日本のバス、トラック、タクシー業界は、2011年にアルコール検知器が義務化されました。。
ところで、他の国はどうなのでしょう?
今回この記事では、台湾の交通・運輸業界において、アルコール検知器の使用が法令でどのように定められているかを調査致しましたので、結果をお知らせいたします。対象は、台湾のバス、タクシー、トラック、鉄道、航空、船舶の6業種です。
台湾では、「行政院」が国家の最高機関となっています。その下に様々な「部」(日本の省に相当)が属しています。
「交通部」
https://www.motc.gov.tw/ch/index.jsp
が全国の交通関連の行政及び事業を所管しています。
今回はこの交通部のウェブサイトを中心に関連の法令、規則を調べ、さらに交通部の所属機関等も参考にしながら調査を行いました。
1.タクシー
1)アルコール検知器の使用義務について:
職業運転手タクシードライバーに対してアルコール検知器の使用義務を明確に定めた法令・規則は見つかりませんでした。
タクシー会社のウェブサイト等も確認しましたが、勤務時のアルコール検査や、アルコール検知器の使用に 関する規定等は見当たりませんでした。ただし、台湾のある情報サービスのサイトでアルコール検知器を紹介する記事があり、そこにはタクシー会社の営業所によく設置されているという記述があることから、会社ごとに勤務時のアルコール検査の規定があるのではないかと思われます。
2)一般的な道路交通法の飲酒規制
『道路交通安全規則』 第114条第2項
https://motclaw.motc.gov.tw/webMotcLaw2018/Law/ArticleContent?type=–1&LawID=E0055118
日本語訳;
自動車運転手は、下記のいずれかに該当する場合、運転をしてはならない。一、連続運転時間が8時間を超えた場合。
二、アルコール類またはその他の類似物を摂取後、呼気中アルコール濃度
が 0.15mg/L、または血中アルコール濃度が0.03%に達した場合。三、薬物、幻覚剤、麻酔薬またはその他の類似の規制薬物を使用した場
合。四、罹病により安全運転に影響を及ぼす場合。
五、タクシーの運転手が警察機関から事業登録証を取得していない、また
は 既に取得したが、規定にしたがって車内の指定場所に事業登録証
を掲示していない場合。
2.バス(路線バス、観光バス、高速バス)
1)バスドライバーのアルコール検知器の使用義務について
バス運転手の勤務前のアルコール検査が規則で定められています
『汽車運輸業管理規則』(自動車運輸業管理規則)
https://motclaw.motc.gov.tw/webMotcLaw2018/Law/ArticleContent?type=-1&LawID=E0046091
■第19条
日本語訳:
バス業者は、運転手がバスの運転を行う前に、運転手に対してアルコール濃度検査を行うものとし、検査に不合格の場合は当該の運転手の運転 を禁止するものとする。観光バスの運転手に対しては、借主または旅行業者によりアルコール濃度検査を実施することができ、検査に不合格の場合は、同様に当該の運転手の運転を禁止する。
■第19条の3
日本語訳:
公路自動車旅客運輸業※1、及び市区自動車旅客運輸業※2が配車をする時は、走行証を正確に記入して携帯するものとする。
市区旅客運輸バスは、公路監督官庁の同意を経た場合、走行証をターミナルにて保管することができる。
走行証の記載事項は、少なくとも、車両番号、路線番号、路線名、運行日、起点停留所からの発車時間、休憩開始・終了時間、終点停留所への到着時間、及び運転手氏名、体温、アルコール濃度検査記録を含むものとし、少なくとも2年間保存し、公路監督官庁の検査に備える。
※1、※2:交通部公路局の説明によると、「公路自動車旅客運輸業」とは、 決められた路線を走り、市や県をまたぐ長距離で旅客を輸送するバス業者を指し、日本の高速バスや長距離バスに相当します。
また「市区自動車旅客運輸業」とは、決められた区域内(主に市内)の決められた路線 で旅客を輸送するバス業者を指し、日本の路線バスに相当します。
3.トラック
1)トラックドライバーへのアルコール検知器の使用義務について
トラックドライバーへのアルコール検知器の使用を明確に定めた法令・規則はありませんでしたが、自社のウェブサイトで「アルコール検知器により運転手の勤務前のアルコール検査を行っている」と書いている企業もあり、会社ごとにルールを定めているようです。
また、各市・県の監理所(道路監理機関、運転免許センター)が運送業者やバス業者に対して安全監査を行っているようです。
その監査表には「運転手のアルコール検査管理」という項目があり、認定を受けたアルコール検知器を備えているか、運転手の勤務前にアルコール検査を行って記録を保存しているか、という評価項目があります。
※別途こちら「自動車貨物輸送業安全管理自主検査表」をご参照ください。
2)一般的な道路交通法の飲酒規制
タクシーの(2)をご参照ください。
4.鉄道(在来線、高速鉄道、MRT)
1)鉄道運転士へのアルコール検知器の使用義務について
鉄道運転士・操縦士の勤務前のアルコール検査が規則で定められています。
■『鐵路行車規則』(鉄道運行規則)第3-3条
https://motclaw.motc.gov.tw/webMotcLaw2018/Law/ArticleContent?type=-1&LawID=D0006010
日本語訳:
鉄道機関は、運転手がその勤務を行う前に、アルコール濃度測定を行うとと もに、当直員が記録を作成し、監督官庁の監査用に保管するものとする。
前記アルコール濃度検査の結果、運転手の呼気中アルコール濃度が0mg/Lを超えた場合、鉄道機関はその運転手の当日の勤務を停止させるものとする。
※MRTに関しては、『大衆捷運法』(MRT法)がありますが、この法規にはアルコール検査についての規定はありませんでした。
5.航空
1)航空事業者・パイロットへのアルコール検知器の使用義務について
航空事業者や操縦士へのアルコール検査については、規則で定められています。
しかし、下記の『航空器飛航作業管理規則』第199条で示されるように、現行の規則では「抜き取り検査」になっています。
ただし、2017年4月の新聞記事によりますと、当時、台湾の航空会社のパイロットがアルコール検査で基準超えとなった事例が続いたため、交通部民用航空局が国内の各航空会社に対し、同年6月より全てのパイロットを対象としてアルコール検査を行うよう要求したとの報道がありました。しかし、これはパイロットのみであり、その他の乗務員等に対して各社でどのように規定しているのかについては、情報を得られませんでした。
■『航空器飛航作業管理規則』(航空機航行作業管理規則)第199条
https://motclaw.motc.gov.tw/webMotcLaw2018/Law/ArticleContent?type=-1&LawID=J0046015
日本語訳:
航空機の使用者(定義:航空機を利用して飛行作業に従事する自然人、法人 または政府機関を指す)は、その飛行乗務員、客室乗務員、ディスパッチャー、及びメンテナンス員等の飛行作業員が、勤務時に麻酔薬またはアル コールの作用により、飛行の安全に影響を及ぼさないことを確保するものとし、関連の麻酔薬及びアルコール検査規定を定めるとともに、抜き取 り検査を行い、検査記録を後日の調査のために保存するものとする。
民用航空局は、定期的または不定期に、前記の飛行作業員に対して、麻酔薬 及びアルコール検査を実施することができる。
麻酔薬及びアルコール検査基準は以下の通りとする。
一、麻酔薬の検査:尿検査が陰性であること。
二、アルコール濃度検査:血中アルコール濃度が0.02%を超えてはならず、 または呼気中アルコール濃度が0.1mg/Lを超えてはならない。
前記の検査が不合格である、または呼気中アルコール濃度が基準を超えて いなくても0mg/Lを超えた場合は、飛行作業に従事してはならず、検査を 拒否した場合も同様とする。
第二項の麻酔薬及びアルコールの検査は、民用航空局が航空経営者に委託して実施することができる。民用航空局は、前記の規定に基づいて検査を委託する場合、委託の対象、事項、及び法律・規則の根拠について公示し、官報に掲載するものとする。
6.船舶、海運
船舶
1)船舶・海運関連のアルコール検知器の使用義務について
船舶・海運業界に関して、アルコール検知器の使用に関して明確に定めた法令・規則はありませんでした。
交通部航港局のウェブサイトを参考にし、『船員法』など、関連があると思われる法規を全て調べましたが、いずれもアルコール検査についての規定はありませんでした。
また、航港局のウェブサイトを調べましたところ、Q&Aのページで、「客船の船員が、船の操縦時にアルコールを摂取した、またはアルコール摂取後に船を操縦した場合、船員法またはその他の法規において処罰の規定があるか?」という質問に対し、航港局からは『中華民国刑法』の定めにしたがって処罰されると回答されていました。
詳細は下記の日本語訳をご参照ください。
これ以外に、例えば勤務前のアルコール検査など、統一された規定があるのか、あるいは各社でどのような規定を設けているかなどは、情報を得ることができませんでした。
■『中華民国刑法』第185-3条
https://law.moj.gov.tw/LawClass/LawAll.aspx?PCode=C0000001
日本語訳:
動力交通機関を運転し、下記のいずれかに該当する場合は、2年以下の有期 懲役に処し、合わせて20万元以下の罰金を科すことができる。
一、
呼気中アルコール濃度が0.25mg/L、または血中アルコール濃度が0.05% に達した場合。二、
前項以外のその他の状況により、アルコール類またはその他の類似の物 を摂取したことが十分に認められ、安全運転ができない場合。三、
薬物、麻酔薬またはその他の類似の物を摂取し、安全運転ができない場 合。
いかがでしたでしょうか?
以上、当社の調査内容をまとめますと、バス、鉄道、飛行機の3種類の業種で、「勤務前のアルコール検査」について法規による明確な規定がありました。タクシー、トラック、船舶については、道路交通規則や刑法において呼気中アルコール濃度または血中アルコール濃度の基準値が定められているものの、各業種に対応した法規による規定はなく、各企業が独自にルールを設けているのではないかと思われます。
台湾における当社の総代理店がこちらになります。
http://www.tco.com.tw/default.htm
路線バス事業者に多数実績があり、ALC-PROⅡの設置、データベースの集約等、ソリューション提供および、保守メンテナンスも行っています。
台湾に関連会社を持つお客様におかれましては、グローバル方針の策定の際や、日本と同様のアルコール検知システムを現地法人に展開する際は、是非「グルーぜひご一報ください。
<ヘッドラインおよび記事中の写真は本文と直接関係ありません>
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