昨年11月、お隣中国の、アルコールチェックに関する規制についてレポート致しました。
今回は中国の運輸安全施策のうち、「バス・トラックの動態管理とデジタコ(GPS)規制」についてレポートします。
現在日本では、運輸局単位や、国土交通省自動車局として、事業許可を与えているバス、タクシー、トラック事業者に対し、車両の運行データを直接的に提出させる法的なシステムは存在しません。
実態としては、運輸局への事業報告提出物や、監査というサンプリングによって、乗務記録の保存義務をチェックするという仕組みとなっています。
お隣中国は、ちょっと違うようです。
道路運送車両の動態管理規則
翻訳上は『道路輸送車両の動態監督管理規則』となっていますが、日本の法令でいえば、『道路運送車両法 動態管理規則』とでも言いましょうか。
出典は、
http://www.gov.cn/gongbao/content/2016/content_5113020.htm
これを翻訳してみました。
一部抜粋してみます。
第三条 本規則で称する道路輸送車両は、幹線道路で運営される乗客輸送用自動車、危険貨物輸送車両、セミトレーラー牽引車、及び大型トラック(車両総重量が12トン以上の普通貨物輸送車両)を含む。
第四条 道路輸送車両の動態監督管理は、企業監視、政府による監督管理、ネットワーク制御の原則を遵守するものとする。
第五条 道路輸送管理機構、公安機関交通管理部門、安全監督管理部門は、法で定められた職責に基づき、道路輸送車両の動態監督管理作業に対し、共同で監督管理を実施する。
第七条 道路輸送車両に取り付ける衛星測位装置は、下記の標準の要件に適合するものとする。
『道路輸送車両衛星測位システム車載端末技術要件』(JT/T 794)
『道路輸送車両衛星測位システム端末通信プロトコル及びデータフォーマット(JT/T 808)
『原動機付き車両の運行安全技術条件』(GB 7258)
『自動車運行記録計』(GB/T 19056)
第八条 道路輸送車両の衛星測位システムプラットフォーム及び車載端末は、関連の専門機関による標準適合性技術審査に合格しなければならない。標準適合性技術審査に合格したシステムプラットフォームと車載端末は、交通運輸部がこれを公告する。
第九条 道路旅客輸送企業、道路危険貨物輸送企業、及び50台以上の大型トラックもしくは牽引車を有する道路貨物輸送企業は、標準に従って道路輸送車両の動態監視プラットフォームを構築し、または条件に適合する衛星測位システム監視ソーシャルプラットフォーム(以下、監視プラットフォームと総称する)を使用し、企業に属する道路輸送車両及び運転手の走行過程に対してリアルタイム監視及び管理を行う。
第十条 道路輸送企業が新規に構築した、または変更した監視プラットフォームは、使用を開始する前に、関連の専門機関のシステムプラットフォーム標準適合性技術審査に合格しなければならず、また変更前の『道路輸送経営許可証』を発行した道路輸送管理機関へ届け出るものとする。
道路旅客輸送企業及び道路危険貨物輸送企業の監視プラットフォームは、全国重点運営車両ネットワーク制御システム(以下、ネットワーク制御システムと略称する)に接続し、要件に従い、車両走行の動態情報及び企業、運転手、車両に関する情報を、全国道路輸送車両動態情報公共交換プラットフォームまで段階的にアップロードする。
第十四条 道路貨物輸送企業の監視プラットフォームは、道路貨物輸送車両公共プラットフォームとリンクし、要件に従い、企業、運転手、車両の情報を、道路貨物輸送車両公共プラットフォームへアップロードするとともに、道路貨物輸送車両公共プラットフォームから転送される貨物輸送車両走行の動態情報を受信するものとする。
第二十一条 道路旅客輸送企業、道路危険貨物輸送企業、及び大型トラックまたは牽引車を50台以上有する道路貨物輸送企業は、専任の監視要員を配置するものとする。専任の監視要員は、原則として、監視プラットフォームに接続される車両100台につき1人配置し、最少でも2人を下回らないものとする。監視要員は、国の関連の法規及び政策を掌握し、輸送企業による研修、試験に合格後に職務に就くものとする。
あー、運行管理者 ですね。
第二十二条 道路貨物輸送車両公共プラットフォームは、各貨物輸送車両及び道路貨物輸送中小企業(大型トラックまたは牽引車の所有台数が50台以下)の貨物輸送車両に対する動態監視を担当する。道路貨物輸送車両公共プラットフォームには、スピード違反及び運転手の疲労度の制限値を設定し、運転手に対してスピード違反、疲労下での運転などの違法行為を自動的に警告する。
これがもし出来ていたら・・、かなり輸送安全の質が保たれていると言えるのではないでしょうか。
第三十四条 道路輸送管理機関は、要件に従って衛星測位装置を設置していない、または衛星測位装置を設置しているが、ネットワーク制御システム上で(大型トラック及びセミトレーラー牽引車は道路貨物輸送車両公共プラットフォーム上で)正常に表示できない車両に対して、『道路輸送証』を発行せず、またはそれを審査する。
本当にこの運用は実施されているのでしょうか・・。
日本のデジタル式運行記録計も、行政向けポートが規格化されています。それの電子版と理解すればいいのかもしれません。
ということは、日本より「電子化」は進んでいるということになりますね。
道路旅客輸送及びバスターミナル管理規定
旅客向けにこんな規則もありました。
http://xxgk.mot.gov.cn/2020/jigou/fgs/202007/t20200715_3432640.html
ここからGPS動態管理規定を抜粋します。
第八十三条 県級以上の道路輸送管理機関は、旅客輸送車両に対して、毎年1回審査を行うものとする。審査は下記の内容を含む。
車両の法律・規則違反の記録
車両の技術レベルの評価状況
車両の車種レベルの評価状況
標準に適合する運行記録機能付きの衛星測位装置の規定に従った設置、使用状況
旅客輸送事業者の旅客輸送車両に対する運送請負業者責任保険の加入状況
審査により、要件を満たす場合は、道路輸送管理機関が『道路輸送証』に明記し、要件を満たさない場合は、期限を定めて是正を命じるか、または変更の手続きを行う。
『道路危険貨物輸送管理規定』
http://xxgk.mot.gov.cn/jigou/fgs/201912/t20191224_3312797.html
こちらは、危険物輸送車両の安全管理規定です。
第八条 道路危険貨物輸送の運営を申請する場合は、下記の条件を満たすものとする。
下記の要件に適合する特殊車両及び設備を有する。
特殊車両(トレーラーは除く)5台以上を自ら所有する。毒性の高い化学品、爆発物を輸送する場合は、特殊車両(トレーラーは除く)を10台以上所有する。
特殊車両の技術的要件は、『道路輸送車両技術管理規定』の関連規定に適合するものとする。
有効な通信ツールを備える。
特殊車両は、運行記録機能を有する衛星測位装置を設置するものとする。
毒性の高い化学品、爆発物、爆発性危険化学品を輸送する場合は、タンク式、バン式の特殊車両または圧力容器等の特殊容器を備えるものとする。
タンク式特殊車両のタンクは、品質検査部門の検査に合格し、且つタンク積載後の総重量は特殊車両の最大積載量に合致するものとする。爆発物、腐食性の高い危険貨物を輸送するタンク式特殊車両のタンク容積は、20m3を超えてはならず、毒性の高い化学品を輸送するタンク式特殊車両のタンク容積は、10m3を超えてはならない。但し、国の関連基準を満たすタンク式コンテナは除外する。
毒性の高い化学品、爆発物、腐食性の強い危険貨物を輸送するタンク式特殊車両は、最大積載量が10トンを超えてはならない。但し、国の関連基準を満たすコンテナ輸送特殊車両は除外する。
輸送する危険貨物の性質に適した安全防護、環境保護及び消防設備装置を備える。
北京市交通委員会の情報
2014年1月22日、若干古いですが、こんな情報がありました。
http://jtw.beijing.gov.cn/xxgk/dtxx/201401/t20140122_342283.html
運輸局が関連部門と合同で「二客一危」(※)業界のGPS特別項目検査作業を実施
近日、北京市交通委員会運輸局、北京市交通管理局、北京市安全生産監督管理局は合同で当市の「二客一危」企業に対し、重点業務用車両の衛星測位システム(GPS)の使用における監督管理状況を検査した。検査では計6社の企業を抜き取り検査し、企業の衛星測位装置、監視プラットフォームの設置及び構築状況、企業の監視制度の確立及び実行状況、衛星測位監視プラットフォームの応用状況、観光貸切バスの安全上のリスクの徹底調査及び安全管理制度の実行状況等、4つの面における13項目の内容に対して検査を行った。
全体的な状況から見て、企業の動態監視作業の実行に対する重視度は高く、措置が行き届いており、資金の投入額も大きい。また科学技術の手段を利用して企業の管理水準を引き上げることは輸送業界において一般的な共通認識となっており、衛星測位システムを応用して重点業務用車両の動態監視を強化することは安全生産作業を行うための重要な手段となっている。従って、衛星測位システムを利用した業務用車両の動態監視強化は、おおむね効果が表れている。
一方で、検査グループは、動態監督管理作業に普遍的な問題が存在することも発見し、これを指摘している。第一に、監督管理部門の動態監督管理に対する周知徹底と指導が不十分であることから、企業のGPS監視基準、要件に対する認識があいまいになっている。第二に、輸送企業の動態監視実行に対する要件が適切に設けられていないため、監視要員の責任の定義が不明確、監視台帳が基準化されていない、24時間の専任者当直制度が全面的に実施されていない等の状況が存在する。第三に、一部の企業の監視プラットフォームと衛星測位装置が関連の規定に適合していない状況がある。
(以下省略)
※二客一危:「客」は旅客輸送、「危」は危険貨物輸送を指し、具体的には観光バス、3類以上の路線バス、及び危険化学品、花火・爆竹、民用爆発物を輸送する特殊車両を指す。
路線バスの分類:
- 1類:省級の行政区域の間で運行する(隣接する県の間は除く)路線バス
- 2類:省級の行政区域内で、設区市(区が設置された市)級の行政区域の間で運行する(隣接する県の間は除く)路線バス
- 3類:設区市級の行政区域内で、県級の行政区域の間で運行する(隣接する県の間は除く)路線バス
- 4類:県級の行政区域内で運行する路線バス、または隣接する県の間で運行する路線バス
河北省交通運輸庁の情報
http://jtt.hebei.gov.cn/jtyst/jtzx/sjdt/101537242864045.html
滄州市が「二客一危」車両を厳重調査(2016年8月10日)
滄州市は、7月12日より10月11日の期間、道路輸送業界の安全生産大規模検査活動を実施し、道路旅客輸送、危険貨物輸送、バスターミナル運営に従事する企業、及び「二客一危」車両と従業員の状況を重点検査する。
今回は、道路旅客輸送及び危険貨物輸送企業に対して、「二客一危」(観光貸切バス、3類以上の路線バス、及び危険化学品輸送車両)のGPS動態監視システムの管理と作動状況を重点検査する。検査は、企業に属する車両に基準を満たす衛星測位装置を設置しているか、衛星測位装置の安全使用制度を制定しているか、衛星測位装置の使用状況を定期的に検査しているか、車両が全行程でオンラインである状態を確保しているか、動態監視の方法を運用しているか、違法行為を速やかに是正、処理しているか等の内容を含む。基準を満たすGPSを規定に従って設置、使用していない全ての業務用車両に対しては、道路輸送証を発行せず、企業に対して期限を定めた是正を命じる。
また、道路旅客輸送及び危険貨物輸送企業の安全生産教育研修の実施状況、企業の運転手に対する雇用と管理状況ならびに運転手の資格条件、運転手の疲労下での運転、スピード違反、定員超過、無断での運転手交替等の違法行為の有無についても検査を行う。省を越えて運行する観光貸切バスの運営に従事する企業、車両、及び人員の資格条件に対して厳しくチェックを行い、観光貸切バスの旅客輸送マークプレートの発行を厳格に行い、観光貸切バスのナンバープレート及び貸切バス運行契約の検査を強化し、無断での路線変更、違法運営等の行為を厳しく調査して処分する。
四川省交通運輸庁の通達
http://jtt.sc.gov.cn/jtt/c102010/2019/6/10/738e4353ea094c279ba9a16cabdfda1a.shtml
四川省公安庁交通警察総隊、四川省交通運輸庁道路運輸管理局の『業務用車両動態監視及び業務用バスのシートベルト使用の強化作業計画』の発行に関する通達(2019年6月10日)
一部抜粋。
四川省交通運輸庁運輸管理局は、四川省公安庁交通警察総隊と合同で、『業務用車両動態監視及び業務用バスのシートベルト使用の強化作業計画』を制定し、即日より7月31日まで、全省において業務用車両の動態監視及び業務用バスのシートベルト使用に関する特別項目業務を実施することを決定した。
衛星測位装置に関しては、『計画』の中で、業務用車両の動態監視を強化することが要求された。観光バス、貸切バス、3類以上の路線バス、危険貨物輸送車両、セミトレーラー牽引車及び大型トラック(総重量が12トン以上の普通貨物輸送車両)等の業務用車両に設置された運行記録機能を有する衛星測位装置に対し、「設置しているか、使用しているか、是正しているか、真実に基づいて報告しているか」を重点とし、輸送企業に対して車両の動態監視の制度・措置実施を促す。
業務用車両は標準の要件を満たす衛星測位装置車載端末を設置し、使用時と検査時の状況が一致していること。道路輸送車両動態監視プラットフォームに接続する時は、海賊版のマップを使用してはならない。衛星測位装置は正常に使用でき、車両が走行時に常にオンラインであり、データが事実且つ有効であること。運転手は衛星測位装置の通信を遮蔽し、または電源を切ってはならない。衛星測位装置は、規定された運行記録に関するデータを完全に収集して入力することができ、走行速度の記録データは、衛星測位速度と同期して各級の道路輸送車両動態監視プラットフォームへアップロードされること。
企業は、標準に従って道路輸送車両動態監視プラットフォームを構築し、または条件を満たす道路輸送車両動態監視ソーシャルプラットフォームを使用すること。7月1日より、アップデートされた衛星測位監視端末製品は、内蔵デジタルマップの機能要件を有していること。
広東省道路運輸管理局の通達
広東省道路運輸局の衛星測位システムによる動態監視推進に関する業務の通達
2017年1月22日
各地級市以上の市交通運輸局(委員会)、順徳区環境輸送及び都市管理局宛て:『道路輸送車両の動態監督管理規則』(交通運輸部、公安部、国家安全生産監督管理総局〔2014〕5号令)の要求に基づき、道路輸送企業は、標準適合性技術審査に合格したシステムプラットフォームに接続しなければならず、プラットフォームプロバイダは、省の運輸管理局に届け出なければならない。現在、当省で要件を満たすプラットフォームサービスプロバイダは107社あるが、全省においては依然として一部の道路輸送企業が要件を満たさない監視プラットフォームへ接続している。『広東省交通運輸庁による全省道路輸送企業の2016年度審査作業徹底に関する通知』(粤交運〔2016〕3436号)の要件を踏まえ、関連事項を下記のとおり通達する。
一、各地の交通輸送主管部門は、専任者を配置し、道路輸送企業の監視プラットフォームへの接続状況に対する調査作業を徹底させること。幹線道路を走行する乗客輸送用自動車、危険貨物輸送車両、セミトレーラー牽引車、及び大型トラック(総重量が12トン以上の普通貨物輸送車両)が要件を満たさない監視プラットフォームへ接続している場合は、2017年7月31日までに是正を完了するよう促すこと。
二、個別の地区でプラットフォームを自ら構築し、2017年3月31日までに標準適合性技術審査に合格していない場合は、省庁のプラットフォームへ直接切り換え、データの受信と報告を行い、プラットフォーム切り換えの過程で発生した費用は、地区が自ら負担する。
三、各部門は、広東省道路運輸情報ネットワーク(http://dlys.gdcd.gov.cn/)または広東省道路輸送車両衛星測位データ情報サービスチャンネル(http://121.33.200.106:8010/IndustryData/Operator)に登録し、『操作ガイド』をダウンロードし、車両の動態監視作業を計画し、実施すること。作業において問題がある場合は、速やかに当局へ報告すること。
7.まとめ
今回調査した範囲では、中国では、貸切バス、中長距離都市間高速バス、危険物輸送、12t以上の大型車両に、「GPS付き運行記録計」が義務づけられていることが分かりました。
また、選任の運行管理者(監視者)と、ドライバーの常時モニタリングも義務づけられており、交通違反・法令違反は、即時に注意・警告することが科せられている模様。
<ヘッドラインおよび記事中の写真は本文と直接関係ありません>
<翻訳は2020年12月時点の東海電子によるもの>