事故発生時に、社会的な信用が失墜することや、道交法75条の「使用者」とみなされるのは、緑ナンバーも白ナンバーも同じです。
就業規則の変更や、労働組合との協議等、具体的なアドバイスが述べられています。アルコール検知器義務化後、トラック業界にもいろいろもめる事案があったのでしょうね・・。
この飲酒運転防止対策マニュアルの、最後のページにある1~6は、トラック協会がトラック事業者に示している運用のガイドラインです。検知器の運用のみならず、運転者(社員)の家族にも協力を依頼する等、包括的な内容となっています。
以下に抜粋します。
1. 従業員及び家族に対する積極的な指導・啓発活動の実施(事業者、運行管理者等)
(1)道路交通法、貨物自動車運送事業法等関係法令や飲酒による影響・弊害等を再確認させるための資料作成・研修等飲酒運転防止教育を積極的に行い、問題意識の共有を図るとともに従業員に必要な対策等の提言を求める。
(2)飲酒運転を根絶させるため、飲酒習慣や体質改善、勤務時間外の飲酒について事業者が手紙等で家族への協力要請を積極的に行う。
(3)労働組合、従業員との協力体制を強化する。
(4)ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)が実施する飲酒運転防止のためのプログラムを活用する等、職場内に飲酒運転防止意識を浸透させる。
2. 飲酒に関する規制の強化(事業者、運行管理者等)
(1)勤務に支障を及ぼす恐れのあるような飲酒を禁止する。
・勤務時間前は飲酒を禁止する。なお、飲酒後8時間を経過すればアルコール血中濃度が必ず平常値に戻るものではないことの指導を徹底する(年令、体質、体調、飲酒量により個人差がある)。
・勤務中(休憩、仮眠、フェリー乗船中等を含む。)における飲酒を禁止する。
(2)飲酒運転に関する懲戒処分を強化する。(社内懲戒処分規定の制定・改正等)
3. 運転者の飲酒状況等に係る実態の把握(事業者、運行管理者等)
(1)管理者による個別面談、自己申告等により個々の運転者の飲酒実態を把握する。また、健康診断結果を積極的に活用する。
(2)運転者本人の了解のもとに運転記録証明書を年1回取得し、飲酒運転の違反歴が新たに発見された運転者に対しては社内処分を行うとともに厳正な指導を行う。
(3)飲酒傾向に問題がある運転者を管理者が把握した場合、直ちに乗務停止を行うとともに専門医によるカウンセリング等適切な処理を講じる。
(内閣府のホームページから交通安全対策の飲酒運転根絶対策を参照等)
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/inshu/inshu_h20.html
4. 厳正な点呼の実施(運行管理者等)
(1)出庫時・帰庫時の点呼においては対面による点呼を確実に実施して酒気帯びの有無を報告させるとともに、アルコール検知器により測定させ、アルコール検知器の使用の有無及び酒気帯びの有無を点呼簿に記録する。また、酒気びの有無の判断は道路交通法施行令第44条の3に規定する血液中のアルコール濃度0.3mg/ℓ又は呼気中のアルコール濃度0.15mg/ℓ以上であるか否かを問わないものとする。なお、酒気帯びが確認された場合は、(5)による措置をとる。
(2)対面による点呼が出来ない場合において、点呼を行う場合は、運転者にアルコール検知器を携行させ、又は事業用自動車に設置されているアルコール検知器を使用させ、点呼時に酒気帯びの有無をアルコール検知器を用いて測定させ、その結果を電話その他の方法(通信機能を有し、又は携帯電話等通信機器と接続するアルコール検知器を用いる場合にあっては、当該測定結果を営業所に伝送させる方法)で報告させるとともに、アルコール検知器の使用の有無及び酒気滞びの有無を点呼簿に記録する。
(3)点呼内容を充実・強化する。
・点呼執行者と運転者との物理的距離(起立位置・足型表示等)の見直しを行い、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等目視でも酒気帯びの有無を確認する。
・乗務前の「飲酒の有無・量・飲酒後経過時間・睡眠状況・体調等」を運転者から自発的に報告するよう改善する。
・乗務終了後の酒気帯びの有無の確認を徹底する。
(4)点呼の執行体制を強化する。
・運行管理者と運行管理補助者との業務に見合った運行管理体制及び連携体制を確立し、厳正な点呼を実施する。
・照明等点呼執行場所の環境改善に努める。
(5)酒気帯びが確認された運転者に対しては、乗務禁止を命じる。なお、帰庫時等において酒気滞びが確認された場合は厳正な処分を行う。
5. アルコール検知器の使用の徹底等(運行管理者等)
(1)アルコール検知器を営業所ごとに設置し、必要に応じ携帯型アルコール検知器等を備え置き、又は営業所に属する事業用自動車に設置するものとする。
(2)アルコール検知器は呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度の警告音、警告灯、数値等により示す機能を有するものを備え付けるものとし、アルコールを検知して原動機が始動できないようにする機能(アルコールインターロック)を有するものを含む。
(3)アルコール検知器は、常時有効に保持(正常に作動し、故障がない状態)しなければならない。このため、アルコール検知器の製作者が定めた取扱説明書に基づき適切に使用し、管理し及び保守するとともに、次の基準により定期的に故障の有無を確認し、故障がないものを使用する。
- 毎日確認すべき事項(アルコール検知器を速転者に携行させるか、又は事業用自動車に設置されているアルコール検知器を使用させる場合は、運転者の出発前に行う。)
ア)アルコール検知器の電源が確実に入ること。
イ)アルコール検知器に損傷がないこと。
②毎日確認することが望ましく、少なくとも1週間に1回以上確認すべき事項(アルコール検知器を運転者に携行させるか、又は事業用自動車に設置されているアルコール検知器を使用させる場合は、運転者の出発前に行う。)
ア)確実に酒気を帯びていない者が当該アルコール検知器を使用した場合に、アルコールを検知しないこと。
イ)洗口液、液体歯磨き等アルコールを含有する液体又はそれをうすめたものをスプレー等により口内に噴霧した上で、当該アルコール検知器を使用した場合に、アルコールを検知すること。
(4)アルコール検知器を運転者に貸し出して個々の運転者のアルコール濃度がどの程度の時間経過により平常値に戻るかを自覚させ、アルコールによるリスクを認識させる。
6. 情報提供および理解を求めるための措置(事業者等)
各事業者ごとの飲酒運転防止対策の実施状況や飲酒運転根絶のための決意表明等を事業者の社内誌及び各都道府県トラック協会の広報誌に掲載して社内外に理解を求める。
企業向け(安全運転管理者選任事業所向け)飲酒運転防止対策規程(案)
実質、上記1~6の全パクリですが・・
・運行管理者→安全運転管理者に読み替え
・運転者→従業員 に読み替え
・飲酒実態の把握→この箇所に「アルコールスクリーニングテスト を追記
等、若干の変更を加えて 白ナンバー向けの 規程っぽいものにしてみました。
社員による飲酒運転を防止すること・抑止すること。
白ナンバーも緑ナンバーも、もはや義務化の内容はたいして違わないです。
そして「使用者と社員」という労使観点、「使用者による教育や実態把握が重要」という観点においても、同じ考え・活動になるのが自然なのではないでしょうか。
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