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大型トラック事故多発、2年前の事故の調査報告書と今月の事故

2021.5.31

 

先週、2件、大きな事故が報道されました。

名神 トラック追突事故 居眠りの可能性高い 不適切管理指摘
2021年05月28日14時02分

  

新名神高速のトンネルで追突事故 軽乗用車の男性2人死亡 滋賀
2021年5月30日 12時16分

  

上記記事はNHKのニュースサイト 利用規約
https://www.nhk.or.jp/rules/terms/1/#section04
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に基づいてリンクをしています。

複数死亡、大型トラック・・・。

この3つの記事、一見似ていますが、内容は違います。

真ん中の5月28日の記事は、実は、2年前 2019年に名神高速で起きた2名死亡大型トラック事故の「事故調査報告書が公表された」、というニュース記事でした。はからずも、非常に似た態様の事故が、公表時期とほぼ同じ時期に発生したという状況です。

残念ながら、今月起きた山陽道と新名神の事故の詳細(当事者の声、運行管理者の声等)は、1年か2年後、事故調査報告書が公表されるまで、わかりません。

単発の報道が数本出るだけで、あとは、2年待つという・・・。

2年前の名神高速 大型トラック事故

 

一部報道では、「不適切管理」と断じられています。

どんな点が実際不適切、とされたのでしょうか? 

以下、報道の根拠である調査報告書から、この事故と当事者企業の実態がよくわかる部分を一部抜粋します。

2.1.1.2 統括運行管理者からの情報

統括運行管理者は、当該支店の所属ドライバーから聞いたこととして、当該運転者が眠気を感じた付近から近傍にあるPAやSAは、大型車の駐車スペースが非常に混雑しており、駐車しづらいと口述した

2.1.1.3 警察からの情報

・当該運転者の口述によると

①草津PA手前で眠気を催したが、もう少し先で休憩しても大丈夫だろうと思い、運転を継続した。衝突直前にハッと目が覚めたら直前(2~3m先)に車がいた。ブレーキ・ハンドル操作をすることはできなかった。
②南条SAで前日の 22時頃から事故当日の4時頃まで車内にて仮眠を取った。大阪の2箇所で荷役作業を行ったが、疲れや眠気はなかった。コンビニで軽食後、運行を開始して事故に至った。
③竜王ICの本線流入部付近から事故地点付近の第1通行帯側にカラーコーンが置かれ車線規制されていた。普段より低い速度で規制されている認識はあったが、正確にはわからなかった。

 

2.1.2 運行状況の記録

当該車両には、デジタル式運行記録計及び映像記録型ドライブレコーダー(以下「ドライブレコーダー」という。)(車両前方の 1 カメラ方式)が装着されており、事故当時の各装置の記録状況は、次のとおりであった。

当該車両に装着されているデジタル式運行記録計は、運転日報を作成するシステムに連動し、一運行ごとのデータ及び 24 時間記録図表が日報に出力される仕組みとなっている。

<詳細はデジタコにより記録されていますので、本文をご覧ください> 

2.1.2.2 ドライブレコーダーの記録状況

当該車両の事故前後におけるドライブレコーダーの記録状況は、表4に示すとおりである。これらの記録によると、
・当該車両は、事故発生の1分 43 秒前から追突2秒後までの間、速度表示が81km/h であったことが記録されている。また、当該車両が相手車両1に追突し、そのまま前進して相手車両2に追突したところで速度が低下し始めたこと
が確認できる。
・その後、当該車両は徐々に減速しているのが確認でき、事故発生6秒後に停止している

<詳細はドラレコにより記録されていますので、本文をご覧ください> 

 

2.3.1.1 当該車両に関する情報

・当該車両の初度登録年月は、自動車検査証によると平成 18 年4月であり、事故時の総走行距離は 1,858,290km である。
・当該車両には、速度抑制装置、クルーズコントロールが装備されており、ドライブレコーダーが装着されていた。
・当該車両は、追突したことによりキャビン部前面が損傷した(写真1参照)。

 

2.4.2 当該事業者及び当該支店への監査の状況

当該事業者への監査の状況2は、次のとおりである。
2.4.2.1 本事故以前3年間の監査
当該事業者における過去3年間の監査及び行政処分等はなかった。
2.4.2.2 本事故を端緒とした監査
本事故を端緒として、当該支店に対し令和元年6月 14 日に監査が実施され、次の行政処分等が行われている。
(1) 行政処分等の内容
令和元年8月 26 日、輸送施設の使用停止(40 日車)及び文書警告
(2) 違反行為の概要
次の4件の違反が認められた。

・乗務時間等の基準の遵守違反(貨物自動車運送事業輸送安全規則(以下「安
全規則」という。)第3条第4項)
・点呼の実施義務違反(安全規則第7条第1項、第2項)
・運行指示書の作成義務違反(安全規則第9条の3第1項)
・運転者に対する指導監督義務違反(安全規則第 10 条第1項)

 

2.4.3.2 運転特性

支店長の口述及び適性診断の受診結果の記録によると、当該運転者の運転特性等については、次のとおりであった。
(1) 支店長の口述
当該運転者には、毎年、損害保険会社が行う「運転適性診断」を受診させてい
る。
(2) 適性診断結果の記録
当該運転者が平成 31 年2月に受診した適性診断の受診結果では、「行動機能
は普通で問題なく、なるべく遠くの交通状況を見て、余裕を持った操作をすることが大切」との総合所見であった。

 

2.4.3.3 健康状態

支店長の口述及び健康診断結果の記録によると、当該運転者の健康状態は、次のとおりであった。
(1) 支店長の口述
・当該運転者には、毎年2回定期健康診断を受診させており、直近では平成
30 年 11 月に受診させている。
(2) 健康診断結果の記録
・平成 30 年7月及び同年 11 月に当該運転者が受診した定期健康診断の結果の
記録では、事故に影響を及ぼしたと考えられるものはなかった

2.4.4.1 当該運転者の乗務管理

当該支店における点呼記録簿及び運転日報によると、事故日前1ヵ月の当該運転者の勤務状況は表9及び図3のとおりであり、平成元年2月に労働省(当時)が策定した「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下「改善基準告示」
という。)に定められた1日の拘束時間の上限値超過6件、休息期間の下限値不足4件の違反が確認された。


なお、当該事業者は、時間外労働等に関する労使間協定を締結し、平成 31 年3月に労働基準監督署に届け出ている

  

 

2.4.4.2 点呼及び運行指示

支店長及び統括運行管理者の口述並びに点呼記録簿等によると、次のとおりであ
った。
(1) 支店長の口述
・当該支店では、運行管理者5名及び補助者3名を選任している。
・運行管理者及び補助者の勤務については、勤務交番を組み 24 時間体制としている。


(2) 統括運行管理者の口述
・運送先で乗務を開始し、又は終了することにより、対面で点呼を行えない場合の電話による点呼については、以前から運転者任せであったことから、運転者から連絡がない場合には点呼を実施していなかった。また、点呼記録簿の当該点呼欄には、運転者の帰庫後に日報等に記録された時間などを記載していた。


(3) 点呼等の記録状況
当該運転者に対する事故前日からの点呼実施状況等については、次のとおりで
あった。
・事故前日の当該支店出庫時の始業点呼は、補助者Bが6時 52 分に対面で実施した旨記録されており、体調の良否、疾病・疲労、睡眠不足の有無等及びアルコール検知器による酒気帯びの有無の確認を実施した結果等について
記載されている。その他、乗務員の安全目標として「車間保持、ぼんやり運転注意」及び乗務員に対する指示事項として「冷凍機、温度計」と記載されていた。
・事故前日の電話による終業点呼及び事故当日の電話による始業点呼については実施しておらず、帰庫後に日報等から記載する形をとっていたことから、未記載であった。
・事故当日の中間点呼は、当該運行管理者が 10 時 00 分に電話により実施した旨記載されており、確認事項として、睡眠不足の有無、積載状況の確認及び事故・違反の有無等の他、アルコール検知器による酒気帯びの有無の確認を実施した結果が記録されていた。
・当該支店においては、始業点呼及び終業点呼のいずれも対面で実施できない乗務を含む運行ごとの運行指示書が作成されておらず、従って、当該運行に係る運行指示書も作成されていなかった。

 

 

2.4.4.3 指導及び監督の実施状況

支店長の口述及び指導監督の記録によると、次のとおりであった。
(1) 支店長の口述
・平成 13 年8月に国土交通省が策定した「貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針」(以下「指導監督指針」という。)に基づく年間教育計画を策定し、毎月教育を実施している。
・教育は、運転者を5班編制とし、各班長が班員に教育を行うほか、支店長及び運行管理者からの教育もある。
・教育内容は、年間教育計画に基づき月ごとに指導監督指針のうちの1項目を選択して実施しており、それに加えて事故事例の共有と危険予知トレーニング及び交通安全テストを実施している。
・事故防止対策として、重点事項、具体的推進要領を定めるなどし、事故ゼロ運動や運転競技会等を実施している。
・運行管理者は、デジタルタコグラフの記録結果から、運転者が運転時間や速度規制を遵守しているかなど指導監督に活用している。
・運行管理者は、日頃から運転者に対して改善基準告示の遵守に関しての指導を行っており、当該運転者も認識していた。
・ドライブレコーダーの映像記録については、指導監督への活用には至っていない。
・国土交通省から通達等が発出された場合、点呼や定期的に実施する教育の機会を捉え、運転者に周知している。また、教育では運輸局の事故統計資料も活用している。
・自社で発生した事故事例を基に、事故の状況や原因を共有し、再発防止対策等について周知している。

 

 

2.4.4.4 適性診断の活用

支店長は、次のとおり口述した。
・運転者には、毎年、損害保険会社が行う運転適性診断を受診させているが、受診後は、その結果を配布するだけで、診断結果に基づく具体的な指導までには至っていない。

 

 

2.4.4.5 運転者の健康管理

支店長は、次のとおり口述した。
・運転者には、毎年2回定期健康診断を受診させている。
・当該支店では、衛生管理者を選任し、健康診断結果に基づく指導を行っているほか、保健師による健康相談及び要精密検査者に対する指導も行っている。
・当該支店では、運転者の年齢や健康診断結果により、優先者に脳ドックを受診させている(助成有り)。
・点呼場には血圧計が配備されており、必要に応じて確認している。

注目すべき見解

 

当該車両には、衝突被害軽減ブレーキは装備されていなかったが、今回の事故の場合、直線状道路において同一車線前方に相手車両1及び2の車列があったこと、また、当該運転者がブレーキ操作などの回避操作を行っていないと推定されること等の状況から、仮に現在新型車に装備が義務付けられている衝突被害軽減ブレーキが当該車両に装備されていたとすると、同ブレーキが作動した可能性が高いものと考えられる。この場合、同ブレーキが作動すれば、上述の衝突速度は少なくとも 20km/h 低下するものであり、速度は 65km/h 以下となると考えられるが、依然として高速であり衝突のエネルギーの絶対量も大きい。またこれに加えて、次項の 3.2.2 に 示すように、相手車両1は当該車両から衝突された後、当該車両と相手
車両2の両車に挟まれるような形で大きな力を受けることとなるため、本事故においては、同ブレーキが作動しても、相手車両1及びその乗員の被害を大きく軽減することは難しいと考えられる。しかしながら、同ブレーキについては、ブレーキが作動する 1.4 秒以上前の時点から、運転者に警報が発せられ注意喚起されるものであり、本事故の状況であれば、衝突地点の約 100m以上前で警報が出ることになり、このとき当該運転者が気づいてブレーキをかければ、やや強めの通常のブレーキ操作で衝突を回避して停止することができた可能性が考えられる。

原因

当該支店においては、運行指示書を作成しておらず、運転者に対して休憩地点等の必要な指示を行っていなかったことや、運転者が運送先にて乗務を開始又は終了することにより対面で点呼を行えない場合の電話等による点呼について一部未実施となっていたことから、運転者の健康状態等の確認が行われず、安全な運行を確保するために必要
な指示がなされないなど運行管理が不適切であったこと、また、運転者の過労運転を防止するための適切な乗務管理となっていなかったこと、さらに、運転者に対する指導教育は計画的に行われていたものの、当該運転者が運転中眠気を感じたにもかかわらず、安全運転を確保するために必要な措置を取っていなかったことからも、その指導が周知徹底されておらず、居眠り運転の危険性とその防止措置の徹底が不十分であったことが本事故の発生した背景にあるものと考えられる。

ここが、報道で「不適切な管理」と報道で指摘されている根拠なのかもしれません。

今回の報告書ですが、過去の事故調査報告書とくらべても、「デジタコ」「ドラレコ」装備があったことで、ヒューマンエラーおよびヒューマンエラーの背景に、具体的に切り込むことができていると思われます。

再発防止として「安全装置」が推奨されています。

早々に、

・デジタコ
・ドラレコ
・衝突被害軽減ブレーキ
・車線逸脱警報装置
・ふらつき注意喚起装置
・走行中の運転者の顔の方向や目の状態をモニターカメラで常時確認し、前方注意
力の不足が疑われる場合に警告する装置
・運転者の生体信号を捉え疲労度合いを警告する装置

この7種は、もはや「義務化されるべき安全装置」なのかもしれません。

みなさま、最後、「P25 5.再発防止策」 の読後の感想を、本音を、ぜひみなさんにお聞きしたいところです。

本当に効果のありそうな、実現可能な再発防止はどれであろうか?  どこまでやったら「徹底」「充実」なのだろうか?