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空白地有償運送

 

過疎化

 

大江地域交通(京都府)空白地有償運送事業「鬼タク」

2021.8.26

空白地有償運送事業「鬼タク」開始

京都府福知山市の大江地域では、
2021年7月1日より京都府初の「事業者協力型自家用車有償旅客運送制度」を利用した
「自家用旅客有償運送」が実施されています。

https://www.city.fukuchiyama.lg.jp/soshiki/30/36496.html

「鬼タク」では、運用前の6月末時点で60名を超える会員登録があったとのこと。
地域住民からは必要な交通手段の1つとして開始前から期待されているようでした。

自家用有償旅客運送とは

交通空白地有償運送は自家用有償旅客運送の1つですが、
そもそも自家用有償旅客運送とは、どのような制度かご存知でしょうか。

自家用有償旅客運送とは、
【バス・タクシー事業が成り立たない場合】、
【地域における輸送手段の確保が必要な場合】に
【市町村やNPO法人等】が
【自家用車を用いて】提供する運送サービスのことです。


自家用有償旅客運送は大きく2種類に分けられます。
今回の事例が該当する、
バス・タクシー事業者のサービス提供が困難な地域において、住民等が外出するための移動手段の確保のための「交通空白地有償運送」の他に
「単独でタクシー等の公共交通機関を利用できない身体障害者等」が外出するための移動手段の確保のための「福祉有償運送」があります。

法改正による拡張

道路運送法の改正により令和2年11月から、運行管理や車両の整備管理について
一般旅客自動車運送事業者(バス・タクシー事業者)が協力する「事業者協力型自家用有償旅客運送制度」が創設されました。

プロのノウハウをもつバス・タクシー事業者の協力を得て自家用有償旅客運送を導入することで、
持続可能な移動手段確保、輸送の安全を確保が期待されています。

「鬼タク」は、有限会社慶和(「ふく福タクシー」)が運行管理、受付・配車、車両整備管理などを業務委託されています。


また地域住民に限定されていた旅客の対象が、地域外からの来訪者にも拡大され、観光目的の利用もできるようになりました。

これにより生活交通も含め、地域交通の持続可能性が高まること、
地域の観光資源の活用を図ることができると見込まれてます。

交通空白地と過疎地域

交通空白地有償運送の導入には、「交通空白地」であることが前提にあります。
具体的には駅やバス停が一定の距離の範囲内にない地域のことを指しますが、「一定の距離」については定まったものがありません。

地形の高低差や住民の高齢化など、さまざまな条件を考慮して計画の策定が進められますが、
国土交通省
過疎地域における地域公共交通の現状と課題
(https://www.soumu.go.jp/main_content/000569916.pdf)

にも
自家用有償旅客運送が取り上げられているように、
過疎地域と密接な関係があるといえます。


過疎地域の特徴のひとつに、1人あたりの人口に対し、広い面積であることが挙げられます。

令和元年度 過疎対策の現況(概要版) 1ページ

したがって広い地域全体を網羅できるよう公共交通機関の整備をしても利用者が少なく、
持続可能な交通手段のとして維持することが難しいといえます。

「自らの自家用車を交通手段とする」という方法も考えられますが、
住民の高齢化が進んでいる状況からみても、新たに運転免許を取得し交通手段を確保することは有効な手段といえません。

令和元年度 過疎対策の現況(概要版) 3ページ


平成27年の国勢調査の時点から考えると、65歳以上の割合が40%を超えていても不思議ではない状況です。

免許を返納できないドライバー

高齢化が進み、高齢ドライバーの事故が社会問題となる中、
「高齢者運転免許自主返納支援制度」というものが進められています。
しかし下のグラフかから読み取れるように、高齢化が進んでいる地域では免許の返納数が少ないことがわかります。

人口差はあるにしろ、過疎化が進んでいる地域はそうでない地域に比べて返納したくてもできない理由の1つに交通手段の維持考られます。

交通手段がその他に確保できない場合、不安を抱えながらやむを得ず運転しているドライバーもいるのではないでしょうか。

参考
自主返納件数と運転経歴証明書交付件数の都道府県別・月別の推移について
高齢化の状況及び高齢社会対策の実施の状況に関する年次報告


今できる持続的交通手段の確保

自動運転が近い未来に実現したとしても、過疎地域に届くのは本格的な導入がはじまって何年後になるのでしょうか。

過疎化、高齢化が進む地域において、
住民の足として現実的に利用可能かつ、持続可能な交通手段を考えたとき
この「空白地有償運送」は最も有効な手段だと考えます。

しかし導入がゴールではありません。
「事業者協力型自家用有償旅客運送制度」を活用し
有償旅客運送を実施するドライバーへの安全教育を徹底することや今後のドライバーの確保、運営資金をどう継続的に維持するのか等、
導入後も検討していく必要項目もありますが
地域密着型の制度だからこそ柔軟に対応できるものであってほしいと思います。



<写真と記事本文は直接関係ありません>