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中国の運輸業界、アルコール検知器は義務か?

2020.11.12

日本のバス、トラック、タクシー業界は、2011年にアルコール検知器が義務化されました。。

ところで、他の国はどうなのでしょう?

この度、お隣の中国(中華人民共和国)の交通・運輸業界において、アルコール検知器の使用が法令で定められているのかいないのかについて調べてみましたのでレポート致します。

対象は、中華人民共和国内のバス、タクシー、トラック、鉄道、航空、船舶の6業種です。

中国では、国務院と呼ばれる最高行政機関があり、国務院に属する「交通運輸部」という行政機関が交通に関する管轄機関となっています。

<交通運輸部>
http://www.mot.gov.cn/

今回の調査では、上記交通運輸部と、その下位機構のウェブサイトで関連の法令、規則を調べ、さらに民間の企業のウェブサイトも一部参考にしました。

 

1.タクシー

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1)アルコール検知器の使用義務について:

 職業運転手であるタクシードライバーに対してアルコール検知器の使用義務を明確に定めた法令・規則は見つかりませんでした。

タクシー会社のウェブサイト等も確認しましたが、勤務時のアルコール検査や、アルコール検知器の使用に関する規定等は見当たりませんでした。


2)一般的な道路交通法の飲酒規制

タクシー事業と直接関連したアルコール検知器規則がないようですので、飲酒運転に関する交通法の適用は、一般ドライバーとまずは同等であろうと思われます。(タクシードライバーの資格制度、返納基準については未調査です)

①『中華人民共和国道路交通安全法』 第91条
http://www.gov.cn/flfg/2011-04/25/content_1851694.htm

いわゆる日本でいう、道路交通法65条に該当する部分でしょうか。

(日本語訳)

 飲酒後に原動機付き車両(※1)を運転した場合は、運転免許証の6か月の差し押さえ、並びに1000元以上2000元以下の罰金に処する。飲酒運転で処罰された後、再度飲酒運転をした場合は、10日以下の勾留、並びに1000元以上2000元以下の罰金に処し、原動機付き車両運転免許証を取り消す。

 酒酔いの状態で原動機付き車両を運転した場合は、公安機関交通管理部門により、運転手の酔いが醒めるまで拘束し、原動機付き車両運転免許証を取り消し、法に従って刑事責任を追及する。また5年間は運転免許証を再取得できないものとする。

 飲酒後に業務用原動機付き車両(※2)を運転した場合は、15日の勾留、並びに5000元の罰金に処し、原動機付き車両運転免許証を取り消し、5年間は運転免許証を再取得できないものとする。

 酒酔いの状態で業務用原動機付き車両を運転した場合は、公安機関交通管理部門により、運転手の酔いがさめるまで拘束し、原動機付き車両運転免許証を取り消し、法に従って刑事責任を追及する。また10年間は運転免許証を再取得してはならず、運転免許証を再取得後は、業務用原動機付き車両を運転してはならない。

 原動機付き車両の飲酒運転または酒酔い運転で重大な交通事故を引き起こし、犯罪が成立する場合は、法に従って刑事責任を追及するとともに、公安機関交通管理部門により、原動機付き車両運転免許証を取り消し、二度と再取得できないものとする。

※1:中国語では「機動車」と書かれており、これは原動機で動き、道路を走る 車両とのことで、自動車の他、オートバイなどの2輪車も含むとされています。

※2:中国語では「営運機動車」と書かれており、タクシー、貸し切りの乗用車、ダンプカー(民間企業所有)、小型トラックなどが該当し、乗客や貨物を輸送して利益を得ることを目的とする原動機付き車両であるとの説明があります。

②中国国家標準GB-19522-2010『車両運転手の血液、呼気中アルコール濃度の閾値及び検査』

http://c.gb688.cn/bzgk/gb/showGb?type=online&hcno=D97F147D8319AA6668C6B1685BD49D0C

(日本語訳)

4. アルコール濃度値

4.1 アルコール濃度と閾値
車両運転手の飲酒運転または酒酔い運転に該当する血液中アルコール濃度の閾値は、表1を参照のこと。

4.2 血液中アルコール濃度と呼気中アルコール濃度の換算
車両運転手の呼気中アルコール濃度は、1:2200で血液中アルコール濃度に換算する。即ち、呼気中アルコール濃度に2200を乗じた値が血液中アルコール濃度である。

表1 車両運転手の血液中アルコール濃度の閾値

運転行為の種類閾値 (mg/100 mL)
飲酒運転≧20、<80
酒酔い運転≧80

日本でよく使われる呼気中濃度でいえば
20mg/100ml →0.09mg/L 
80mg/100ml →0.36mg/L 
ということになります。

2.バス(路線バス、観光バス、高速バス)

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1)バスドライバーのアルコール検知器の使用義務について

アルコール検知器の使用にまで言及した法令・規則は見つかりませんでしたが、運輸交通部の安全に関する通達文書に、薬物や飲酒運転経歴のあるドライバーの雇用や、旅客ステーションでの安全管理(点呼的な)の際、飲酒や薬物の確認が必要であるとの規定がありました。

道路旅客輸送事業者安全管理規則(翻訳)より

第二十条 旅客輸送事業者は、法律に従って旅客輸送ドライバー雇用システムを作成するものとする。旅客輸送ドライバーの採用のための採用手順と条件を統一し、旅客輸送ドライバーの資格、安全運転経験、健康診断結果を厳密に確認し、実際の運転スキルをテストする。ドライバーが次のいずれかの条件を満たしている場合、旅客輸送事業者は、乗用車を運転するためにドライバーを雇わないものとする:

(一)有効かつ適用可能な自動車運転免許証および資格証明書がなく、信用度が低い、ブラックリストに記載されている人;

(二)36か月以内に交通事故起こし、人を死亡させ若しくは同等以上の責任を負った人;

(三)最近の三つの点数記録周期(12ヶ月を1周期とする)内に一つ以上交通違反点数を12点達したことがある人;

(四)36か月以内に飲酒運転、定員人数20%以上超え、50%以上の速度違反(高速道路では20%の速度違反)または12か月以内に3回上記のスピード違反の記録ある人;

(五)薬物の服用または注射の記録を持っている人、または精神薬に長期間依存していて、まだ断薬できていない人、または他の職業禁忌を発見された人。

および

第二十六条 旅客輸送事業者は、ドライバーのための安全警告システムを確立するべきである。旅客輸送事業者は、専任の人員を任命するか、旅客ステーションに委託して、ドライバーは飲酒後、病気、疲労、不健康的な感情を持ち、安全な運転に影響を与える薬物を飲んだ後などに運転するのを防ぎ、ドライバーに車両の日常のメンテナンスを促すために、車両を離れる前にドライバーに確認し、通知する必要がある。


調査の過程では、ニュースのサイト等で、バス会社が運転手の勤務前にアルコール検査を実施しているといった記事が多く見られ、地域やバス会社によってそれぞれ規定を定めているのではないかと思われます。

道路交通法における飲酒運転関連の規則については、以下を参照ください。
『中華人民共和国道路交通安全法』 第91条
http://www.gov.cn/flfg/2011-04/25/content_1851694.htm

3.トラック

  

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1)トラックドライバーへのアルコール検知器の使用義務について

トラック業界も、バスと同様に明確に定めた法令・規則はありませんでしたが、同じようにニュースサイトで運転手の勤務前のアルコール検査を行っているとの報道が見られました。おそらく各地域や会社で独自の規定を定めているものと思われます。

道路交通法における飲酒運転関連の規則については、以下を参照ください。
『中華人民共和国道路交通安全法』 第91条
http://www.gov.cn/flfg/2011-04/25/content_1851694.htm

 

4.鉄道(在来線、高速鉄道、MRT)

 

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1)鉄道運転士へのアルコール検知器の使用義務について

規則では、飲酒運転をしてはいけないと定めているものの、勤務前のアルコール検査や、アルコール濃度の基準等について、詳しく定めた細則等の文書は見つかりませんでした。

但し、当然、大量旅客輸送の安全観点で危険な行為の禁止条項は存在します。『鉄道機関車車両の運転手資格許可規則』 第4条

http://www.nra.gov.cn/jgzf/flfg/bmgz/201912/t20191226_98338.shtml

(日本語訳)

下記の人員は、鉄道機関車車両を運転してはならない。

(一)麻薬を密輸入し、販売し、または使用した者。

(二)テロ活動を組織し、主導し、またはそれに参与する者。

(三)飲酒し、国が規制する向精神薬もしくは麻酔薬を服用し、または鉄道機関車車両の安全運転を妨害する疾病に罹患し、または安全運転に影響するその他の行為が存在する者。

(四)規則に違反して運転をした後に、審査、教育、研修等の措置を講じていない者。

 

5.航空

1)航空事業者・パイロットへのアルコール検知器の使用義務について

航空法の他、飛行機の運行に関わる職種に関する規則で、アルコール検査について規定されています。日本で先般航空局で定めた規則と、似てますね。詳細は下記の各規則の内容をご参照ください。

『中華人民共和国民用航空法』 第77

http://www.caac.gov.cn/XXGK/XXGK/FLFG/201510/t20151029_2777.html

(日本語訳)

民間航空機の乗員の飛行時間、勤務時間は、国務院民間航空主管部門の規定する制限を超えてはならない。民間航空機の乗員は、アルコール類飲料、麻酔剤またはその他の薬物の影響を受け、業務能力が損なわれる場合、飛行任務を遂行してはならない。

『大型飛行機公共航空運輸輸送請負人の運行合格査定規則』(CCAR-121FS) 第121.579条より

(日本語訳)

アルコールを含む飲料摂取後の当直制限

(a)本条は、飛行機の乗務員、ディスパッチャー等、安全性に対して慎重さが要求される業務を担当する人員に適用する。

(b)前項で述べる関係者が、その呼気中アルコール濃度が0.04g/210L以上である、またはアルコールの影響下にある場合は、持ち場に就いてはならず、または引き続き持ち場で安全性に対して慎重さが要求される業務を継続してはならない。いかなる合格証保持者も、(前項で述べる)当該の人員の呼気中アルコール濃度が0.04g/210L以上であるか、またはアルコールの影響下にあることが明らかに分かる場合、それらの人員に、安全性に対して慎重さが要求される業務を担当させ、またはその業務を継続して担当させてはならない。

(c)関係者は、安全性に対して慎重さが要求される業務を担当する過程で、アルコールを含む飲料を摂取してはならない。いかなる合格証保持者も、関係者が安全性に対して慎重さが要求される業務を担当する過程でアルコールを含む飲料を摂取したことを明らかに知り得た時、当該の人員に、安全性に対して慎重さが要求される業務を担当させ、またはその業務を継続して担当させてはならない。

(d)関係者は、アルコールを含む飲料を摂取してから8時間以内は、勤務に就いてはならない。いかなる合格証保持者も、当該の人員が8時間以内にアルコールを含む飲料を摂取したことを明らかに知り得た時、当該の人員に、安全性に対して慎重さが要求される業務を担当させ、またはその業務を継続して担当させてはならない。

③『民間航空機の航空機関士合格承認規則』

http://www.caac.gov.cn/XXGK/XXGK/MHGZ/201809/t20180930_191931.html

(日本語訳)

第63.13条 アルコールまたは薬物に関わる禁令違反行為

      航空機関士の資格保持者は、アルコールを含むいかなる飲料を摂取した後の8時間以内、またはアルコールの影響下にある時、または血液中もしくは呼気中アルコール濃度が0.04以上である場合、またはいかなる薬物によっても仕事の能力に影響が及ぶ時、民間航空機の航空機関士を担当してはならない。

アルコール濃度とは、呼気210リットル中に含まれるアルコー ルのグラム数、または血液100ミリリットル中に含まれるアルコールのグラム数を指す。

第63.15条 アルコール、薬物検査の受検、または検査結果の提供

航空機関士の資格保持者は、中国民用航空局(※)の要請に基づき、アルコ ールまたは薬物検査を受け、または検査結果を提供するものとする。

※:中国民用航空局とは、国務院交通運輸部が管理する国家局の一つで、民間航空行政を管轄します。

第63.51条 アルコールまたは薬物の禁令違反行為に関わった場合の処罰

 本規則の第63.13条の規定に違反した航空機関士の資格保持者に対しては、当事者に直ちに航空機関士の職務を停止するよう命じ、警告を与えるか、または資格を1か月から6か月差し押さえるものとする。状況が深刻である場合には、資格取り消しの処罰を与える。犯罪が成立する場合は、法に従って刑事責任を追及する。

第63.53条 アルコール、薬物検査の受検または検査結果の提供を拒否した場合の処罰

 本規則の第63.15条の規定に違反し、アルコール、薬物検査の受検または検査結果の提供を拒否した航空機関士の資格保持者に対しては、当事者に     当日の飛行運行業務への参加を直ちに停止するよう命ずる。是正しない場合は、1万元以上2万元以下の罰金に処する。犯罪が成立する場合は、法      に従って刑事責任を追及する。

公共航空旅客運輸(※)の飛行中における安全防衛作業規則』 第29

http://www.mot.gov.cn/zhengcejiedu/gonggonghklkysfxaqbwgzgz/xiangguanzhengce/201708/t20170803_2803596.html

(日本語訳)

航空保安官は、アルコールを含む飲料を摂取してから8時間以内、またはその呼気中アルコール濃度が0.04g/210L以上である場合、または薬物の影響により業務能力を損なう場合に、航空機において職務を遂行してはならない。

公共航空運輸企業は、上記の状況にある航空保安官を派遣して飛行中における安全防衛の職務を遂行させてはならない。

 ※:公共航空運輸企業とは、営利目的で民間航空機を使用して旅客、荷物、郵便物 または貨物を輸送する企業法人を指します。

民間航空機メンテナンス員の資格管理規則』

http://www.caac.gov.cn/XXGK/XXGK/MHGZ/201605/t20160530_37620.html

(日本語訳)

第66.7条 アルコールまたは薬物の禁令違反行為への関与

 民間航空機メンテナンス員の資格保持者、民間航空機部品修理員の資格保    持者は、アルコールを含むいかなる飲料を摂取してから8時間以内である場合、またはアルコールの影響下で、血液中のアルコール濃度が0.04%以上である場合、またはいかなる薬物の影響により業務能力を損なう場合に、第  66.15条(※1)、第66.25条(※2)に規定する業務に従事してはならない。

 ※1:第66.15条の内容は以下の通りです。

 資格保持者の権利

 基礎部分及び対応する機種の部分の資格を取得したメンテナンス員は、下記の権利を有する。

 (a) 機種Ⅰ類部分の資格保持者は、下記の権利を有する。即ち、

  (1)『民間航空機メンテナンス部門合格認定規定』(以下CCAR-145部と称する)に従い、業務指示に基づいてラインメンテナンス作業を行った航空機の出庫を許可する。

(2)『メンテナンスと改装の一般規則』(以下、CCAR-43部と称する)の規定に従い、航空機に対してメンテナンス作業を行い、その使用再開を許可する。

(b) 機種Ⅱ類部分の資格保持者は、以下の権利を有する。即ち、機種Ⅰ類部分の権利を有するほか、CCAR-145部に従ってその他のメンテナンス作業を行った航空機の出庫を許可することができる。

※2:第66.25条の内容は以下の通りです。
資格保持者の権利
部品修理員の資格の基礎部分及び対応する項目部分の資格を取得した人員は、項目部分の類別範囲内の部品に対し、CCAR-145部またはCCAR-43部に従い、出庫を許可することができる。

第66.29条 アルコールまたは薬物の禁令違反行為に関与した場合の処理

 本規則の第66.7条の規定に違反し、薬物を服用した後で、またはアルコー   ルを含む飲料を摂取した後でメンテナンスまたは出庫業務を行った場合 は、民航局または民航地区管理局より1千元の罰金を科する。

『民間航空電気通信員の資格管理規則』 第31

http://www.caac.gov.cn/XXGK/XXGK/MHGZ/201605/t20160530_37653.html

(日本語訳)

資格保持者は、下記のいずれかの状況に該当する場合、通信ナビゲーション監視サービスの保証業務に従事してはならない。

(一)いかなるアルコール飲料を摂取してから8時間以内である場合、またはアルコールの影響下にあり、血液中アルコール濃度が0.04%以上である場合、または精神面に作用するいかなる物品の影響を受け、業務能力が損なわれる場合。

(二)資格保持者が資格の権利行使を一時停止されている期間。

『民間航空航空管制官資格管理規則』 第40

http://www.caac.gov.cn/XXGK/XXGK/MHGZ/201605/t20160530_37652.html

(日本語訳)

資格保持者は、下記のいずれかの状況に該当する場合、航空交通管制の業務に従事してはならない。

(一)資格保持者の身体の状態に変化が起こり、保持する身体検査合格証に対応する医学的な基準に適合しない状況が現れた場合。

(二)アルコールを含むいかなる飲料を摂取してから8時間以内である場合、またはアルコールの影響下にあり、血液中アルコール濃度が0.04%以上である場合、または精神面に作用するいかなる物品の影響を受け、業務能力が損なわれる場合。

(三)資格保持者が、資格の権利行使を一時停止されている期間。

⑧『民間航空情報員資格管理規則』 第30条

http://www.caac.gov.cn/XXGK/XXGK/MHGZ/201605/t20160530_37654.html

(日本語訳)

資格保持者は、下記のいずれかの状況に該当する場合、航空情報サービス業務に従事してはならない。

(一)アルコールを含むいかなる飲料を摂取してから8時間以内である場合、またはアルコールの影響下にあり、血液中アルコール濃度が0.04%以上である場合、または精神面に作用するいかなる物品の影響を受け、業務能力が損なわれる場合。

(二)資格保持者が、資格の権利行使を一時停止されている期間。

 

6.船舶、海運

 

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1)船舶・海運業におけるアルコール検知器の使用義務について

船舶運行や船員に関する規則で、アルコール濃度、違反時の処罰について、規定が明確に存在します。

①『中華人民共和国内陸河川における船舶の船員当直規則』 第15条

(日本語訳)

船員の飲酒を厳禁する。当直の船員の、当直前4時間以内、及び当直中の飲酒を禁止し、且つ当直中の船員の血液中アルコール濃度が0.05%を超えてはならず、または呼気中アルコール濃度が0.25mg/Lを上回ってはならない。当直の船員が、安全に当直ができなくなる恐れのある薬物を服用することを厳禁する。また船員の麻薬の使用行為を厳禁する。

②『中華人民共和国海上船舶の船員当直規則

(日本語訳)

第125条

 船員は飲酒してはならない。当直人員の当直前4時間以内の飲酒を禁止        し、且つ当直中の血液中アルコール濃度(BAC)が0.05%を上回ってはならず、または呼気中アルコール濃度が0.25mg/Lを上回ってはならない。

第127条

  海運会社は、相応の措置を制定して船員の飲酒及び薬物乱用を防止するものとする。船員が当直の職責を履行する能力、または安全、汚染防止、ならびに保安に関する当直の職責を履行する能力が薬物またはアルコールの影響を受ける場合、その当直を割り当ててはならない。

第128条

  船員が下記のいずれかに該当する場合、海事管理機構により、1000元以上   1万元以下の罰金に処する。状況が深刻である場合は、船員適任証書の6      か月以上2年以下の差し押さえ、または船員適任証書の取り消しの罰則を科す。

 (九)船上での当直中に、体内のアルコール濃度が規定された基準を超えた。
(十)船上で船員の職務を履行する際に、安全な勤務に影響を及ぼす禁止薬物を摂取した。

      ※(一)~(八)、(十一)項はアルコールとは関係のない項目のため、割愛 いたします。

③『中華人民共和国内陸河川海事行政処罰規定』 第11条

(日本語訳)

船員が『船員条例』第20条の規定に違反し、下記のいずれかに該当する場合、『船員条例』第56条の規定に基づき、1000元以上1万元以下の罰金に処する。状況が深刻である場合は、船員服務簿(船員本人の資格・経歴、訓練と身体検査の状況を記録した証明書)、船員適任証書の6か月から24か月の差し押さえ、または船員服務簿、船員適任証書の取り消しの罰則を科す。

(一)船上での勤務中に飲酒し、体内のアルコール濃度が規定の基準を超えた。

(二)船上での勤務中に、国が規制する麻酔薬または向精神薬を服用した。

中華人民共和国海上海事行政処罰規定』 第24条

(日本語訳)

第24条 船舶、施設の人員が『海上交通安全法』第9条の規定に違反し、海上交通安全に関する規定制度及び操作規程を遵守しない場合、『海上交通安全法』第44条及び『船員条例』第56条の規定に基づき、1000元以上1万元以下の罰金に処する。状況が深刻である場合は、船員適任証書の6か月から24か月の差し押さえ、または船員適任証書の取り消しの罰則を科す。事故が発生した場合は、第25条の規定に基づき、船員適任証書の差し押さえまたは取り消しの罰則を科す。

本条の上記の海上交通安全に関する規定制度を遵守しない状況は下記を含む。(三)船上での勤務中に、体内のアルコール濃度が規定の基準を超えた。

(一)~(二)、(四)~(十九)は割愛。

内陸河川の渡し場・フェリー安全管理規定』 第25

http://xxgk.mot.gov.cn/2020/jigou/fgs/202006/t20200623_3307610.html

フェリー運行時、船員、作業員は、下記の規定を遵守するものとする。

(一)渡し場、フェリー管理制度及び当直規定を遵守し、水上交通安全操作規則に基づいてフェリーを操縦、制御、管理する。

(二)フェリーの耐航状況を把握し、運行水域の環境、及び水文、気象等の必要な情報を理解する。

(三)飲酒後に操縦をしてはならず、疲労した状態で当直してはならない。

(四)運行の安全性に影響を及ぼす突発事故を発見した、またはそれが発生した場合は、速やかに報告するとともに、遭難者の救助に尽力する。

『遊覧ボート安全管理規定』 第19

http://www.gov.cn/flfg/2008-08/13/content_1070955.htm

遊覧ボートの操縦者は、飲酒後の運転、疲労した状態での運転をしてはならない。

7.まとめ

 今回調査した範囲では、飛行機、船舶の2種類の業種で勤務前・勤務時のアルコール濃度、違反時の罰則について明確な規定がありました。タクシー、バス、トラック、鉄道の業界については関連の規則で飲酒運転を禁止する規定が見られたものの、飛行機や船舶のように、勤務前・勤務中のアルコール検査に関する詳しい法令や規則は見つかりませんでした。

 一方で、ウェブサイトで勤務前にアルコール検査を行っている企業の紹介や報道等が多く見られ、各地域や企業がそれぞれの規定を設けているのではないかと思われます。

 如何でしたでしょうか?

 違反の定義や罰則の基準は、だいたい、どこの国でも見られます。


 日本以では、自動車、鉄道、航空、船舶、高度に安全が求められる業種において、「アルコール検知器の使用」という、明確な道具の使用まで規定している規則の例はあまり見られません。ある意味、世界では最先端の安全システム法制を実現しているとも言えるのではないでしょうか?

<ヘッドラインおよび記事中の写真は本文と直接関係ありません>