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アルコール検知器を無効化する「点呼義務違反」

2020.12.2

56件(前年比増)ショック

2019年の事業用自動車の飲酒運転は、前年比増56件でした。


特に、トラック業界では2018年比で14件も増えました。アルコール検知器の義務化から10年後、このような状況になっているとは、誰が想像できたでしょう?

いったいなぜ? 

どう原因を推定したらよいでしょうか。
いくつか、仮説を立て、入手可能な情報から、検証してみたいと思います。

 

仮説1)検知器を備えていないから?

2011年以降、トラックの安全規則
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=402M50000800022

 貨物自動車運送事業者は、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であって、国土交通大臣が告示で定めるものをいう。以下同じ。)を営業所ごとに備え、常時有効に保持するとともに、前三項の規定により酒気帯びの有無について確認を行う場合には、運転者の状態を目視等で確認するほか、当該運転者の属する営業所に備えられたアルコール検知器を用いて行わなければならない。

 もし、この規則に違反し、アルコール検知器を点呼場に備えていない場合、この規則に違反となり、行政処分となります。

ちなみに、備えナシ、とは

備えなしとは、アルコール検知器が1器も備えられていない場合をいう。

とされています。

つまり、酒気帯びの運転者が出た事業者へ監査を行った場合、初違反で60日車、再違反で120日車数という行政処分が下されているハズなのです。(まさか、酒気帯びが端緒なのに、第7条 検知器の備え義務 を見落とすハズがない・・)

 

仮説2)メンテナンス(有効性保持)漏れ?

常時有効に保持す

持っている、置いてある、使っている、ではダメなんです。

事業者と運行管理者には、アルコール検知器の常時有効性保持(正常に機能するか)を設備保全する義務が課されています。

「常時有効に保持」の解釈は

<貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について P12 抜粋>

もしこの「設備保全」作業を怠っているいると

アルコール検知器の常時有効保持義務違反(注) 20日車 40日車

となります。

つまり、酒気帯びの運転者が出た事業者へ監査を行った場合、初違反で20日車、再違反で40日車数という行政処分が下されているハズなのです。(まさか、酒気帯びが端緒なのに、第7条 検知器の友情製保持義務違反 を見落とすハズがない・・)

 

検証 酒気帯び端緒の監査において、アルコール検知器義務違反の処分が科せられた件数

おなじみ、ネガティブインフォメーションですが、ここから、すべての監査の結果を知ることができます。

https://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/03punishment/cgi-bin/search.cgi

○サンプリング方法

期間:2019年1月~12月

対象:トラック事業所

条件1:トラック事業所で、監査の結果、何らかの違反が1件でもあった事業所

条件2:「酒気帯びを端緒としてXXX県公安委員会から通知があった」ケース

飲酒運転事案を端緒とした監査の詳細を分析してみました。

結果、昨年1年間に監査が行われたトラック事業所は1216(条件1)で、このうち、ドライバーの飲酒運転により公安委員会から通知を受けたことで行われたのは、10事業所(条件2)でした。

以下、10事業所で科せられた行政処分の内容と件数を、法令・規則ごとに分類してみました。名付けて、「トラック法令 違反ヒートマップ>

<トラック法令 違反ヒートマップ>

行政処分の詳細件数
乗務時間等告示の遵守違反(輸送安全規則第3条第4項)9
乗務時間等告示なお書きの遵守違反(輸送安全規則第3条第4項)2
疾病のおそれのある乗務(輸送安全規則第3条第6項)4
点呼の実施義務違反等(安全規則第7条4項アルコール検知器の備え)0
点呼の実施義務違反等(第7条4項アルコール検知器常時有効性保持)0
点呼の実施義務違反等(輸送安全規則第7条)10
点呼の記録義務違反(輸送安全規則第7条第5項)2
点呼の記録事項義務違反(輸送安全規則第7条第5項)5
点呼の記録の不実記載(輸送安全規則第7条第5項)1
乗務等の記録事項義務違反(輸送安全規則第8条第1項)6
運行記録計による記録義務違反(輸送安全規則第9条)3
運行指示書による作成義務違反(輸送安全規則第9条の3)3
事故記録の記録事項違反(輸送安全規則第9条の2第1項)1
運転者台帳の作成義務違反(輸送安全規則第9条の5第1項)2
運転者台帳の記載事項義務違反(輸送安全規則第9条の5第1項)3
運転者に対する指導監督違反等(安全規則第10条第1項)7
運転者に対する指導監督の記録義務違反(安全規則第10条第1項)1
運転者に対する指導監督の記録事項義務違反(規則第10条第1項)2
初任運転者に対する適性診断受診義務違反(安全規則第10条第2項)4
特定の運転者に対する適性診断受診義務違反(規則第10条第2項)1
特定の運転者に対する指導監督義務違反(安全規則第10条第2項)1
高齢運転者に対する指導監督違反(輸送安全規則第10条第2項)1
報告義務違反(事業報告規則第2条)2
整備管理者の研修受講義務違反(輸送安全規則第15条)1
運行管理者の講習受講義務違反(輸送安全規則第23条第1項)1
定期点検整備の実施違反(輸送安全規則第13条)1
事業計画事前届出違反(貨物自動車運送事業法第9条第3項)1
事業計画の変更認可違反(車庫)(事業法施行規則第2条第1項第4号)1
運行管理者の選任解任未届出違反(道路運送法第23条第3項)1

おわかりでしょうか? 上記からわかったこと・・

 酒気帯びドライバーが発生した事業所10カ所はすべて、アルコール検知器を備えていた。

 常時有効性保持についても違反はなかった。

と言えると思います。

アルコール検知器を全員に持たせていても、効果なアルコール検知器を点呼場に設置していても、あらゆる安全投資を「意味ないじゃん!」というように無効化してしまうのが、「点呼未実施」という事実です。

アルコール検知器は、点呼の瞬間に使うことに、意味があるわけです。


それともうひとつ、上記ヒートマップ、みなさんお気づきでしょうか?

 

酒気帯びドライバーが出た10事業所が点呼実施義務違反を科せられている率は100%(10事業所)であった。

これは、たまたまでしょうか? 


もうすこし整理してみます・・。

点呼のほかに、どんな規則違反が、酒気帯びドライバー事案を発生させた要因(間接的な)でしょうか? みてみましょう。

点呼関連18
指導監督17
乗務時間告示関連11
乗務記録9
運転者台帳5
運行指示書3
健康管理4
整備関連2
運行管理者関連1
その他6

言い方を変えると、自社の運行管理実態を法令に照らし合わせ見て、下記のようなセルフチェック結果になった場合、気をつける必要があるかもしれません。

 

みなさん、如何でしたでしょうか。

酒気帯び事故のみならず、あらゆる事故防止は、点呼実施、指導監督という地道な運行管理実務が重要だということではないでしょうか。