今年1月に公表された平成30年北海道の事故調査報告書において、以下のような表現がありました。
「慣れや過信による注意力の欠如や距離が長く単調な運転が続く道路において注意力が散漫になりがちになることを防止するための指導が徹底されていなかったことが事故発生の一因であった可能性が考えられる。」
言うは易し・・。
報告書によれば、今回の事故のドライバー本人が退職してしまったため、事故調査委員会は口述を得られなかったと記載されています。
どの程度の「注意散漫」であったのか、どの程度の「漫然運転」状態であったのか、肝心の部分はわかりません。
運行管理のあり方、取り組みの質と量、相当高度な運行管理・教育体制をもっていたと思われる事業者であってもなお起きた事故・・・その要因とは? 読み応えのある内容です。
指導及び監督の実施状況
・全社統一年間安全行動計画を策定し、4大事故(衝突事故、誤納品事故、施
設内物損事故、漏洩事故)に対する対策を実施している。
・全国統一化された安全教材を基にした「安全行動計画」という指導教育を2
ヵ月に1度実施している。
・また、机上テストを実施し、実地訓練も行い、運転者の習熟度を把握している。
・繁忙期である冬期には、4大事故防止を徹底し、対策を反復して行う「冬期
事故防止強調運動」を実施している。
・他の事業所において事故があった場合、事故情報として全国の事業所に展開
され、当該事業所としても教育にフィードバックさせている。当該事業所で毎月開催している「安全行動」の実施記録は、計画と実行記録が報告書とともに保存されていた。・当該運転者については、平成29 年7月に衝突防止の実技訓練、平成29 年10月に誤納品防止の理解度テストを受け、満点を取った指導教育記録が確認された。
実にしっかり、教育・指導・監督を実施していると思われます・・。
適性診断の活用
・新たに雇い入れた運転者、高齢運転者、事故を起こした運転者の他に全運転
者に定期的に受けさせる適性診断の年度計画を策定し、計画的に受診させて
いる。
・運行管理者は、適性診断票に基づき個別に20~30 分程度で注意点等を指導
し、会社控えを基に指導内容の記録・保存をしている。
・当該運転者が、平成24 年に受診した初任診断の診断票には、運行管理者が注意点等について指導した記録が残されており、さらに平成28 年に受診した一般診断の診断票にも指導した記録が残されていた。
しっかり運転適性管理をやっていたようです・・。
当該車両に関する分析
2.3.1.1 に示したように、当該車両には、衝突被害軽減ブレーキが装備されていなかったが、事故地点が直線路で、相手車両2台が同一車線前方にあったことなどから、同ブレーキが装備されていた場合は、相手車両を検知して作動した可能性が高いと考えられる。
当該車両に衝突被害軽減ブレーキが装備されていたと仮定すると、事故直
前の走行速度が60km/h と高いことから相手車両1への衝突は避けられないものの、事故当時の道路状態等を考慮しても、同ブレーキの作動により、車両の衝突速度は20km/h 近く低減され、相手車両1の乗員に対する被害軽減に効果があった可能性が考えられる。
よそみ運転、ノーブレーキ追突を防ぐのは、もはや、運転者のスキルではなく、車両技術であるという・・・。
確かに、自動運転の基本的な前方車両検知ができていれば、ヒトよりも確実に止まれた可能性が高いです。機械は、「単調な運転」に飽きないですから・・。
今回の内容は、運行管理体制がハイレベルであっても、路上に出たドライバーの「瞬間瞬間の集中力」に期待しなくてはいけないという意味で、今後、技術か教育か? という議論に一石を投じる内容であったかもしれません。
さてみなさん、「単調な道でも集中力を切らさない」ことを指導する具体的なツールやメソッドは 実際お持ちでしょうか?
「運転シミュレータをつかってブレーキを遅らせ、追突する」
過激なやり方かもしれませんが、お試しいただきたいことがあります。
運転シミュレーターなるものがあります。最近は、トラック車両のシミュレーション教材も出ております。
例えば、こんなトレーニングはいかがでしょうか。
・ブレーキのタイミングを、1秒づつずらす×5回
・よそ見をしながら50kmで走り、直前で前を向いて急ブレーキを踏む
・走行スピードを30km/h,40km/h,50km/h,60km/h で追突しないか試す
こういうシミュレーションを、それぞれ10回 繰り返しやってみてください。
いざ路上にでてうっかりよそ見をした瞬間、この疑似体験(よそ見運転)を、思い出すに違いありません。
少なくとも、「制動距離の計算」を座学で教えるよりはずっと「体感的」な教育になるのではないでしょうか?
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