事業用自動車事故調査報告書

 

”小学生よりも先に左折できると考え”たのは、指導不十分だからなのか? ベテランドライバーの慢心か? 不十分を「十分」にするとはどういうトレーニングメニューであるべきか?

2024.7.12

https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha02_hh_000647.html

・この日は、5時頃に起床した。
・起床時の体調は、良好であった。
・起床後、洗面・歯磨きをし、食事を摂らずに、自家用車で出社した。
・自家用車で当該営業所まで約 40 分運転し、いつも通り6時 10 分頃に出社した。
・6時 15 分頃に補助者の立会のもとでアルコール検知器による測定及び血圧測定を行った。
・補助者から対面による始業点呼を受け、アルコール検知器による酒気帯びの有無の確認や健康状態、睡眠状態を聞かれ、車両周辺の安全確認の徹底についての指示を受けた。
・その後、自家用車でトラクタ駐車場へ向かった、6時 30 分頃にトラクタ駐車場へ到着して、当該車両の日常点検を済ませ、6時 35 分頃に沖洲のコンテナ置場に向けて出庫した。
・沖洲のコンテナ置場には6時 45 分頃到着した。他の運転者が昨日返却することが出来なかった空のコンテナを積載したトレーラを連結し、コンテナを返却するため、6時 53 分頃に小松島のコンテナ置場に向け出発した。
・この日の運送はこの空コンテナの返却だけであった。
・経路については、コンテナ置場の前の道路を通り、徳島南部自動車道の徳島沖洲インターチェン(以下インターチェンジを「IC」という。)から徳島津田ICまで通行し、そこから県道 120 号線を通り、事故地点のある県道 218 号線に入った。
・県道 218 号線は、車の流れがスムーズであったため、約 40km/h で走行した。
・自分は、自分以外の8人の乗務管理を主に行うトラクタ・トレーラ部門のリーダーで、8人の乗務の調整で間に合わない運送や他の運転者が返却できなかった空のコンテナの返却も行っている関係で、事故地点付近はほぼ毎日通行しており、他の運転者よりも多く通行していた。
・当該営業所に勤務してから約 18 年、時間帯はいろいろであるが、ほぼ毎日、事故地点である交差点(以下「当該交差点」という。)を通行しており、本件事故発生と同時間帯も何度も通行しているが、この付近で事故前までに 1 度も小学生の姿を見たことがなかった。
・当該交差点の手前は、約 50km/h で走行していたと思う。
・当該交差点の信号が赤に変わり、前車4台に続いて停止し、青信号に変わって前から順々に発進していった。
・発進後、道路左側の歩道上に男女の区別は出来なかったが、小学生が、同一方向に歩いているのが見えた。この時、その小学生が横断歩道に差し掛かる前に当該交差点を左折通過できると思った。
・左折の際は、左側の後写鏡・直前直左確認鏡(以下「後写鏡等」という。)だけを見ている。この時もハンドルを左に切る前に左側の後写鏡等を見たが小学生はいなかった。左折するときに考え事等はしていない。
・そのまま左折して、当該車両が真っ直ぐになる前に「いつもと違う」という感じがして左に寄せて停止した。いつもと違う感じとはどの様な感じかといわれても、口では説明できない感覚があった。
・当該車両の死角について、当該営業所の運行管理者(以下「当該運行管理者」という。)から指導を受けたこともないし、どこにどれくらいの死角があるのかは把握もしていないが、左側の窓から見ても歩行者等が死角で見えないことは経験上知っていた。
・居眠り運転も過労運転もしていない。
・当該車両が停止した後、車から降りて車両の後方へ行って見ると当該被害者が倒れていた。その後、対向車線を見ると、停止していた車の運転者が携帯電話で 119 番と 110 番をしていると知らせてくれたので、補助者に連絡を入れた。

分析(P37より)

熟練運転者A及び熟練運転者Cにあっては、模擬歩行者を見かけたとき、その動静を注視するとともに、模擬歩行者が死角に入らないように、横断歩道手前での一時停止や徐行を繰り返し、かつ、模擬歩行者の歩行速度に合わせて追い越さないような運転行動をとっていることが確認された。
一方、熟練運転者Bにあっては、2.5.5 図7当該車両と当該被害者の軌跡図の⑦~⑧までの間、模擬歩行者が映っていないことから、検証車両の死角に入り込んでしまうような視認行動及び運転行動をとっていることが確認された。

当該運転者は、当該交差点手前において当該被害者が歩行していることを認知したが、当該被害者より先に当該交差点を左折できると考え、その後の動静に目を配ることなく、さらに横断歩道直前においても一時停止をしたり、徐行したりせず、左側の後写鏡等のみによって判断し、車両を進行させることを優先して当該交差点を左折進行した可能性が考えられる。

 

「プロドライバー」のスキルとは? 結局は、毎日のこういう運転行動、そしてこのような運転行動をするための習熟トレーニング(指導ではなく)が必要ではなかろうか。

みなさんは、まるで教科書どおりのような今回の事故ケース、教科書にあるのになぜ防げないのか、どう考えられますでしょうか?