航空局は、H31年にはじまった航空従事者のアルコール検査関連規則を緩和することを決めたようです。12月5日、パブリックコメントが公表されました。
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=155241243&Mode=0
趣旨としては「健康管理」(身体検査)です。これにともなって、飲酒検査を・・・
② アルコールに関する教育訓練及び健康管理の充実並びにアルコール検査関係
(1) 安全管理システムの構築に係る一般指針(平成 18 年9月 26 日国空航第 530-1 号・国
空機第 661-1 号)の一部改正
○ 安全管理規程に定める事項である「アルコールに関する教育」に関し、教育内容には、「航空医学分野の規制等に関する検討会」のとりまとめ内容を十分に反映させることを求める。
(2) 航空機乗組員の健康管理に関する基準(平成 28 年6月2日国空航第 1389 号)の一部改正
○ 事業者に対し、アルコール依存症等の乗務員を早期に特定するための対策を講じることやアルコールへの依存傾向からの回復を支援すること等を求める。
○ その他所要の改正を行う。
(3) 運航規程審査要領細則(平成 12 年1月 28 日空航第 78 号)の一部改正
○ 副操縦士及び客室乗務員の職務に、健康状態(酒気帯びの有無を含む。)を常に相互確認すること等を追加する。
○ その他所要の改正を行う。
(4) 航空機乗組員等のアルコール検査実施要領(平成 31 年1月 31 日国空航第 2282 号)の一部改正
○ 事業者における飲酒防止対策が有効に機能している場合は、業務中における乗務員間の常時相互確認を徹底することにより、一律の乗務後検査を行わなくてよいこととするが、酒気帯び等が疑われた場合には、機上においてアルコール検知器による検査の実施も含めた確認を行うこと等を求める。飲酒防止対策が有効に機能していないと認められた場合は、その状況に応じ、乗務後のアルコール検知器による検査の実施(抜き打ちによる実施を含む。)を含めた改善措置の提出・実施を求める。
○ 飛行間のアルコール検査について、飛行間の時間の長さに関わらず、事業者の管理下にあり飲酒の可能性が極めて低い場合には不要とする。
・・?
詳細は、新旧対応表をようく読まないとわかりません。
どうやらアルコール検査「前後」の「後」を、若干緩和というか、現実的な運用にするようです。
・・まあ、なんとなく理解はできます。
評価すべき点は「アルコール問題」に、もっと踏み込んだ(具体的な事例を明示した)ところかと。
3.3.5 教育及び訓練に関する事項
事業者自身の安全管理システムを社内に浸透させるための教育、安全啓発セミナー、航空機乗組員及び客室乗務員の疲労リスクの管理に係る教育(*15)、アルコールに関する教育(*16)、ヒューマンファクターズに関する訓練等を定め、これらを実施することにより、組織内の安全文化の醸成を図ること
を明らかにすること。
*15: (略)
*16: 教育内容は、次に掲げる内容を十分に反映させることとし、航空機乗組員、客室乗務員、運航管理者、運航管理担当者、運航管理補助者、整備従事者、乗務割を担当する職員の他、関連する管理部門・経営層等の飲酒対策に関連する全ての職員に対し定期的に実施すること。
①「航空従事者の飲酒に関する基準について」(平成 31 年4月9日、航空従事者の飲酒基準に関する検討会)の内容
②「航空医学分野の規制等に関する検討会とりまとめ(令和6年 11月 22 日)」の以下の内容
ⅰ)航空機乗組員及び客室乗務員の自己管理の徹底
(例)
・アルコールの基礎知識(酔いのメカニズム、アルコールが心身に及ぼす影響、飲酒の適切な量及び頻度等)
・過去の飲酒事案(経緯、原因、再発防止策等)
ⅱ)アルコール依存症 (以下「依存症」という。)の早期発見・対応
(例)
・依存症に係る知識(症状、アルコール依存への危険信号(依存症の前兆となる症状)、予防策等)
・航空機乗組員及び客室乗務員が安心して相談できる外部の相談窓口やピアサポート等の環境に係る知識
ⅲ)業務中の乗務員間での常時相互確認の徹底
(例)
・航空機乗組員及び客室乗務員同士による常時相互確認の徹底
・社会的に期待される役割、立場及び責任の重大性等を踏まえた業務中の適切な行動の徹底
今回改正の根拠、内容を上申したのは、こちらの検討会です。
「航空医学分野の規制等に関する検討会」とりまとめの公表
~操縦士の健康管理制度、アルコール検査制度等を見直します~
https://www.mlit.go.jp/report/press/kouku10_hh_000267.html
5.アルコール検査制度の合理化について
(1)アルコール検査制度の導入経緯及び現状
航空法第 70 条に基づき、操縦士、客室乗務員等については、アルコール等の影響により正常な運航ができないおそれがある間の業務は禁止されているところ、平成 30 年(2018 年)に、アルコールに係る不適切事案が相次いで発生したことを受けて、平成31 年(令和元年)※2より航空運送事業者の操縦士、客室乗務員、運航前整備を行う整備従事者、対空通信を行う運航管理従事者を対象とし、業務開始前のアルコール検査の実施が義務付けられた。
※2:操縦士は平成 31 年1月より、客室乗務員、整備従事者、運航管理従事者は令和元年 7 月より検査を義務づけ。
また特に、機上で業務を行う操縦士と客室乗務員については、乗務前の検査に加え乗務後の検査も義務付けられた。(飛行が連続する場合については、飛行間の間隔(便間)が2時間以内である場合は「一連の飛行」として扱い、飛行間の検査(便間検査)は不要。)
アルコール検査制度の導入以降、事業者におけるアルコール教育等の飲酒防止対策が充実してきた結果、現在では、乗務中の飲酒事案は過去5年間発生しておらず、乗務前のアルコール検知事案も令和 2 年以降、操縦士については発生しておらず、客室乗務員については年間0~2件程度の状況である。
(2)他の交通モードの状況
○鉄道、船舶(旅客船、貨物船等の事業)においては、業務開始前は、目視等による確認に加えてアルコール検知器による検査を行っているが、業務終了後は、原則として目視等による確認のみとなっている。
○自動車(バス、トラック、タクシー等の事業)においては、業務開始前・終了後いずれも、目視等による確認に加えてアルコール検知器による検査を行っている。
(3)課題及び対応の方向性
a)操縦士・客室乗務員に対する乗務前後のアルコール検査及び教育訓練・健康管理の充実については、以下のような意見があった。
○現在概ね5年となっている航空身体検査マニュアルの見直し間隔を3年程度に短縮する。
➢ 乗務前のアルコール検知器による検査は継続すべき。
➢ 乗務後の検査については、過去5年間、乗務中の飲酒事案はなく、事業者にお
けるアルコール教育等が徹底されていることも踏まえ、一律に実施しなくても良いが、他の交通モードでの扱いも踏まえる必要。
➢ 乗務中の飲酒防止については、航空会社におけるアルコール教育を継続的に実施し、意識啓発を図ることが必要。
1年前の記事ですが・・。
-
2024.12.18
-
2024.12.18
米国FAAの薬物・アルコール規制強化案。このタイミングこの内容、日本の国土交通省航空局のアルコール規制に影響を与えるか?
-
2024.12.16
Fact sheet of 航空業の飲酒インシデント。何がゼロ件で何がゼロ件じゃないのか? 過去5年209件の中身はどんな内容?
-
2024.12.16