先日6月30日、事業用自動車の事故調査委員会の報告書が3件公表されました。
以下はそのうちの1件、大型乗合バスが運転中に、脇見運転により左方の自転車を見落とし、衝突し死亡させてしまった事故です。
概要と原因
<概要>
令和3年8月 28 日 20 時 14 分頃、北九州市小倉北区の国道3号において、大型乗合バスが乗客 23 名を乗せて片側2車線の直線道路の第一通行帯を走行中、前方を同一方向に走行していた自転車に追突した。この事故により、自転車に乗っていた女性が死亡した。
<原因>
事故は、大型乗合バスの運転者が、夜間に事故地点付近を自転車が走行していることはないと思い込んでいたことに加え、対向車線を走行してきた同社バスの行き先や誰が運転しているのかが気になり、そのバスを注視し続けたため、車両前方の状況に対する注意が不十分な状態となり、進路前方を同一方向に走行していた自転車の認知が遅れ、ハンドルを右へ切り、ブレーキをかけたが間に合わず、自転車に追突したものであると考えられる。
事業者が「交差点での右左折時には一時停止する」ことを運転者に指導・教育し、運転者自身もそう心掛けていたにもかかわらず
詳細調査・分析の結果、原因は以下にて総括されておりました。
事故Ⅰにあっては、運転者が事故地点のある交差点に進入した際、正面歩道上を横断歩道に向かって進行している被害者を認知していたにもかかわらず、被害者が横断歩道上に進入するおそれを予測できていなかったこと、また、事故Ⅱにあっては、運転者が事故地点のある交差点に進入した際、正面歩道上を横断歩道に向かって進行している被害者をそもそも認知しておらず、横断歩道上に進入するおそれを予測していなかったこと、さらに、事故Ⅰ、事故Ⅱとも、横断歩道手前において、横断歩道上を車両右側から進行してくる歩行者及び自転車(以下「歩行者等」という。)に運転者の注意が偏り、横断歩道上に車両左側から進入しようとしている被害者を認知できていなかったことが原因と考えられる。
横断歩道手前において、横断歩道上を車両右側から進行してくる歩行者等に運転者の注意が偏っていたことについては、事故Ⅰ、事故Ⅱとも、過去の運転経験の積み重ねが関係したと考えられる。
横断歩道上に車両左側から進入しようとしている被害者を認知できていなかったことについては、横断歩道上を車両右側から進行してくる歩行者等に運転者の注意が偏っていたことに加え、事故Ⅰ、事故Ⅱとも、横断歩道手前において、横断歩道上の車両左右に歩行者等がいないかの確認を確実に行うことができるよう、事業者が「交差点での右左折時には一時停止する」ことを運転者に指導・教育し、運転者自身もそう心掛けていたにもかかわらず、事故Ⅰにあっては、運転者が通行し慣れている交差点であり、その運転経験の積み重ねから、一時停止しなくても通行できる交差点であるとの思い込みが生じて一時停止することが次第におざなりになり、横断歩道上を車両右側から進行してくる歩行者より先に横断歩道を通過しようと急いだこと、事故Ⅱにあっては、一時停止操作の繰り返しからブレーキペダルの踏み方が次第に甘くなり、減速が不十分で一時停止に至っていなかったことが関係したと考えられる。
再発防止。
5.1.1 運転者教育の充実
5.2 本事案の他の事業者への水平展開
充実、情報共有は徹底的にやるとして・・・。
車両への安全装備も提示されています。
5.3 自動車単体に対する対策
・事業者は、国土交通省による事故防止対策支援事業の補助制度を積極的に活用するなどして、以下の運転支援装置を積極的に導入することが望まれる。
・前方を走行している自転車等を検知し、衝突の危険を認知した場合に警報音や表示で運転者に警告する装置または自動的に車両を停止させる装置。
・運転中の運転者の顔や視線向き等をモニタリングカメラで常時確認し、前方への注
意が不十分な状態である場合に運転者に警報する装置。
なお、自動車製作者、機器メーカー及び国土交通省等の関係者においては、事業者がこれら運転支援装置を安価に導入できるよう取り組む必要がある。
側方衝突警報装置は、バスには要らない?
自動ブレーキ的な動きはしませんが、左方にいるひとを検知し警告するような仕組みは貨物自動車で義務化されています。
すでに保安基準が定められています。
令和5年、ASV補助金
側方衝突装置は保安基準で定められたため、本年度の助成対象機器にもなっているようです。
事故件数的には圧倒的に大型トラックの交差点事故のほうが多いのですが、バスも大型であれば必要なのかもしれません。バスにも装着できそうです。すでに導入なぜ導入がまさか、音がピーピーなると乗客にはうるさいとか・・?
いずれにせよ、大型車両は死角が多く、ドライバーを支援する「もうひとつの目」は必要であると思います。