今年1月に公表された事故調査委員会の報告書に、こんな内容がありました。
乗合バスの、運行・運転中に意識を失った死亡事故。
調査の過程で見えてきたのは、どんなに事業者が健康起因事故対策を打っていても、ドライバー本人が正確に自身の既往歴や行動を自覚し、会社に申告しておかないと、意味がないかもしれないということです。
運行管理のあり方、取り組みの質と量、それでもなお起きた事故・・その要因とは? 読み応えのある内容であります。
CPAPを1年
P27に SAS(睡眠時無呼吸症候群)について記載がありました。
・平成 29 年 11 月から、CPAPによる治療が継続して行われており、事故当日も十分な睡眠が確保され、眠気等はなかった旨当該運転者は口述している。
・また、CPAP治療については、すでに 1 年近く前から行われており、装着して眠ることに違和感はなく十分な睡眠がとれている旨も口述している。
・この他、平成 30 年 10 月、主治医による定期的な診察においても症状に変化は生じていない。
・事故発生時の運行においても、眠気は生じていなかった旨口述をしている
・事故後、SASの検査も行われているが、CPAP治療が行われている状況を踏まえ、問題はない旨の診断結果報告がなされている。
ここまでやっていても・・!
P28より。
・当該事業者における運転者に対する健康管理は、定期健康診断のほか3年毎に全運転者を対象として実施するSASの簡易検査、40 歳以上の全運転者を対象として5年度毎
に実施する脳ドックが行われている。
・これら検診・検査結果に基づき産業医や保健師による面談、本社健康管理部門及び当該営業所の衛生管理者による運転者の健康管理データの更新・共有化等、積極的な対応がなされている。
・点呼においては前述検診・検査結
果に基づく運転者個別の健康管理情報をベースに作成した健康診断要注意者一覧の活用、健康管理チェックシートによる自己診断とその報告に基づき、運行管理者のチェックが行われていた。
・なお、過去に他の営業所において発生した熱中症で運行を中断した事例を使用し、体調に異常を感じた場合の対応について強く指導を受けていた旨の当該運転者及び同僚運転者の口述からも、運転者の健康状態に起因する事故防止のための管理体制については高いレベルにあったものと考える。
・このほか、常時複数の予備運転者を配置し健康状態に不安が生じた場合においても、運転者が躊躇せず申告できる体制となっており、十分なバックアップ体制がとられていた。
・しかしながら、当該運転者は過去勤務時間外に今回の事故と同様の意識消失を複数回験していたにもかかわらず、運行管理者等への申告が行われていなかったこと、またこれを事業者も求めていなかったことから、運転者への教育において意識消失が重大な事故となることについて効果的な指導方法や理解度の確認、意識消失経験等の情報収集について一歩踏み込んだ対策を検討する必要があるものと考える。
さて、事故調査報告書はいかがでしたでしょうか。
健康起因事故に関しては、今後、異常通知のシステムや、バイタルデータ等、テクノロジーを組み合わせた施策がふえてゆくものと思われます。
以下、関連ガイドラインもあわせて参照下さい。
○自動車運送事業者における脳血管疾患対策ガイドライン
~脳健診の必要性と活用~
https://www.mlit.go.jp/common/001222860.pdf
○自動車運送事業者における心臓疾患大血管疾患対策ガイドライン
https://www.mlit.go.jp/common/001298073.pdf
○自動車運送事業者における睡眠時無呼吸症候群対策マニュアル
~SAS対策の必要性と活用~
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