高速乗合バスの管理の受委託について
高速バス業界の運行管理では従来から「共同運行」という事業形態がありました。
共同運行に関係する事業者が、安心して運行管理や整備管業務を任せる(任せ合う)ためのルールがこの”高速乗合バスの管理の受委託について”という通達(国自安第55号、国自旅第236号、国自整第78号)です。
この通達のうち、一部が改正されるようで、パブリックコメントの募集が始まっております。
パブリックコメント 改正の背景
コレです。
高速乗合バスにおいては、高速バス事業者が、道路運送法第35条に基づく国土交通大臣の許可を受け、運行の一部を他の乗合バス事業者又は貸切バス事業者(受託者)に委託することを可能(高速乗合バスの管理の受委託)としており、多くの高速バス事業者において、当該制度を活用し、繁忙期において一部の臨時便や続行便を受託者に委託等の対応を行うことにより、高速バスの輸送力の確保を図っている。また、当該制度においては、委託の範囲を実働車両数の比率で年間原則1/2以内及び1日当たりで2/3以内とすることや、受託者を貸切バス事業者とする場合については、委託期間を1年間(※)とする等の許可基準が設けられているところ。
今後、新型コロナウィルス感染症の収束等により、高速乗合バスの需要が高まる中で、当該制度を活用するケースが多くなることが想定されており、高速乗合バス事業者が運送需要に対して十分な輸送力の確保を図ること、また、長期的かつ安定した委託運行が可能となるよう、以下の通り所要の見直しを行う。
※ 乗合バス事業者を受託者とする場合、委託期間は原則5年間。
さて、何がどう変わるのでしょうか。
管理の受委託とは、運行「管理」業務と整備「管理」業務のアウトソースのこと。
本通達によれば、もともと、管理の受委託は以下のように定義されています。
3.受委託内容
(1)受委託する業務には、運転業務、運行管理業務及び整備管理業務が含まれており、これらが一体的に受委託されるものであること。
(2)受委託する業務のうち、運行管理業務及び整備管理業務については、運行管理者(一般旅客自動車運送事業運行管理者資格者証又は一般乗合旅客自動車運送事業運行管理者資格者証を有する者に限る。)及び整備管理者の選任並びに運行管理規程等の制定をも含めて受委託するものであること。
なお、これに伴い必要となる関係官庁への届出等は、委託者が行うこと。
(3)受託者が委託に係る一般乗合旅客自動車運送事業のために使用する事業用自動車その他の諸施設は、委託者が自ら行う事業の用に供する施設と明確に区分されていること。
(4)受託者は、委託を受けた一般乗合旅客自動車運送事業の管理の再委託をしてはならないこと。
(5)委託者は、受託者が保有する事業用自動車をその運行の用に供するものにおいては、管理の受委託に基づき受託者が行った委託に係る運行で交通事故が発生した場合の被害者等に対する不法行為による損害賠償責任につ
いては、受託者と連帯して責任を負う旨を管理の受委託契約で規定するものであること。
今回この「高速乗合バスの管理の受委託について」(平成24年7月31日付け国自安第55号・国自旅第236号・国自整第78号)について改正を行うとのことですが、具体的にどういう改正なのでしょか。。
何が、改正? その1 「委託範囲」
① 「委託の範囲」基準において、「1日当たり」に関する規定を削除。
【現行】
『委託者の高速乗合バス系統全体の実働車両数に対する、高速乗合バス系統の委託に係る実働車両数(注1)の比率(委託比率)が、年間(注2)で原則1/2以内かつ1日当たりで2/3以内であること』
【↓ 以下のようになるようです ↓】
『委託者の高速乗合バス系統全体の実働車両数に対する、高速乗合バス系統の委託に係る実働車両数(注1)の比率(委託比率)が、年間(注2)で原則1/2以内かつ1日当たりで2/3以内であること。』
なるほど、緩和ですね。
何が、改正? その2 「期間」
【現行】
『8.管理の受委託の期間
(1)管理の受委託の期間は原則として5年間(ただし、貸切バス委託型管理の受委託にあっては1年間。)とする。』
↓ 以下のようになるようです ↓
『② 貸切バス事業者を受託者となる場合において、新規に許可する場合を除き、委託期間を「原則5年間」とする。』
貸切バス事業者は、基本的に委託5年間OK。ただし、新規事業者は除く、と。
何が、改正? その3 「国への報告」
【現行】
『4.法令遵守状況等の確認等
(1)委託者は、一般乗合旅客自動車運送事業者が遵守するべき事項であって、一般貸切旅客自動車運送事業者が遵守するべき事項とは異なるものについて、受託者に対し、当該事項を遵守するための指示を行い、その結果を確認しなければならないこと。
(2)委託者が受託者の法令遵守状況や交通事故の発生状況を定期的(1年目は少なくとも6か月毎、2年目以降は少なくとも1年毎)に受託営業所への訪問調査により確認しなければならず、受託者もこれに応じなければならないこと。また、委託者は訪問調査の結果を記録し、訪問調査の日から3年間保存しなければならないこと。
(3)委託を受けた一般乗合旅客自動車運送事業の管理に関し、受託者が道路運送法その他関係法令に違反する行為を行っていることを委託者が把握した場合は、次のような措置を講じなければならないこと。
① 委託者は、受託者に対し直ちに必要な是正措置を講じるよう要求しなければならないこと。
② 受託者は、委託者からの是正措置の要求があった場合には、直ちにこれに応じなければならないこと。
③ 受託者が是正措置の要求に適切に応じない場合、委託者は受託者との管理の受委託契約を解除できること。』
↓ 以下のようになるようです ↓
<以下追加>
『 貸切バス事業者を受託者となる場合において、委託者が行う受託者の法令順守状況等の確認結果について、毎年、国に報告すること』
パブコメの期限は7月25日迄。高速乗合、貸切バスの事業者様、オヤ? と思う点があればどうぞ意見提出を。
最近は、しっかりと根拠のある意見を出せば、反映されるケースもみれらます。
トラックの「共同点呼」(点呼の受委託)について
さて、今般、道路運送法35条ですが、トラックにも、似たような条項があります。
道路運送法 | 貨物自動車運送事業法 |
(事業の管理の受委託) 第三十五条 一般旅客自動車運送事業の管理の委託及び受託については、国土交通大臣の許可を受けなければならない。 2 国土交通大臣は、前項の許可をしようとするときは、受託者が当該事業を管理するのに適している者であるかどうかを審査して、これをしなければならない。 | (輸送の安全に関する業務の管理の受委託) 第二十九条 事業用自動車の運行の管理その他国土交通省令で定める一般貨物自動車運送事業に係る輸送の安全に関する業務の管理の委託及び受託については、国土交通大臣の許可を受けなければならない。 2 国土交通大臣は、受託者が当該業務の管理を行うのに適している者でないと認める場合を除き、前項の許可をしなければならない。 |
共同点呼 管理の実施方法の細目
共同点呼 自己点検表
トラックで実現している共同点呼(受委託点呼)の制度化は、貨物自動車運送事業法第29条を準用しています。
今般の35条の適用範囲を広げる県は良いことだと思います。実情にあわせて、通達レベルならば時代にあわせてどんどん変えてゆけばいいと思います。
今回の件とは別の趣旨ですが、旅客事業者にも、トラックと同じく「共同点呼」を実施できるようにすべきではないでしょうか。
トラックの共同点呼(受委託点呼)について
トラック運送事業において受委託点呼(共同点呼)を導入します!
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000059.html
受委託点呼(共同点呼)のモデル契約書等の公表についてhttps://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000062.html
遠隔点呼と自動点呼を進めるのはよいのですが、レガシーな制度と今後の制度の住み分けが正しく行われるためには、トラックと同様の「バス、タクシーにおける共同点呼(受委託点呼)」は避けて通れないのではないでしょうか?
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